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これまでの研究/活動紹介(沼田真也)


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卒業研究から生態学に関わる研究を行ってきました。卒業研究では神奈川県丹沢・大山自然環境総合調査に参加し、丹沢山地西部に位置する檜洞丸山頂付近における森林衰退現象について、年輪年代学的解析を行いました。
 
大学院修士課程以降は環境省地球環境研究総合推進費による
熱帯林研究プロジェクト に参加し、生物、非生物環境と樹木の相互作用に注目しながら、低地熱帯林に多数共存するフタバカキ科植物の更新様式を群集、種間比較法による検討を行いました。博士取得以降は、熱帯林の多様性維持機構における人為撹乱の影響やフタバガキ科植物の生物季節に注目し、択伐などの人為撹乱が森林の世代交代や動物群集に対して与える影響や、樹木の遺伝的多様性、非季節性熱帯林の生物季節に関する研究を行いました。

JST((独)科学技術振興機構)時代には、競争的資金管理の実務だけでなく、PO(プログラムオフィサー)研修へ参加したり、研究開発戦略立案(臨床医学研究を中心とした既存の技術・ニーズ情報を利用した研究投資のシナリオや研究開発戦略のあり方)を行いました。我が国には府省や配分機関ごとに、いくつかの異なる研究費プログラムが存在しています。例えば、科学技術研究費補助金は、研究者に自由な発想に基づく研究(ボトムアップ型研究)を支援しますが、JSTなどは国が推進すべき目標を定め、それらを実施する目的型基礎研究(トップダウン型研究)を推進しています。このようなトップダウン型研究を行うプログラムでは、社会・経済ニーズを十分踏まえて、研究の現場を理解しながら、プログラムの特性を活かした研究開発投資を行うことが重要と考えています。



【略歴】
    東京都立大学理学部生物学科卒業
    東京都立大学大学院理学研究科修了 博士(理学)
   (独)日本学術振興会 特別研究員
   (独)国立環境研究所 NIESポスドクフェロー
   (独)科学技術振興機構 研究推進部 係長 (戦略的創造研究推進事業・さきがけ)
   (独)科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー(臨床医学、ライフサイエンス)を経て
       2009年4月より現職

【主な担当授業】
(学部)自然・文化ツーリズム入門(前期:分担)、自然ツーリズムの見方、考え方(後期:分担)、環境生態学概論II(後期)、保全生物学(後期)、自然ツーリズム実験(前期:分担)、環境生態学野外実習(分担)、自然ツーリズム学プロジェクト演習(分担)
(大学院) 環境生態学特論II(後期)、自然・文化ツーリズムコース学野外実験I(分担)、自然・文化ツーリズムコース学野外実験III(分担)
(共通) 自然ツーリズム学概論I(後期:分担)、自然ツーリズム学概論II(前期:分担)、ECO-TOPインターンシップ



これまでの研究事例


年輪解析と毎木調査によるブナ林衰退の評価(1995-1996)


日本の各地で樹木立ち枯れた更新阻害などの森林衰退が報告されています。健全な森林を残していくためには、森林衰退の現状、原因を明らかにし、適切な処理を行う必要があります。樹木の年輪情報は、気象、気候、自然災害汚染環境などの長期の変化の優れた生物計として評価されています。もし、森林衰退に環境的要因が加わっていたならば、枯損を免れているとされる樹木においても、何らかの生育の変化が、年輪のなかに記録されている可能性が高いと思われます。そこで、本研究では森林衰退が確認されている丹沢桧洞丸山頂付近のブナに注目し、そこに生育するブナの年輪解析と周辺の毎木調査を行い、ブナ衰退の評価及び原因の推定を行いました。



低地熱帯林に共存するフタバカキ科植物の更新機構の解明(1996-2001


ラワン材としても知られるフタバカキ科植物は東南アジア熱帯林で林冠を構成する主要樹種であり、同一森林内に系統的に近縁な種が多数共存しています。一見、何の変哲もないことですが、似たような多くの種類が同じ環境内で共存できるということは、実は大変不思議なことなのです。そこで、半島マレーシアの低地熱帯林に共存するフタバカキ科樹種を材料に種子散布から実生の定着まで(更新初期段階)の生存様式、成長様式、植物器官の形質、及び成長様式における物理的環境要因、生物的環境要因に対する反応を種間比較法により解析し、熱帯林の多様性維持機構を検討しました。

Hemispherical photo




一斉開花の適応的意義に関する研究:一斉開花は防御戦略か?(1996-1997)


