セラピストにむけた情報発信



スポーツ視覚研究会




2017年8月28日
8月26日に,国立スポーツ科学センターにて第9回日本スポーツ視覚研究会が開催されました。私はこの研究会の世話人を務めていることもあり,できる限り参加しているようにしています。

今年は3つのショート講演,ならびに大学院生からの2つの口頭発表がありました。
プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

今年は本学助教の福原和伸先生がショート講演を担当しました。「バーチャル環境を利用した競技者の知覚・認知スキルの解明」というタイトルです。

福原先生は常々,「一流選手が見ている世界を疑似体験できるシステム」の構築を目指しています。話題提供ではバーチャル環境を用いた国際的な研究動向,ならびに福原先生自身が行っている様々な研究の紹介が行われました。

北里大学の石川先生は,「スポーツ視覚研究と瞳孔」に関して話題提供をされました。瞳孔は,径というという極めて定量性の高い数値で表現可能であることや,散瞳(瞳孔が開いていること)や縮瞳(瞳孔が閉じていること)の状況が,それぞれ交感神経優位,副交感神経優位の状況を示しうることから,運動負荷や精神状態を把握する指標となりうることについて説明されました。

筑波大学の小野先生は,「動きを見るための眼球運動系の特性と機能」に関して話題提供をされました。ボールの片手捕球における頭部と眼の動きを研究した研究によれば,補給のうまい対象者は①頭部のみが動いて視線が動かないか,②頭部の動きに続き,それと同じ方向の眼球運動が生じていました。これに対して補給の苦手な参加者は,頭部の動きと逆方向に眼球運動が生じていました。小野先生はこのデータに基づき,苦手な参加者の場合,頭部の動きに対する前庭動眼反射(VOR)が生じてしまい,結果的にボールを正確に終えていない可能性がある可能性を指摘しました。逆に言うと,補給のうまい参加者は,経験を通してこのVORを抑制する学習機構を成立させていった可能性があるとのことです。


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