セラピストにむけた情報発信



運動連鎖アプローチ研究会「Bodyworkの臨床応用」を終えて




2009年6月15日

6月13日−14日に,運動連鎖アプローチ研究会「Bodyworkの臨床応用」が開催されました. 2日間にわたってボディワークに関する様々な講演が提供され,私自身は初日に参加しました.朝から夜まで密度の濃いスケジュールであったにも関わらず,100名を超える方々が集中力を切らさずに最後まで熱心に耳を傾ける姿に,感銘を受けました.研究会全体の様子については,主催の山本尚司氏のブログをご参照ください.

私は「ボディイメージと身体運動」というタイトルで講演をおこないました.様々なボディワークを概観すると,身体活動や呼吸調整などを通して,身体に関する認識,すなわちボディイメージが鋭敏になることが重要といえます.そこで講演では,ボディイメージの生起に関わる様々な研究の紹介や,私の研究室でおこなわれている試みについてご紹介いたしました.

私の講演の前に,ピラティスに関する実演とリハビリへの応用可能性に関する話題(夏井先生,遠藤先生ご担当)が提供されました.そこで紹介される様々な話題は,純粋に研究成果だけに基づく私の講演内容と,接点が非常に大きいと感じました.

たとえばボディイメージの生起について,私のご紹介した話題は「指先の感覚1つとっても,指先のセンサー(固有受容感覚)だけでなく,実に多様な情報を利用して生起される」というものでした.ピラティスに関する夏井先生の実演を見ますと,足底部の感覚を高めるトレーニングの際には,クライアントの意識は足底部に向けられますが,インストラクターとしては,トレーニングに先立ち,体幹のアライメントが適切かどうかに注意を払い,調整を行います.私の立場から見れば,これはまさに,足底部という局所的な感覚に身体全身の状態が関与することを,実践知として応用していることになります.

今回の参加者の方々は“リアクション上手”であり,こちらが提供する様々な話題に好意的な反応を示してくださいました.このような反応で講演者のテンションも高まり,90分の講演を通して大変気持ちの良い時間を体験することができました.

常々思うのですが,発表が実りあるものになるためには,発表者の周到な準備だけでなく,聴衆の方々の積極的な態度が不可欠です.会場からの無反応な状況が長く続くと,無理に盛り上げようと発表者が無駄な話題を切り出し,かえって会場の雰囲気が悪くなる...といった状況は,決して珍しくありません.

発表者と聴衆がお互いに良い表現をしあうことで,音楽のセッションのような状況が生み出され,心地よい発表空間が生み出されるように思います.今回の研究会の参加者の皆様は,非常に聞き上手な方が多く,まさに彼らが研究会の成功の原動力であったといえます.

夜の懇親会で参加者の方々と談笑していたとき,臨床場面のセラピストと患者さんの間で生まれるセッション感について,非常に興味深いお話を伺いまいた.

彼らがおっしゃるには,あるセラピストと大変良好な関係でリハビリが遂行できている患者さんは,セラピストと同じ波長で行動するのだそうです.そのため,リハビリが良好にいっている患者さんは,歩きぶりなどを見るだけで,どのセラピストがその患者さんの担当をしているかわかるというのです.なぜそのようなことが起きるのか,現時点では不明ですが,多くのセラピストの方々が同じように感じておられるのならば,非常に興味深く,効果的なリハビリを実現するための心理的・認知的問題として,深く考えるべきことと感じました.





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