セラピストにむけた情報発信



報告:研究室主催セミナー
Cognitive/perceptual-motor control of human behavior




2014年11月15日

11月12日に,私の研究室主催イベントとして,知覚認知と運動に関するセミナーを開催いたしました。プログラムの詳細はこちらをご覧ください

当日は4名の話題提供者にお話をしていただきました。

John Stins氏(アムステルダム自由大学)は,立位姿勢制御やステッピング動作に対する感情情報処理の影響を検討した研究成果をご紹介くださいました。「快なものには接近,不快なものには回避」という,感情情報処理の基本原理に沿うように,目の前に呈示した快刺激・不快刺激が,姿勢や動作に影響しうることを示す結果について解説してくださいました。

進矢正宏氏(東京大学)は,歩行の制御において予測(予期)の機能が重要な役割を果たしていることを示した研究成果をご紹介くださいました。何の先行情報もないままに,通路に段差ができる条件であっても,修正動作に関わる筋活動がかなり早い段階で生起します。また,段差ができることを一度経験すると,次に突然段差が発生した際には,その反応が劇的に早くなります。こうした成果が,予測の機能を想定するモデルにフィットしていることについてご解説いただきました。

古屋晋一氏(上智大学)は,音楽家の脳の神経可塑性に関する研究成果をご紹介くださいました。ピアニストに代表される音楽家に生じるジストニアの障害が,運動野の非適応的な可塑性や過剰活動により引き起こされている可能性について,数多くの根拠を示されました。さらに,そうした可塑性や過剰活動を修正するための介入効果についてもご紹介くださいました。

今中国泰氏(首都大学東京)は,非意識的な視覚情報処理がその直後の運動に及ぼす影響という研究成果をご紹介くださいました。マスク刺激によって意識にのぼらなかった視覚刺激の存在に対して,脳では既に運動の準備を始めていることが示されました。また,素早く動く視覚刺激を見た後には,その刺激とは全く無関連な動作でであっても,素早く動作が実行されることが示されました。

本セミナーは,平日の午後に八王子にて開催したイベントでした。にもかかわらず,50名近い方々にお集まりいただきました。お忙しい中,素晴らしい発表をしてくださった4名の話題提供者,そして,議論に参加してくださった参加者の皆様に,心より感謝申し上げます。

本セミナーは,学術振興会の外国人短期招聘プログラムの助成により,Stins氏を招へいしたことに伴うイベントです。ここに記して謝意を表します。

 
 
 


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