セラピストにむけた情報発信



頭部によるダイナミック・タッチ:
Jeffrey Wagman氏との共同研究(Wagman et al. 2016)




2016年10月17日
長年親交のある,イリノイ州立大学,Jeffery B Wagmanとの共同研究成果が,Experimental Brain Researchに出版されました。今回はその内容についてご紹介いたします。

Wagman JB, Langley MD, Higuchi T. Turning on its head: cephalic perception of whole and partial length of a wielded object. Experimental Brain Research, in press.

主たるテーマはダイナミック・タッチです。手に持った棒を目隠しして持っていても,その棒を振ることができれば,長さを正確に知覚することができます。このように,物体に対して能動的に運動をすることで物体の特性を知覚する行為を,ダイナミックタッチと呼びます。

今回の論文では,頭部に取り付けた棒の長さについても,ダイナミック・タッチによって知覚することが可能であることを,3つの実験により確認しました。

実験では,参加者にヘルメットをかぶってもらい,そこに35㎝から110㎝の長さの平行棒(全6種類)を取り付けました。棒は常に右側に伸びた形で取り付けられました。

3つの実験の結果,①手に持った棒と,頭に取り付けた棒の長さ知覚には,有意な違いが認められないこと,②いずれの条件においても,棒の慣性特性を利用して棒の長さを知覚していること,そして,③棒の端を持つ場合だけでなく,棒の中心近くを持つ場合でも,その長さを正確に知覚できることを報告しました。

この実験結果から,ダイナミック・タッチは,四肢のようにダイナミック・タッチをある程度頻繁に行う身体部位でなくても,正確な知覚へと導く情報を提供できるといえます。頭に棒を取り付けた状態など,よほどのことがない限り日常生活で体験するものではありません。にもかかわらず,頭部によるダイナミック・タッチであっても,手によるダイナミック・タッチのように機能するのですから,興味深い現象と言えるでしょう。

この実験ではイリノイ州立大学で実施されました。動作解析ができる装置がないため,参加者がどのように頭部を動かしたのか,またその動かし方によって正確性は変わるのか,といった問題を,三次元動作解析装置がある首都大学東京で実施できたらよいね,と話していたところです。

今後とも,こうした国際共同研究を進めていけるよう努力します。
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