セラピストにむけた情報発信



講演@ブラインドパラスポーツミーティング




2017年5月22日
5月16日に,視覚障害者を対象としたパラスポーツ選手のサポートを考える研究会(第34回ブラインドパラスポーツミーティング)にて話題提供をいたしました。

この研究会は,スイマーとして多くのパラリンピック大会にも出場されている河合純一氏(日本スポーツ振興センター),筑波大学理療科教員養成施設・施設長の宮本俊和氏,眼科医の清水朋美氏(国立障害者リハビリテーションセンター)らによって運営されている研究会です。視覚障害当事者、視覚障害スポーツ指導者、盲学校体育教員、視覚障害者スポーツ研究者、眼科医など,様々な方が集まっているとのことです。

「ブラインドパラスポーツ選手の“予測力”を考える」というタイトルで,60分にわたり話題提供をしました。

普段の私の研究は,「視覚と運動」を主として扱っていますので,視覚を利用できない運動の問題は,必ずしも専門ではありません。しかしながら,運動に対して視覚情報がどれだけフル活用されているかについて研究しているからこそ,視覚情報が利用できないときにどのような影響が予想されるのか,ということについては,一定の情報を呈示することができます。講演ではそうした趣旨のもと,“予測力”をキーワードに話をしました。

“予測力”は,スポーツ熟練者の優れた状況判断能力を支える重要な要素の一つです。晴眼者の場合,予測のために視覚をフル活用しています。視線の動かし方一つをみても,的確な予測をしやすくするために様々な調整が成されています。

では,視覚を利用できないブラインドパラスポーツ選手において,予測はどのように行うのでしょうか?

かつて,ブラインドテニス選手の動作解析研究を行ったことがあり,そのデータに基づいて話題提供をしました。我々の研究によれば,ブラインドテニス熟練者は,晴眼者のテニスに比べて予測的な動きの発現タイミングはやや遅れるものの,やはりストローク動作を行うにあたり,予測的な動きをして,正確なストローク動作を行っていました。相手選手がラケットでボールをインパクトした際の音や,バウンド音を主たる情報源として,状況を予測できることが,優れたパフォーマンスを支えていました。

話題提供では,こうした予測力を鍛えるためにどうすべきか,といったことについても議論しました。

ミーティング後の懇親会では,ブラインドパラスポーツにおける実践的な話題を数多く伺うことができ,大変勉強になりました。こうした経験をきっかけに,より深くパラスポーツと関わっていければよいなと願う次第です。

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