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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2013年度研究成果

1.  梁曲げ破壊するスラブ付きPRC柱梁十字形部分架構の耐震性能と各種限界状態

北山和宏・遠藤俊貴・島 哲也・川嶋裕司

 本研究ではプレストレスト・コンクリート(PC)構造建物の性能評価型設計法を開発することを最終到達点として見据えつつ,PC梁曲げ部材が各種限界状態に到達するときの変形を精度良くかつ簡便に求める手法を構築することを目的とする.

 実際の建物にはスラブが取り付く。そこで平面十字形部分架構に直交梁およびスラブを付加した2体と,比較用の平面十字形部分架構1体の各試験体に静的載荷する実験を2012年度に行って,梁部材の復元力特性,各種限界状態に至るまでの損傷過程などを詳細に調査した.実験では,全試験体とも梁主筋の降伏後にPC鋼材の降伏と同時あるいはそのあとに最大耐力に到達し,その後は梁主筋の座屈および破断によって耐力が急激に低下して,梁付け根コンクリートが激しく圧壊した.

 本研究によって得られた主要な結論を以下に示す.
(1) スラブの等価協力幅は梁主筋降伏と同時の梁部材角0.15%程度で梁スパンの0.1倍を超え,最大層せん力に達する前に梁スパンの0.2倍に達した.

(2) PC鋼材の残留緊張力は,プレストレス率が0.5程度の場合,梁変形の増大とともに初期緊張力よりも増加したが,プレストレス率が0.75程度の場合には逆に低下した.PC鋼材降伏後の梁部材角1.5%時の緊張力残留率は0.85〜1.29であった.

(3) 最大層せん断力除荷時の残留変形角および残留ひび割れ幅にスラブの影響は見られなかった.

(4) 上端曲げ耐力が下端曲げ耐力よりも大きいT形梁断面では,矩形断面と比べて上端引張時には早期に下端コアコンクリートが圧壊し,主筋の座屈および破断を誘発した.

(5) 使用限界は梁部材角0.15〜0.53%で「残留ひび割れ幅0.2mm」および「主筋の僅かな降伏」によって,修復限界Tは梁部材角0.24〜0.90%で「PC鋼材の弾性限界」および「残留ひび割れ幅1.0mm」によって,修復限界Uは梁部材角0.69〜1.69%で「残留変形角1/200」,「PC鋼材の僅かな降伏」および「残留ひび割れ幅2.0mm」によって,安全限界は梁部材角2.66〜4.36%で「コアコンクリートの圧壊」および「主筋の破断」によって各々決定した.


2.  三方向加力を受ける鉄筋コンクリート柱梁接合部の破壊機構に関する実験研究

北山和宏・遠藤俊貴・片江 拡・佐藤宏一

 塩原らの研究によれば,鉄筋コンクリート(RC)柱梁接合部の柱梁曲げ強度比(節点における梁の曲げ終局強度に対する柱の曲げ終局強度の比)が1に近い場合,十分な接合部せん断余裕度(接合部入力せん断力に対する接合部せん断終局強度の比)を有するにもかかわらず柱梁接合部に損傷が集中し,梁の曲げ終局強度に達する以前に接合部破壊して期待した耐力を発揮できない場合がある.

 このような新しい破壊形式を検証するための既往の実験研究は平面の十字形および外柱梁部分架構試験体によるものが中心であり,柱に対して直交する二方向から梁が貫入する立体柱梁部分架構試験体を用いた実験研究は少ない.しかし実建物における隅柱では,柱梁接合部の破壊によって軸力を保持できずに部分的に落階を生じるような地震被害が外国では発生している(例えば1993年グァム島地震).隅柱では地震動による水平力の方向によって軸力が増減するため,柱梁曲げ強度比は低下することがある.上述の地震被害も鑑みると,三方向加力時の隅柱梁接合部の耐震性能を把握することは重要である.

 そこで本研究では梁が直交する二方向から1本ずつ貫入する立体隅柱梁部分架構試験体2体を用いて,圧縮軸力を変えることによって柱梁曲げ強度比を1.4および2.3とした場合の三方向加力実験を行い,柱梁接合部の破壊機構を詳細に検証した.なお比較用に平面の隅柱梁部分架構試験体1体にも水平一方向の静的載荷実験を行った.得られた成果の概要を以下に示す.

(1) 立体隅柱梁部分架構試験体は柱梁接合部のせん断余裕度を1.6程度と十分に確保したにもかかわらず,圧縮軸力および二方向水平力を同時に受けて梁主筋,柱主筋および接合部横補強筋の降伏後に柱梁接合部パネルに損傷が集中して破壊した.

(2) 柱梁曲げ強度比を1.4とした立体隅柱梁部分架構では,二方向水平加力時の層せん断力は計算による梁曲げ終局耐力よりも26%小さく,梁の曲げ性能を発揮しなかった.これに対して柱梁曲げ強度比を2.3とした立体隅柱梁部分架構では,二方向水平加力時の層せん断力は計算による梁曲げ終局耐力にほぼ到達した.ただし最大耐力後の耐力低下は柱圧縮軸力の大きい(すなわち柱梁曲げ強度比を2.3とした)試験体のほうが激しく,これは柱梁接合部パネルの著しい破壊によって引き起こされた.

