セラピストにむけた情報発信



研修会報告:Plasticita特別講習会@北九州




2010年8月3日

8月1日に,北九州市の新小文字病院にて,Plasticita勉強会主催の講習会に参加いたしました.Plasticita勉強会は,北九州門司区を拠点とした理学療法士・作業療法士向けの勉強会です.

今回は「知覚・認知情報処理と身体運動」というテーマで,90分×3回の話題提供をいたしました.拙著「身体運動学」の内容に即して,身体意識,注意,視覚と歩行,生態心理学,身体と環境の空間関係の知覚,といった話題に触れました.

今回の講習会では,特に本学大学院生の研究内容に対して,様々なご質問をいただきました.

  • 「身体状況の顕在化を促す運動が立位姿勢制御に与える影響」(博士後期課程,安田和弘)の研究については,意識化を促す運動課題は特定の性質を持つ運動に限定されるのか,あるいは“意識化”を促す課題ならなんでもかまわないのか,といった質問をいただきました.

    「脳卒中片麻痺患者における歩行中の視線の役割:下方へ向ける理由」(博士前期課程,吉田啓晃)については,得られた結果は右麻痺・左麻痺により異なるのか,また麻痺の有無と独立して運動速度の影響を多分に受けるのではないか,といった質問がありました.

    さらに「加齢に伴う身体機能の認識低下に関する行動学的検討」(博士前期課程,桜井良太)については,高齢者が自己の行為能力を正しく認識していないという背景に,本当に「環境と身体の関係性の問題がある」という認知神経科学的根拠があるか,といった質問がありました.
 
残念ながら,現時点でこれらの質問に対して,データに基づき正確に答えることができない状況にあります.いずれの研究も始めて間もないこともあり,現状では単発の研究で得られたわずかな成果を,速報的に報告しているにすぎません.

いずれの研究も,進展に一定の時間を要することから,すぐに様々な疑問に答える実験をしたり,臨床に結び付く具体的な示唆をすることができません.歯がゆい状況ではありますが,臨床の現場に携わる方から様々な疑問点をぶつけてもらうことが,これらの研究の方向性について確認するのに,とてもよい判断材料となっています.できるだけ早いうちにこうした質問に回答できるよう最善を尽くしたいと,改めて思う次第です.

今回の講習会は,Plasticita勉強会主催の山下弘司先生(下関看護リハビリテーション学校)よりお話をいただき,実現いたしました.これまで福岡の博多地区には何度か訪問する機会がありましたが,初めての北九州地区への訪問で,新しい交流の輪が広がりました.

特に前日の懇親会では,新小文字病院の若いスタッフの方々と交流する機会を頂戴し,学術的な話題以外でも大いに盛り上がりました.さらに全くの余談ですが,羽田と北九州を結ぶスターフライヤー航空を初めて利用しました.機内設備が非常に充実しており,通常の国内旅行とは少し違った満足感を得ることができました.

こうした初めてづくしの体験をコーディネートしてくださった山下弘司先生,およびスタッフの皆様に厚く御礼申し上げる次第です.


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