セラピストにむけた情報発信



第4回生態心理学とリハビリテーションの融合研究会




2016年3月7日
3月5-6日に藤田保健衛生大学にて,第4回生態心理学とリハビリテーションの融合研究会が開催されました。一般聴衆として参加してまいりましたので,概要をご紹介いたします。

この研究会は,生態心理学の概念をリハビリに取り入れようとされているセラピストの皆様を中心とした研究会です。生態心理学系の研究者が合わせて参加し,意見交換をすることで,理論的なサポートを目指すという趣旨で,2年に1回開催されています。

プログラムは,特別講演3題,シンポジウム1題,一般演題,および実技体験で構成されました。詳細はこちらをご覧ください

特別講演では,運転行動時のオプティカルフローに関する話題提供(沢田護氏,デンソー(株)),運動制御におけるリズム生成の問題に関する話題提供(冨田昌夫氏,藤田保健衛生大学),保育環境のアフォーダンスに関する話題提供(細田直哉氏,聖隷クリストファー大学),がありました。

シンポジウムでは,マイクロスリップという行動現象の意味とリハビリテーションの関連性が議論されました。マイクロスリップとは,完全にエラーとなってしまう前の,行為の修正(やりなおし)の動作を指します。行動としては,お箸で何かをつかもうとしたときの“迷い箸”のような行動と見かけ上は類似しています。リハビリテーションにどのように結び付けるのかについては,発展途上の段階という印象ですが,行動上の意義については活発な意見交換がなされました。

私にとって新鮮だったのは,実技体験でした。この講習会にかかわる先生方が,どのようなアプローチをとられるのかを体感し,合わせて,それが生態心理学のフレームワークの中でどのように説明されるのかについて,担当講師の方々より実演・ご説明いただきました。

私には理論的なアドバイザーという役割がありましたが,実際のところは,クライアント役としてベッドにうつ伏せになり,アプローチの意味を身体感覚的に理解し,できる限り言語化するというミッションがありました。幸か不幸か,私は身体を効果的に使えていない(身体が一部“固い”ため,連動的に動けていない)ということで,模範的なクライアントとなりました。

複数の講師の方々のアプローチを体感することができました。理論的に目指すべきゴール,引き出される感覚は講師間で共通にもかかわらず,アプローチとして実際に行われる身体運動は見かけ上異なるということが,強く印象に残りました。2者の相互作用として理想的な感覚が引き出されるということや,私自身の身体が少しずつ変化していることに呼応する形でアプローチが少しずつ変わっていくということかな,と感じました。

こうした熟練者の引き出す感覚を可視化・数値化したいという想いは,関連する多くの研究者に共通です。いつの日か,そうした可視化・数値化を通して私も貢献できればうれしいなと思いました。

次回は2年後の2018年 に,滋賀で開催されるとのことです。


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