セラピストにむけた情報発信



講演「状況判断の心理学」(football groove2)




2016年1月26日
1月23日に,サッカーの指導やコンディショニングに関心のある専門家の方々の前で,講演をする機会を頂戴しました。普段とは趣向の異なる講演ですので,その内容を少し紹介したいと思います。

このイベントは,理学療法士の永田将行氏と大曽根聡氏が企画されているイベントであり,今年が2回目とのことです。仙台大学の村上憲治氏,大曽根聡氏,樋口が話題提供を行いました。詳細はこちらをご覧ください。

私の話題提供テーマは,「状況判断の心理学」でした。

サッカーなどの球技において,マークすべき相手選手の動きを見逃したり,フリーになっている味方選手の存在を見逃したりする,といったミスをすることがあります。こうした状況判断のミスは,「見るべき場所が視野に入っていなかった(そもそも状況判断に必要な情報が入力されていない)」だけでなく,「見るべき場所を視野に入れていたにもかかわらず,重要な情報を見逃した」ということが起こり得ます。

講演では「見ていたはずなのに見逃す」という状況判断のミスについて,空間的注意との関連性から解説をしました。

このほか講演では,球技の熟練者は重要な局面でどのような視線行動を見せるのか?,練習で獲得した運動や状況判断のスキルが試合で発揮できない理由は?(環境との相互作用としての運動,という観点から),について,様々な研究事例を紹介しました。

話題提供後は,約30名の参加者から非常に多くのご質問・コメントを頂戴しました。30-40分の時間をかけて,その一つ一つについて,フロア全体で議論を楽しみました。残念ながら,実践的に重要な問題に対して,基礎研究の成果だけで回答するには限界があり,とても興味深いご質問の多くに,明快に答えることができませんでした。こうした様子が,結果的に基礎研究の有用性と限界をご理解いただくきっかけとなれば,嬉しく思います。

今回は村上氏,大曽根氏の話題提供を拝聴することができませんでした。またの機会を楽しみにしたいと思います。

東京オリンピックを控えていることもあり,知覚認知に関する基礎研究の成果を,スポーツにどのように活かすのかについても,盛んに議論されています。今回のイベントは,私たちの研究領域の知識が,こうした議論にどのような話題を提供できるかを呈示するうえで,貴重な機会でした。コーディネーターの永田氏と大曽根氏に感謝します。

 

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