日本のバブルと1990年代
■ バブルと90年代を回顧した書物のリスト
◆ 破綻ドキュメント 通史的なもの
- [BIS規制] 塩田潮, (1999.10) 『金融蟻地獄 ドキュメント・日米銀行戦争』, 日本経済新聞社
- [総会屋事件] 産経新聞金融犯罪取材班著 (1999) 『呪縛は解かれたか』 角川書店
- [総会屋事件] 読売新聞社会部 (1998) 『会長はなぜ自殺したか』 読売新聞社.
- [バブルから二信組事件・銀行破綻] 佐藤章 (1998) 『金融破綻 ドキュメント』 岩波書店 朝日新聞経済記者。イトマン、イ・アイ・イ、飛島建設、蛇の目ミシン、住専等、1986年以降の経済事件を詳細に追ったドキュメント。特に日銀総裁昇格問題についての記述は有益。
- [橋本内閣]軽部謙介・西野智彦 (1999) 『検証経済失政 誰が、何を、なぜ間違えたか』 岩波書店
橋本内閣の財政構造改革路線を批判。
- [総会屋事件・銀行破綻] 朝日新聞経済部 (1999.02) 『金融動乱 経済システムは再生できるか』 朝日新聞社
扱っている期間が96年から98年までと網羅的
◆ 金融破綻の当事者たち
▼ 山一証券
- 草野厚 (1998.07) 『山一証券破綻と危機管理: 1965年と1997年』 朝日新聞社
- 佐々木信二 (1998.04) 『山一証券突然死の真相』 出窓社
- 北沢千秋 (1999.02) 『誰が会社を潰したか 山一首脳の罪と罰』 日経BP社 日経BP出版センター(発売)
- 石井茂 (1998.12) 『決断なき経営 山一はなぜ変われなかったのか』 日本経済新聞社
- 読売新聞社会部 (1999)『会社はなぜ消滅したか』 読売新聞社.
▼ 長銀・拓銀・日債銀
- 岡田康司 (1998.11) 『長銀の誤算』 扶桑社
- 竹内正敏, (1999.03) 『実録長銀・部店長会議』 オーエス出版
- 竹内宏 (1999.01) 『金融敗戦』 PHP研究所
- 久門文世 (1999.06) 『金融再生法36条』 小学館文庫.
- 箭内昇 (1999.07) 『元役員が見た長銀破綻 バブルから隘路、そして……』 文芸春秋
- 須田慎一郎 (1999.11) 『長銀破綻 エリート銀行の光と影』 講談社文庫.
- 田代恭介 『日債銀破綻の原罪 上・下』 東銀座出版社 小説仕立てになっている。
- 北海道新聞社編 (1999.03) 『拓銀はなぜ消滅したか』 北海道新聞社
▼ 政府関係者
- 岸宣仁 (1999.06) 『経済白書物語』 文芸春秋
- 西村吉正 (1999) 『金融行政の敗因』 文芸春秋. 元大蔵省銀行局長
- 三重野康 (2000.01) 『利を見て義を思う 三重野康の金融政策講義』 中央公論新社.
元日銀総裁
- 江田憲司 (1999.12) 『誰のせいで改革を失うのか』 新潮社 元橋本首相秘書官.
