セラピストにむけた情報発信



本紹介「英語論文の書き方入門」





2017年5月1日
今回ご紹介する本は,タイトルの通り,英語論文の書き方に関する本です。しかし,この本の守備範囲は,英語論文の執筆に限定されてはいません。むしろこの本が大変優れているのは,「論文を書く」ということの重要なルールや作法について,わかりやすく解説している点にあります。

迫桂,徳永聡子 「英語論文の書き方入門」 慶応義塾大学出版会 2012

論文は,アカデミックライティングの作法に沿って書くことが期待されています。これは,学部時代に授業で書くレポートであれ,国際誌に投稿する論文であれ,同じです。論文の長さなどによって,スタイルは若干変わるものの,基本原理は同じです。よって,この原理をしっかりと学ぶことで,アカデミックなレポート・論文として他者に認めてもらえる文書とはどのような文書なのかを理解することができます。

アカデミックライティングでは,パラグラフを基礎単位とし,論理的に積み上げていきます。パラグラフでは1つのトピック“のみ”を扱うという,大事な約束事があります。

パラグラフでは,最初に書き手の主張を述べます(topic sentence)。主張に至る根拠は,そのあとで述べます(Supporting sentences)。そして最後に,そのパラグラフを終了させる文書が続きます(Concluding sentence)。終了させる文書では,主張を言い換えてもよいですし,根拠を要約する形で主張につなげてもよいです。この本は主として,学部生が大学で書く多くのレポートや論文をアカデミックに書くことを念頭に執筆されています。学生時代にアカデミックライティングに精通してこなかった人にとっては,学びなおしの良いきっかけになる本です。

私自身,これまで11年の教員経験を通して,数多くの学部生・大学院生の文書を読んできました。そうした経験を通して,読みやすい文書を書く上で忘れてはいけないことがあると思っています。それは,「アカデミックライティングでは,調べものではなく,自分自身の考えや意見が主役であること」です。

どんなに長時間をかけてたくさんの情報を調べ,レポートにまとめたとしても,「それらの情報を通して何を主張したいか」に対する見解をしっかり述べなければ,良い評価は得られません。情報だけ膨大に与えられても,「結局何が言いたいのか?」が理解できなければ,情報の価値が薄れてしまうのです。特に実験や調査等に基づく数値情報が記載されるレポートにおいては,数値データが主役になっている場合が少なくありません。

今回ご紹介する本の中では,第1章において「論文の主役は,調べ物ではなく,主張です」ということが,明確に述べられています。この本を通して,主張を主役にする文書を書くために,どうすればよいか,また数値データを主張の根拠として有効活用するためにどうすればよいか,勉強してみてはいかがでしょうか。

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