セラピストにむけた情報発信



眼の動かし方の訓練で身体運動は向上するか?(Vine et al. 2014)
 -その2-




2014年6月9日

前回に引き続き,「Quiet eyeのような眼の動かし方を訓練することで,身体運動を向上させることができるか」について議論したレビュー論文を紹介します.

前回は,Quiet eyeの有益性を実証する方法として,2つの方法があることについて紹介しました.

今回は,なぜ目の動かし方を訓練すると身体動作が改善するのか?という問題に関する,著者らの見解を紹介します.著者らはその説明として,3つの可能性を指摘しています.

第1の可能性は,注意のコントロールに関わるものです.目の動かし方を訓練することで,どこに注意を向ければよいかを理解でき,正しい情報処理ができるようになるという説明です.

第2の可能性は,動作をおこなうためのプログラミング(response pre-programming)に,多くの時間を費やせるというものです.この指摘は,Quiet eyeという現象を最初に報告したカナダのVickers氏が当初想定したものです.ターゲット動作において必要となる情報に長く視線を固定することで,無駄な情報に気を取られることなく,集中して動作のプログラミングができると考えます.

第3の可能性は,身体外部の対象物に対する注意(external focus of attention)に関わるものです.注意の問題を扱っているという点では,第1の説明と類似していますが,ここでは注意を向けるべき場所が身体外部にあることに限局している点が特徴です.

運動学習の領域では,優れた動作の遂行には注意を身体外部に向けることが不可欠,と考える人たちがいます.そうした研究によれば,身体外部に適切に注意が向いているときは,心拍数の減少や,主導筋の筋活動の減少がみられるそうです.Quiet eyeのトレーニング後にもこうした現象が見られる場合があることから,何らかの関連性が指摘されています.

いずれの説明も一長一短がありますが,眼の動かし方に着目して身体運動を考えるべきかを判断するうえでは,参考となる情報です.

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