セラピストにむけた情報発信



他者への接触によって高齢者の姿勢動揺は減少する(Johannsen et al 2009)



2010年1月15日

立位姿勢中に,壁などに指先で軽く触れるだけで,姿勢動揺は減少します.本日ご紹介する論文は,指先で触れる先が壁のように固定されたモノではなく,人であっても姿勢動揺が減少することを,高齢者を対象として実証したものです.

Johannsen L et al. 2009 Interpersonal light touch assists balance in the elderly. J Mot Behav 41, 397-399

実験では平均65歳の高齢者10名を対象に,両足立位時の姿勢動揺を測定しました.測定条件は3条件であり,何も触れないで立っているコントロール条件,固定台に指先で触れる条件,隣に立っている人の手に軽く触れる条件でした.

実験の結果,人の手に触れる条件ではコントロール条件に比べて平均で13%姿勢動揺が減少することがわかりました.固定台に触れる条件における31%に比べれば,減少率は低いものの,コントロール条件よりも有意に動揺が低くなることがわかりました.

リハビリや介護の場面では,高齢者が歩行をする際に,セラピストや介護者が腕に軽く手を添えて一緒に歩くことがあります.これは本来,万が一高齢者がバランスを崩した時に支えるための行為です.本日ご紹介した論文の成果は,腕を添えることにはそれ以外にも,姿勢動揺それ自体を減少させる効果を持ちうる可能性を示しており,臨床場面への応用可能性を期待させるものです.

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