セラピストにむけた情報発信



大学院特別講義



2017年9月19日
私が所属する大学院のヘルスプロモーションサイエンス学域では,毎年特別講義として,外部から研究者の先生をお招きしています。今年も魅力的な先生方にお越しいただき,講義が展開されましたので,ここにその内容を紹介いたします。

<日本女子体育大学,永野康治先生>

研究室の助教,福原和信先生のご紹介で実現しました。永野先生は,理学療法士とアスレティックトレーナーの資格をもたれ,スポーツ科学分野で博士号を取得しています。本日は膝前十字靭帯(ACL)損傷のメカニズムや予防について講義いただきました。主としてバスケットボールにおけるACL損傷について講義をしていただきました。

バスケットボールは接触の多いスポーツですので,接触が原因で損傷を起こすものと思っていましたが,意外にも多くのACL損傷は非接触場面で起こっていることがわかりました。またどちらかといえば女性がACL損傷を起こすことが多く,その原因として考えられることについて解説がなされ,予防の具体策としてのトレーニング法をデモンストレーションしていただきました。

<国立精神・神経医療研究センター,北洋輔先生>

北先生は,心理学・認知科学が専門です。「認知発達とその障害」というテーマでお話しいただきました。授業は3部構成で展開されました。第1部は認知発達に関する基礎知識の紹介です。乳児の視力はどの程度か,母親の顔がわかるようになるのはいつごろからかといった,一般的な知識についてご解説いただきました。

第2部は,子供の認知機能を知るための脳活動測定として,NIRSの測定体験が行われました。NIRSの機材をお持ち込みいただき,実際にどのような測定を行うのか,また測定の際にどのようなことに気を付けないといけないのかという点について,大学院生が体験的に学びました。

第3部は,自閉症スペクトラム障害(ASD)児に関する北先生の研究成果のご紹介です。一般に対人コミュニケーション障害や限定的興味などが指摘されるASD児について,研究の結果どのようなことが分かったのかについてご解説いただきました。ASD児は,人の顔といった社会的刺激に対して自動的に注意が向く昨日がやや低下する傾向にあり,それが自他意識の欠如やコミュニケーション障害に結びついているのではないかという結果が説明されました。

<早稲田大学,紙上敬太先生>
西島壮准教授のご紹介で実現しました。運動・体力が認知機能に及ぼす影響について,どのような研究成果があるのかについてご解説いただきました。

運動の効果については,大きく分けて長期的な効果と,急性的な効果についての検証が成されています。また効果が期待される運動として有酸素運動の効果を検証する研究が多いとのことです。

長期的な運動によって,ワーキングメモリにかかわる実行機能の改善やや記憶向上効果が,高齢者を対象とした研究などにより報告されています。その背景には大脳半球前頭前野や海馬の活性が絡んでいるのではないかと考えられています。

数十分の急性的な運動についても,それが有酸素運動であれば,その直後の認知機能に良い影響があるのではないかという報告があるとのことです。


     
     
     

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