セラピストにむけた情報発信



バーチャルリアリティ環境でのパーキンソン患者のすくみ足の再現
(Gomez-Jordana 2018)




2019年1月7日
たとえ臨床の現場で目の当たりにする歩行障害でも,実験室環境ではうまく再現できないことがあります。このため,バーチャルリアリティ(VR)環境を利用して歩行障害をリアルに再現し,問題の解明につなげたいという考え方があります。

今回ご紹介する論文は,パーキンソン病患者の歩行障害(すくみ足につながる歩容の変化)をVR環境で再現できたことを報告している論文です。

Crossing virtual doors: a new method to study gait impairments and freezing of gait in Parkinson’s disease. Parkinson’s disease 2018 Article ID 2957427, 8pages, 2018.

パーキンソン病患者10名(うち4名がすくみ足を呈する),および健常高齢者10名が対象でした。ヘッドマウントディスプレイを通して隙間通過場面を提示するVRシステムを利用しました。隙間なし,狭い隙間(肩幅と同じ),広い隙間(肩幅の1.25倍)の3条件がありました。隙間がある条件では,4m歩行後に隙間を通過しました。

なお,歩行通路は参加者の肩幅の5倍に設定されました。つまり,参加者ごとに歩行環境がカスタマイズされたわけです。このようなカスタマイズが自由にできることも,VR環境の利点です。

実験の結果,パーキンソン病患者は隙間のある条件においてすくみ足につながる歩容の変化が見られました。速度の低下,歩幅のばらつきの増加といった変化です。この結果は,VR環境においてパーキンソン病患者の歩行障害を再現できることを示唆します。

この論文は,研究室の修士2年生,近藤夕騎氏に紹介してもらいました。近藤氏は現在,助教の福原和伸先生とともに,研究室におけるVR環境を開発してくれています。近藤氏はもうすぐ修了ですが,彼が培ったシステムをベースに今後も発展させていきたいと思います。


(メインページへ戻る)