研究紹介


・熱帯生物学:東南アジア熱帯雨林の生物季節研究

 いわゆる”季節”がない東南アジアにおいて興味深い生物季節現象 (数年に一度、多様な樹種が同調的に開花、結実する一斉開花現象)がみられます。 この一斉開花現象は未だ謎に包まれており、そのメカニズムはよく分かっていません。 私は半島マレーシアで発生する一斉開花の時空間様式はこの地域に卓越するモンスーンやENSO (エルニーニョ南方振動)により決定されるとする仮説を提示しました。この東南アジアの一斉開花現象のメカニズムを解明し、熱帯雨林の再生に必要な知見を得たいと考えています。(北大、JIRCAS、森林総研、FRIM、UTMとの共同研究)





・景観/都市生態学:首都大のイノシシはどこから来たのか?

 多摩ニュータウンの西側に位置する首都大学東京・南大沢キャンパスには、10ha程度の松木日向緑地があります。2009年7月にこの緑地において、これまで多摩ニュータウン地域で生息確認がされていなかったイノシシを撮影しました。そこで、1)大学周囲において中・大型哺乳類が生育可能な緑地帯を把握、2)目撃情報や農業被害など、大学近辺におけるイノシシ情報の収集、を行い、イノシシのような中大型哺乳類が多摩ニュータウンなどの都市部の緑地をどのように利用し、どのように移動しているかを検討しています。(観光科学域学生有志との共同研究)

 



・リサーチ・ツーリズム:自然豊かな地域で行われている研究活動は観光資源になり得るか?

 社会に支持される科学技術を目指すため、科学技術分野の説明責任や情報発信力を強化することが喫緊の 課題となっています。一方で、21世紀の観光として、従来の物見遊山的な観光旅行ではなく、テーマ性が強く、地域の人や自然とのふれあいなど体験的要素を取り入れた 新しいタイプの旅行が注目されています。豊かな自然環境を研究対象とする活動がもたらす学術的成果を観光資源と捉え、 自然科学研究と地域社会を観光によって結びつけることで、研究活動を持続的に維持しながら、 地域社会への正の影響を高める観光(リサーチ・ツーリズム)の概念の確立とそれらが 成立するための条件を見いだしたいと考えています。

 


・科学技術政策:臨床医学分野における研究開発

 我が国の電子機器半導体、材料産業における技術力は高いことは知られていますが、医療機器の分野ではおよそ5000億円ものを越える輸入超過となっており、さらには特に人体へのリスクが高い治療機器は、国内でほとんど開発されていません。我が国の最先端の科学技術研究から得られた成果を速やかに医療に活用するため、研究開発、産業構造、薬事規制の観点から医療機器開発における問題点を抽出し、新しい臨床研究開発システムの提言に寄与しました。また、健康研究のための研究費を効率的に配分するための組織のあり方を検討しました。(JST-CRDS臨床医学ユニットメンバーとの共同研究)




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主な研究業績



熱帯研究に興味がある方へ
〜熱帯雨林の自然史〜東南アジアのフィールドから〜



植物、動物、保全の視点から、東南アジアの熱帯雨林の自然史を紹介しています。熱帯雨林研究の新人だった著者らが、東南アジアの国々に飛び込んで試行錯誤を繰り返しながら進めていったフィールド研究の記録でもあります。沼田は一斉開花と保全について執筆をしました。

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