セラピストにむけた情報発信



本紹介「日常と非日常からみるこころと脳の科学」




2017年10月30日
今回ご紹介するのは,国内一線級の認知科学・心理学の研究者が,最新の認知科学・心理学の重要トピックについて,学生でもわかるレベルでわかりやすく解説した近刊本です。私が長年にわたり研究交流してきた,宮崎真氏,阿部匡樹氏が編者をしています。

宮崎真・阿部匡樹・山田祐樹「日常と非日常からみるこころと脳の科学」コロナ社,2017

著者陣やトピックの詳細はこちらから閲覧できます。

この本の最大の特徴は,多くの人が興味を持つ日常エピソードに結びつけて,研究トピックを説明している点にあります。

「自分でくすぐると,それほどくすぐったいと感じないのはなぜか?」
「一流のサッカー審判でもオフサイドの誤審をしてしまうのはなぜか?」
「一人で考えるよりも複数の人で知識を出し合った方が,生産的な結論に至るだろうのか?」
「私たちは本当に,自分の行動を明確な意図に基づいて選択しているのだろうか?」

すぐに答えを知りたくなるような日常の疑問や話題が,27のトピックとして取り上げられ,解説されています。各トピック5-6ページと簡潔にまとめられています。それぞれの話題に関連する重要な研究テーマの概要を,短時間で理解するための工夫が随所になされています。

本書を通して,日常の疑問や話題について考えることで,運動の内部モデル,ミラーニューロンシステム,記憶のコンソリデーション,意思決定のポストディクションなど,重要な認知科学・心理学の基礎知識を学ぶことができます。

ともすれば複雑な説明になりがちな話題を,国内一線級の著者陣が,できる限りわかりやすく,日常的な事例に結びつけながら解説しているところが,本の最大の特徴です。本の書き手としても,また誰かに難しい話をわかりやすく説明する場面でのお手本としても,参考になる部分が多々ある本と感じました。



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