(3) 柱梁曲げ強度比を2.3とした立体隅柱梁部分架構の水平二方向載荷時の履歴ループは柱梁曲げ強度比を1.4とした場合よりも太っており,エネルギー吸収量が多かった.


3. 鉄筋コンクリート十字形柱梁接合部パネルの破壊機構に関する研究

北山和宏・楊 森

 鉄筋コンクリート(RC)内柱梁接合部パネルの新しい破壊形式が塩原(東京大学)によって提唱されたことを受け,2011年に本学においてRC平面十字形柱梁部分架構試験体5体に静的交番繰り返し載荷する実験を行った.この実験では,柱梁曲げ強度比(節点における梁曲げ終局強度に対する柱曲げ終局強度の比),柱軸力(圧縮および引張り),梁軸力(無しおよび圧縮),および柱梁接合部パネルのアスペクト比を実験変数とした.実験では全試験体とも梁主筋,接合部横補強筋および柱主筋が降伏したあとに柱梁接合部パネルが破壊した.

 この実験研究による成果の一部は2011年度に公表されたが,検討が十分ではない試験体があったことや変形成分の分離等の残された課題があったため,それらについて詳細な検討を行った.得られた主要な成果を以下に示す.

(1) 全試験体の最大耐力は梁曲げ強度略算値より大きかった.楠原・塩原らによる接合部曲げ終局強度計算値は梁圧縮軸力(アンボンドのPC鋼棒を梁断面中央に通すことによって導入)が作用する場合の最大耐力を妥当に評価したが,その他の試験体では実験値よりも8 %から14 %大きくなり実験結果を過大に評価した.

(2) 塩原の9自由度モデルに基づき分離した柱梁接合部の回転変形成分は層間変形の35%〜50%を占めたが,接合部せん断変形成分の比率は10%以下と小さかった.梁の圧縮軸力は柱梁接合部の回転変形の抑制に寄与した.


4. アンボンドPC鋼材で圧着接合したプレキャスト・プレストレスト・コンクリート柱梁骨組の耐震性能

北山和宏・栗本健多・新井 昂・田島祐之(アシス株式会社)・金本清臣(清水建設株式会社)

 持続可能な社会基盤を構築するためには,建物の長寿命化を計ることが有効な解決策となり得る.また地球環境の保全や少子高齢化の面から,建築業界における合理的な施工方法や既存建物の改修方法が求められる.

 プレキャストのRC柱および梁にアンボンドPC鋼材を貫通させ,緊張力を導入することで両者を一体化するプレキャスト・プレストレスト・コンクリート(以下PCaPCと略記)圧着工法は,地震被害を受けて劣化した部材を比較的簡易に交換できる点やグラウト充填作業が不必要な点,さらには部材の損傷を部材端部に集中させる損傷制御が可能な構法であることを勘案すると,上記の問題を解決するために有望な工法であると考えられる.

 そこで本研究ではPCaPC圧着工法で組み立てられた柱梁骨組の耐震性能を詳細に調べるために,以下の二つの目的を設定してそれぞれに対応する実験研究を実施した.

目的1; 柱に梁を圧着させるためのPC鋼材を梁部材内部で定着する場合,そのPC鋼材の長さが柱梁骨組の力学挙動に与える影響を把握する.

目的2; PCaPC圧着工法でつくられ,アンボンドのPC鋼材を用いたときの柱梁接合部パネルのせん断性状を把握する.

 目的1に対しては平面ト形柱梁部分架構試験体2体を作製した.一方はアンボンドのPC鋼材を梁部材内を貫通させ,他方はアンボンドのPC鋼材を梁端部から梁せいだけ離れた位置に定着させた.試験体は梁曲げ破壊するように設計し,柱梁曲げ強度比を5.1として柱梁接合部の破壊を防止した.

 目的2に対しては平面十字形柱梁部分架構試験体2体および平面ト形柱梁部分架構試験体1体を作製した.PC鋼材の付着の有無(十字形でアンボンドのPC鋼材を用いた試験体およびグラウトを施してPC鋼材に付着を与えた試験体)および試験体形状(アンボンドのPC鋼材を用いた十字形およびト形)を変数とした.試験体は柱梁接合部パネルがせん断破壊するように設計し,柱梁接合部の曲げ破壊を防ぐために柱梁曲げ強度比を1.7から4.8とした.コンクリートの圧縮強度は柱(柱梁接合部パネルを含む)において29.6 MPaから42.1 MPa,梁において77.4 MPaから82.4 MPaであった.

 以上の計5体の柱梁部分架構試験体に水平力を正負交番載荷する静的実験を実施した.この二シリーズの実験研究から得られた結論を以下に示す.