◆ 研究者・エコノミストによるもの
- 吉田和男 (1998.12) 『平成不況10年史』 PHP研究所
- 原田泰 (1999) 『日本の失われた十年 失敗の本質復活への戦略』 日本経済新聞社
- 奥村洋彦, (1999.05) 『現代日本経済論 「バブル経済」の発生と崩壊』, 東洋経済新報社
- 岩田規久男 (1998.09) 『金融法廷 堕落した銀行堕落させた大蔵省』 日本経済新聞社
- 吉川洋編著 (1996.4) 『金融政策と日本経済』 日本経済新聞社
- 堀内昭義 (1999.02) 『日本経済と金融危機』, 岩波書店
- 吉富勝 (1998.12) 『日本経済の真実 通説を超えて』 東洋経済新報社
- 吉川洋 (1999) 『転換期の日本経済』 岩波書店
- どこかの?書評 本書の基本認識は、90年代の不況の原因は「需要不足」だというところにある。そして「平成不況」とも呼ばれるこの十年間を3つの時期に分け、それぞれに固有の原因と、全体に共通の原因をまず考察する。その主張のひとつは、バブルの崩壊や不良債権などの金融面のトラブルよりも、設備投資の落ち込み、消費の低迷といった需要側の実体的な要因がはじめは強く働いたということ、そして不況に追いうちをかけたのが、97年の財政政策の失敗と「クレジット・クランチ(貸し渋り)」であったということである。
バブル期の地価高騰も、低金利だけではなく、非製造業における「土地集約的」な経済活動にその第1の原因があると著者はいう。東京は近い将来、世界の金融センターになるからオフィス需要が急増するにちがいないとか、豊かになった日本人が、さらにゴルフ場をはじめとするリゾートを求めるにちがいない、といった浮薄な予想が、そんな行動を促したと説く。
- もう一つ 基本的なスタンスとして、90年代の不況の原因は「需要不足」であるとしている。最近主流になりつつある「潜在的成長力低下論」はとらない。90年代の経済を分析する過程で著者は、GDPの実質成長率に対する消費、投資、政府支出などの成長への寄与度を分析する。消費と投資の需要が減少したことが、この不況を長期化させたと結論づける。本来消費と投資の減少を埋めるべき財政支出が不適切だったことも不況をさらに深刻化させた、と主張する。その意味で97年の「財政改革法」による財政支出の大幅な減少は、火に油を注ぐことになった。この点を強調して、著者は「人災」、財政政策の「逆噴射」と言っている。また、需要の低迷の権化のようにいわれる(バブルの崩壊による)資産価格の下落による「逆資産効果」を消費低迷の主因ではない、としている。
92年のバブル崩壊で「逆資産効果」の影響を大きく受けたのは、法人経営者、自由業者、高齢退職者層だったので、これらの人たちの消費の落ち込みは大きかった。だが、家計消費全体の「逆資産効果」の影響はそれほどではない。消費への影響が大きいのは「雇用不安」や「公的負担増」である、と述べている。このように需要面の影響を分析していく。
◆ 総会屋事件その他
- 石神隆夫 (1999.08) 『汚れ役 「総務部」裏ファイル』, 太田出版
- 大小原公隆 (1999.01) 『裏切り 野村証券告発』 読売新聞社
- 飯田健雄 (1998.11) 『かくして巨額損失は海外で生まれた 日本企業が陥った「失敗の本質」』
日本評論社
◆ 銀行救済策
- 村上龍 (1999.08) 『あの金で何が買えたか バブル・ファンタジー』 小学館
- 糸瀬茂 (1998.06) 『なぜ銀行を救うのですか ポスト・ビッグバンの金融ビジネス』
東洋経済新報社
◆ メインバンク制度と日本的システム批判
- 板倉雄一郎, (1998.11) 『社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由』, 日経BP社 日経BP出版センター(発売)
- メインバンクの仕組み: 「社長失格」より 「あのね、板倉さん。融資というのはメインバンクがきっちりしているからこそ、出せるんですよ。おたくみたいにメインの住友さんがぐらついているのに、他の銀行がほいほいお金を出せるわけないじゃないですか。」
何を言っても無駄だった。けんもほろろというのはこういうことを言うのだろう。
ぼくはこのとき初めて、当社が簡単に銀行から資金調達ができた理由がわかった。住友銀行がメインでいるから他行もカネを貸してくれたのである。他の六行にとって住友銀行という大銀行が融資していることが、当社の財務内容や事業内容以上に重要な"保険"だったのだ。
板倉雄一郎(1998) 『社長失格 - ぼくの会社がつぶれた理由』日経BP社pp. 266.
- マーク・J・シャー著奥村宏監訳 (1998.10) 『メインバンク神話の崩壊』 東洋経済新報社
- 奥村宏 (1998.12) 『無責任資本主義』 東洋経済新報社
- リチャード・カッツ著鈴木明彦訳 (1999) 『腐りゆく日本というシステム』 東洋経済新報社
◆ その他