アジア広域の二次エアロゾル生成過程に関する研究

 大気中に粒子として直接排出される一次エアロゾルだけでなく、気体成分の光化学反応によって生成される二次エアロゾルが重要です。当研究室で開発してきたエアロゾル分析装置を用いて大気観測を実施し、アジア広域における二次生成の寄与率を明らかにすることを目指してきました。これまで黄海・東シナ海上空における航空機観測や、韓国、台湾、タイにおける地上観測を実施してきました。
 航空機観測は東京大学ほか国内の多くの研究機関との共同研究によるものです。春季において、黄海の境界層の直上で新粒子生成が活発に起こっている様子を明らかにしました。さらに、その汚染空気が東シナ海に輸送される過程で、エイトケン粒子が雲凝結核 (CCN) の大きさに成長し得ることを示しました (Takegawa et al., 2020)。以上の論文発表は科学研究費補助金 (19101001, 22241002, 23221001, 25281004, 26701004, 15H05465, 18H03363) の研究成果および環境研究総合推進費 (A-0803, A-1101) の研究成果によるものです。
 台湾の地上観測は気象研究所および台湾中央研究院 (Academia Sinica) との共同研究によるものです。台湾の北端の観測点においてアジア大陸からの汚染空気が頻繁に観測されました。発生源から1,000 km以上離れたリモート領域であっても、多様な混合状態を持つ粒子が存在することが明らかになりました (Sun, Takegawa, et al., 2020)。以上の論文発表は科学研究費補助金 (16H05620, 17H01862) の研究成果によるものです。

(台湾北端におけるアジア広域大気汚染の観測。)


Sun, C., K. Adachi, K. Misawa, H. C. Cheung, C. C.‐K. Chou, and N. Takegawa*, Mixing state of black carbon particles in Asian outflow observed at a remote site in Taiwan in the spring of 2017, J. Geophys. Res. Atmos., 125, e2020JD032526, 2020.

Takegawa, N.*, T. Seto, N. Moteki, M. Koike, N. Oshima, K. Adachi, K. Kita, A. Takami, and Y. Kondo, Enhanced new particle formation above the marine boundary layer over the Yellow Sea: Potential impacts on cloud condensation nuclei, J. Geophys. Res. Atmos., 125, e2019JD031448, 2020.