セラピストにむけた情報発信



第6回スポーツ視覚研究会




2014年8月25日

8月23日に,第6回スポーツ視覚研究会に参加いたしました。

昨年度は,この研究会で話題提供者として発表する機会をいただきました。今年は,話題提供者の一人である,鹿屋体育大の中本浩揮氏を推薦した経緯もあり,聴衆として参加いたしました。

今年度は3名の先生方からの話題提供がありました。抄録はこちらをご覧ください

最初の話題提供は,国際医療福祉大学の新井田孝裕氏による,眼優位性(いわゆる利き目)に関する話題でした。一般に眼優位性は,Sensoryなレベル(両眼視において優位に使われる眼,Hole in the card testなどを使って測定しているレベル),Perceptualなレベル(視野闘争の状況で見えの状態が長く続く眼),そしてMotorなレベル(輻輳レベルで優位に働く眼)の3つのレベルで考えます。新井田氏は,最近の傾向として,これに注意のレベル(つまり注意の方向づけのしやすさの左右差)も含めた4レベルで考えるべきだと説明されました。

新井田氏は,眼優位性の問題について,単に右眼優位か左眼優位かという点だけでなく,優位眼と非優位眼の違いがどの程度大きいかということが,様々な問題に影響することを,具体例を挙げて教えてくださいました。

次の話題提供は,東海大学の山田光穂氏による,眼球運動解析に関する研究紹介でした。山田氏はNHKご出身であり,TV放送用に視線カメラの開発に携わった経緯があります。話題提供の前半では,その当時の映像としてどのような撮影がなされたか,そしてどのような視線行動が得られたかについて,ご紹介がありました。そのうえで,最近の取り組みとして,「壊れても参加者を守り,簡単かつ安価に交換できる視線計測装置」を作る試みや,「固定カメラと同期して視線位置を映像化できるシステムづくり」の試みをご紹介くださいました。

最後の話題提供は,私が推薦した中本氏による,動きを「みる(≒見極める)」の熟達に関する研究紹介でした。中本氏は,スポーツにおける「みる」力として,「物体の動きを見る力(例:ボールから目を離さない)」と,「他者の動きをみる力(例:相手の動きを見分けて将来を予測する)」という2つの観点をあげ,それぞれに対する最新の研究動向や,ご自身の研究成果を紹介されました。

中本氏の話題のうち,参加者の心を最もつかんだのは,「みる」という機能に,運動実行系のシステムが深く関与しているという話題であったと,私は思っています。

一般に,「みる」ということは視覚認知性の問題として捉えますが,実際には運動経験を通して見えるようになるという側面があります。体操やフィギュアスケートにおいて,解説者が「3回転半ジャンプ」と解説されても,素人には全くその回転数はわかりません。つまり,熟練者のみがそうした回転数を見ることができる部分があります。こうした経験を裏付ける知見について,わかりやすく解説されていました。

この研究会には,主として眼科医の皆様や工学系の皆様,そして会場である国立スポーツ科学センターの関係者の皆様が集まっています。昨年度より,我々スポーツ心理の人間も混ぜていただくようになりました。こうした新しい関係の中で,今後も良いコミュニケーションが取れるとよいなと感じています。

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