海洋島(島の成立以来大陸と陸続きになったことのない島)である小笠原諸島において、アカギ、モクマオウ、ギンネムの3種は侵略的な外来植物です。
Institute of Pacific Islands Forestry Pacific Island Ecosystems at Risk (PIER) による侵略性のリスク評価法では、モクマオウとギンネムは高いリスク値(著しい侵略性を発揮することを意味する)を示していますが、アカギについてはそのリスク値は低く、侵略性を発揮しないことが示されています。しかし、実際にはアカギは母島において「著しい侵略性を発揮」しています。
このことは、これまでのリスク評価法では、侵略性を適正に評価できていない可能性があることを示しています。
PIERのリスク評価法は、生物学的な形質に基づいて行われており、侵入先の特徴(生態系)を考慮していません。外来種の侵入先の生態系は様々です。生態系によって植物に影響を与える環境は大きく異なります。
そこで私たちは、生態系の異なる島において、アカギ、モクマオウ、ギンネムの3種の比較を行います。そして、これまでのリスク評価法では見逃されてきた外来生物の侵略性を決める要因を明らかにし、侵略性のリスクをより正確に評価するための新しい手法を開発します。
Bischofia javanica(コミカンコウ科)
Casuarina equisetifolia(モクマオウ科)
Leucaena leucocephala(マメ科)
「外来生物の侵略性は種の形質と侵入先の生態系の特徴との相互作用によって決まる」ことを「土壌特性マッチング仮説」と「生態系エンジニア仮説」の2つの仮説を立てて検討します。
侵略性に関連する植物の形質に植物の栄養利用特性に着目し、栽培実験と土壌分析および野外調査にもとづく地理情報解析により検証します。
植物の形質(土壌養分要求特性)と侵入先の生態系の土壌特性が一致する場合に侵略性が発揮される。
植物の形質(土壌改変能力)によって侵入先の栄養塩環境が改変された結果、侵略性が発揮される。
小笠原諸島のモクマオウ、アカギ、ギンネムの種子発芽条件および栽培条件を確立し、栽培条件の化学分析を行います。また、野外の生育環境条件を化学分析によって明らかにします。
土壌の栄養塩特性に関する既存の調査資料から、土壌の栄養塩特性図を作成します。また、小笠原諸島におけるモクマオウ、アカギ、ギンネムの分布図を既存の調査資料から作成します。
外来種の侵略性を決める要因を明らかにするために、首都大学東京、日本大学、九州大学が分担して取り組みます。