東南アジアの熱帯雨林では数年に一度の頻度で林冠を構成する多くの樹種の個体が一斉に開花・結実します。多くのフタバガキ科樹種もこの一斉開花・結実を通して世代交代を行います。この一斉開花・結実現象には、種子食害者が消費できないくらいに多量の種子を一斉に生産することで種子食害を免れるという適応的意義があるといわれています(逃避仮説)。ところで、開花・結実頻度には種間で変異があり、一斉開花・結実年のみに開花・結実するものから一斉開花・結実年以外にも高頻度で開花・結実するものまで様々です。そのため、逃避仮説が正しいとすると、一斉結実する樹種の種子は捕食者に対する防御機構を発達させる必要はないはずです。そこで本研究では、上記の予測を検証するために、フタバガキ科樹種の結実頻度とそれらの種子特性の種間比較を行いました。マレーシアのパソ森林保護区において、一斉開花後1996年9月に落下したフタバガキ科の成熟種子を採集し、乾重量を計測しました。その後、種子の貯蔵物質として全窒素含量、全炭素含量、デンプン含量、脂肪含量を、化学的防御物質としてフェノール型タンニン含量の測定を行い、種子の栄養価と防御能力を評価しました。

Predation




熱帯林における人為撹乱と生態系機能(エコロジカルサービス)(2002-) 


熱帯林の森林構造及び光環境における人為撹乱の影響

熱帯林は遺伝子資源の保管庫としてきわめて重要であり、生物多様性の確実な保全が望まれています。しかし、残念なことに、貧困などの社会的背景や産業活動の活発化により強い人為撹乱に晒されています。将来、熱帯林の生物多様性を保全するためには、人為撹乱が加わった二次林の機能に期待し、人間活動との調和を計りながら二次林を管理することが不可欠だと思われます。そこで、伐採による人為撹乱が森林更新機構に対してどのような影響を及ぼすかを検討するため、低地熱帯林の天然林と1950年代に択伐の行われた二次林における森林構造、林内微環境の調査行いました。

logged trees



人為撹乱が動物相に与える影響:特に森林断片化や伐採の影響ついて

半島マレーシアでは多くの生物が生息するために十分な森林は急速に減少しつつあります。さらには、人為撹乱による土地利用形態の変遷に伴い、多くの森林が断片化し、質的にも劣化しつつあります。本研究は、このような熱帯雨林に生息する野生生物の保全管理プランを作成することを目指して、パソ森林保護区を中心としたモデルサイトにおける動物相データを収集し、整理しました。そして、半島マレーシアの低地熱帯林保護区とその周辺の断片化した森林に生息する哺乳類を把握するため、カメラトラップによる動物相調査を行いました。

このパソ森林保護区は、典型的な低地フタバカキ林の一つであり、半島マレーシアで見られる30%以上の樹木種が生息しています。そして、少なくとも220種確認の鳥類、111種の哺乳類が生息していた記録がありました。一方で、プランテーション整備などを目的とした土地転換、木材収穫のための択伐、住民による非木材性林産物採取や狩猟などの森林利用によって攪乱を被っていることも分かりました。


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熱帯林のエコロジカルサービスとその人為攪乱影響:パソ森林保護区を事例に

1990年から2006年まで実施された環境省・地球環境総合研究推進費による熱帯林プロジェクトの成果をもとに、半島マレーシアに残された数少ない低地熱帯林であるパソ森林保護区とその周辺域をモデルサイトとし、森林における人為攪乱や野生生物の生態や人為攪乱影響についてまとめました。

熱帯林は我々に豊富な資源を提供するだけでなく、豊かな生物多様性を抱えた様々な文化の源であるといえます。熱帯雨林で見られる人為攪乱の多くは人々の生活を豊かにするため、地域社会における害悪とは限りません。しかしながら、残された森林に対する影響は大きいため、土地利用転換の結果残された森林の機能や重要性を理解しながら、その機能を充実させるような取り組みが必要であると考えます。


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東南アジア熱帯にみられる一斉結実・開花の空間的時間的様式の解明(2001-)


東南アジア熱帯林と他の地域の熱帯林の間の大きな違いとして、多くの植物種が2〜10年に一度の間隔で、同調的に開花・結実する一斉開花が挙げられます。この一斉開花は東南アジアの広い地域で見られ、多くの樹木がこの現象を通して世代交代を行っているのにもかかわらず、一斉開花の起こる空間的、時間的様式(すなわち、いつ、どこで発生するのか?)は断片的かつ局所的なものがほとんどです。そこで、半島マレーシア全土における結実状況の観察及び、過去のフタバガキ科植物の開花、結実記録を用いて、半島マレーシアにおける一斉開花の空間的、時間的様式を検討しました。

一斉開花を引き起こす要因は何なのでしょうか?以前は、20度以下の夜間低温が有力視されていましたが、現在はボルネオ・ランビル丘陵林の研究成果から、異常乾燥(30日間積算降水量が28mmを下回るような乾燥状態)に注目が集まっています。しかしながら、半島マレーシアでは必ずしも異常乾燥と一斉開花の発生が一致しないため、より詳細な検討が必要であると考えています。

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主要研究業績一覧




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