セラピストにむけた情報発信



バスケットのフリースローにオンラインの視覚情報は必要か
(de Oliveira et al. 2007)



2017年12月19日
ここ最近このコーナーでは,スポーツ動作を対象とした研究を紹介してきましたが,今回の紹介で一区切りとなります。今回は,10年ほど前に報告された,バスケットのフリースローを対象にした研究です。

de Oliveira RF et al., Basketball jump shooting is controlled online by vision. Exp Psychol 54, 180-186, 2007

フリースローの距離は一定であるため,いったんゴールをしっかりと視認できれば,熟練者ならば目隠ししてでも入ってしまうのではないかと,素人的には思ってしまいます。しかし実際には,目隠ししながらのフリースローはとても難しく,視覚が不可欠な動作といえます(だからこそ,目隠ししてフリースローを決めたマイケルジョーダンの映像は,あまりにも有名です)

実験では17名の熟練者を対象に,視覚遮断した後のフリースローのパフォーマンスおよび動作特性を検討しました。視覚が遮断されてからフリースローを打つまでの時間を3段階に設定しました(0秒遅延,1秒遅延,2秒遅延)。遅延時間が長いほど,記憶に基づく動作遂行感が高まるため,難易度が高くなると予想されました。

実験の結果,シュート成功率は,遅延時間の長さにかかわらず同程度に低下しました。つまり,フリースローにはオンラインの視覚情報が重要であることが示唆されます。

シュート動作については,遅延時間の影響が見られました。肩と肘,および肘と手首の協調関係について,遅延時間の長さが長くなるほど協調関係が低くなることがわかりました。一方,手と指の協調関係については,視覚遮断の影響は見られませんでした。著者らは,腕の動きの中でも特に体幹に近い関節の動きについて,視覚情報に基づくオンラインの調整がなされているのではないかと説明しています。


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