2011年7月15日
今回は,前回ご説明した「他者の行為能力を正確に推測するプロセス」の続きです.
行為能力の推測に寄与する知覚情報
Ramenzoni氏を中心とするシンシナティ大学のグループは(Ramenzoni氏は現在バージニア大に在籍),内的シミュレーションのほかに,行為能力の推測に寄与する知覚情報があることを,複数の論文を通して報告しました.対象となった課題は,垂直跳びの高さです(reach-with-jump
ability).
得られた成果をまとめると,以下のようになります.
・実験対象者に,自己と他者の行為能力の両方を判断させると,その成績の連関性は必ずしも高くない(もし自己の行為能力に基づき他者の行為能力を判断するなら,連関性は高いはず).
・他者が実際に垂直跳びをする場面を一度も見なくても,ある程度の正確性で垂直跳びの高さを推定できる.しかもそれは,身長を見ているといった単純な判断ではない.
・垂直跳びに関連する動き(スクワット)を事前に観察する機会があれば,推定の精度は高くなる.
・垂直跳びとは直接関連性のない歩き方を観察するだけでも,推定の精度は有意に上がる.
・観察視点の位置が高くなるほど,垂直跳びの高さを高く判断する.すなわち,視線の高さの情報(eye-height information)が,判断に利用されている.
Ramenzoni氏の一連の研究において,実験参加者は,他者が実際に垂直とびをする様子を観察していません.にもかかわらず参加者は,様々な知覚情報を利用して,他者の行為能力を比較的高い精度で推定できました.この結果は,他者の行為能力を推定するプロセスは,必ずしも内的シミュレーションのみに基づくのではないことを示しています.
参考文献
Ramenzoni V et al. An information-based approach to action understanding. Cognition 106, 1059-1070, 2008
Ramenzoni et al. Tuning in to another person's action capabilities: perceiving maximal jumping-reach height from walking kinematics. J Exp Psychol Hum Percept Perform 34, 919-928, 2008
Ramenzoni et al. Perceiving action boundaries: learning effects in perceiving maximum jumping-reach affordances. Atten Percept Psychophys 72, 1110-1119, 2010
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