明の地球環境あきらかセミナー   

人間は異常に蔓延(はびこ)っている

地球環境問題発生の要因の第一はなんといっても人が出現したことでしょう. その後,人類はペストの流行や数々の戦争にもひるむことなく増加の一途をたどり(紀元前・紀元後の世界の人口の変化図), それに伴って生活水準の向上,資源消費の増大,そして資源開発に伴う環境破壊と廃棄物による環境破壊により地球規模の環境問題が発生しました. 今回のセミナーでは,人間を一ほ乳類として見た場合の生息密度【通常人間の生息密度のことを「人口密度」と呼んでいますが, ここでは「はびこり度」とよぶことにします】について考えてみましょう.

動物のサイズが,動物の生き方にいかに大きな影響を与えているかについては,東工大教授本川達夫(もとかわたつお)先生の 「ゾウの時間ネズミの時間」(中公新書,1992年)に詳しく書かれています【絵本で「絵とき ゾウの時間とネズミの時間」 (福音館書店,1993年)もお勧めです】.この中の動物の大きさと生息密度について見てみましょう. これによると,温帯の草食ほ乳類の生息密度D(匹/km2)と体重W(kg)の関係は D=214W-0.61, 温帯の肉食獣の場合はD=13W-0.94となっています. すなわち,食物連鎖的に見て, 体重1kgの草食獣は1km2に214匹,肉食獣であれば13匹生活できるといえます. 人間を体重60キロのほ乳類としてみた場合, その生存可能なはびこり度は, ほ乳類337種から求めた生息密度D(匹/km2)と体重W(kg)の関係 D=55W-0.90から計算すると,1km2あたりたったの1.4人となります.

さて,実際の世界の人間のはびこり度(人口密度)は約46人/km2 【世界人口63億÷世界の土地面積(人の住める面積のみ)1.356億km2】ですので, 動物としての生息密度1.4人/km2を大きく上回って,人間が異常にはびこっていることが分かりますね. 人間が動物として1.4人/km2のはびこり度をキープするためには,世界人口は1.9億人が限度となり, これはおよそ西暦300年頃の人口に相当します(世界人口の変遷表).

また,日本での人間のはびこり度(人口密度)は,平成14年度版理科年表によると340人/km2となっていて, こんなに多くの人間が所狭しとひしめいています.このはびこり度だと人間はウサギ小屋のウサギどころか132グラムの ゴールデンハムスター程度でないやっていけません. なおこの340人/km2というはびこり度【この場合「ひしめき度」といってもよい】は 人の住めない森林や山の上も入れて計算されていますので,実際のひしめき度はもっと高くなります. 例えば福岡市の場合,同じく平成14年度版理科年表より,面積339km2に134.1万人が住んでいるので, そのひしめき度(はびこり度)は3956人/km2となり,かんりぎゅうぎゅう詰めの感じです. 食物連鎖的に見てこんなに多くのほ乳類が福岡市で生きていくためには, 一匹あたり9グラム弱のアブラコウモリ(小型コウモリ)程度となります. 【ちなみに,東京区内のひしめき度は13177人/km2でこれだと2.3グラムのほ乳類となり, 世界最小のほ乳類の大きさでないと生きていけません.なお,世界最小のほ乳類は, 北海道のトウキョウトガリネズミ,タイのキティブタバナコウモリ,インドのコビトジャコウネズミなどらしいです. その体重は1.5〜2.5グラム程度ということですが,これは1円玉1枚がちょうど1gなので,1円玉2枚程度に相当します】

以上のような人間の異常なはびこりを可能にしているのは,様々な科学技術や経済システムなど人間の知恵です. すなわち,人間はそのはびこり度から見ても動物世界から抜けだし(逸脱して), 独自の人間世界を形成していることになります.人間が農耕生活を始め食物連鎖から逸脱したのは一万年前, 地球年で考えるとたったの53分前のことでした(詳しくはあきらかセミナー「地球年」参照).