 目的1に対応する実験;

(1) 両試験体ともPC鋼材のひずみが弾性限界ひずみを超えたあと,梁付け根のかぶりコンクリートが圧壊することによって最大耐力に達した.PC鋼材が降伏したときの層間変形角はPC鋼材の長さが短い試験体では1.5%であり,PC鋼材の長い試験体の2.3%よりも小さかった.

(2) PC鋼材の長い試験体は原点指向性の高い履歴形状を示した.一方,PC鋼材の長さが短い試験体は層間変形角3%以降,除荷時残留変形が増大してスリップ型の履歴形状を示した.これは,PC鋼材降伏後,層間変形角2%以降の除荷時に生じた圧着接合面の残留目開きが閉じるまで梁部材は外力に抵抗しないために生じた.

(3) PC鋼材の長さにかかわらず,最終的な損傷は柱梁圧着接合面に集中して生じた.しかしPC鋼材が短い試験体の梁部材には多くの曲げひび割れおよびせん断ひび割れが発生した.梁のPC鋼材定着端近傍の曲げひび割れ幅が大きかったが,その幅は0.2mm以下にとどまった.

 目的2に対応する実験;

(4) PC鋼材は降伏しなかったこと,柱主筋は最大耐力後に変形が十分に進んでから降伏したこと,および柱梁接合部パネル内のコンクリート圧壊が顕著であったことから,全試験体とも接合部せん断破壊と判断した.

(5) PC鋼材の付着の有無および柱梁接合部の形状に関わらずPCaPC圧着工法による柱梁接合部のせん断終局強度は,RC柱梁接合部のせん断終局強度評価式によっておおむね安全側に評価できた.

(6) PC鋼材に付着のない十字形部分架構の水平耐力は,付着のある十字形部分架構に比べて10%低下した.この数値は両試験体の柱梁接合部の入力せん断力の差分(12%)とほぼ一致した.


5. アンボンドPC鋼材で圧着接合したプレキャスト・プレストレスト・コンクリート構造スラブ付き柱梁骨組の耐震性能

北山和宏・宋 性勳・晋 沂雄・田島祐之(アシス株式会社)・金本清臣(清水建設株式会社)

 上記4の研究では平面柱梁部分架構試験体を用いた静的載荷実験によって基礎的な検討を行った.しかし実際の建物ではスラブと直交梁とが付くため地震時の力学挙動は複雑になる.そこで本研究では十字形の柱梁部分架構にスラブおよび直交梁を付加した立体試験体に正負交番繰り返し載荷する実験を行った.また上記4の「目的1」の研究では実験変数であるPC鋼材の長さが二水準しかなかったので,PC鋼材を梁危険断面から梁せいの二倍だけ離れた位置に定着した平面ト形柱梁部分架構試験体1体を作製して追加実験を行った.今後,実験結果を詳細に分析する予定である.


6.  東北地方太平洋沖地震による鉄筋コンクリート校舎の地震被害と地震時挙動に関する研究

北山和宏・林 輝輝・遠藤俊貴

 2011年東北地方太平洋沖地震により中破した鉄筋コンクリート(RC)校舎を対象として,耐震診断および多質点系の非線形地震応答解析を実施して地震被害の原因を追求した.

 対象建物は栃木県宇都宮市東端の宝積寺台地上の標高110mの地点に位置する普通教室棟で,1979年に竣工した塔屋付き4階建てRC建物である.基礎は杭基礎(PC杭、杭長さ21m)である.桁行方向の主要スパンは8.7mである.主要な柱断面寸法は700×600mmでせん断補強筋は2-13φ@100mm(せん断補強筋比は0.44%)であった.後述のように1階から3階までの桁行方向の構造耐震指標Is値は構造耐震判定指標Iso=0.70を満たさなかったが,耐震補強は未実施であった.

 建物北面のRC短柱(内法高さ1250mm,せん断スパン比2.3)の被害が激しく,1階では1本,2階では2本,3階では1本がせん断破壊した(損傷度4).そのうち2階および3階では各1本が片側袖壁付き柱であった.そのほかの北面のRC短柱にも全階にわたって損傷度2から3のせん断ひび割れが発生した.南面の1階長柱(耐震診断ではせん断柱と判定)には軽微な曲げひび割れあるいはせん断ひび割れが発生した.教室と廊下とのあいだの構面内の柱なし壁(厚さ120 mm)は1階および2階においてせん断破壊し(損傷度5),3階では損傷度3のせん断ひび割れが生じた.

 被害が最も激しかったのは桁行方向2階であり,その耐震性能残存率は73.9%で被災度は中破であった.なおその他の階の桁行方向の耐震性能残存率は1階で85.8%,3階で83.6%であり,4階はほぼ無被害であった.

 耐震二次診断を汎用ソフトウエア「RC診断2001 Vr2」を用いて実施した.コア抜きによるコンクリート圧縮強度は28.1〜35.6 N/mm2と良好であり,耐震診断では26 N/mm2を用いた.形状指標SDは0.93であり,建物所有者による調査結果に基づき経年指標Tは0.99と判断した.

 耐震二次診断の結果,桁行方向の構造耐震指標Is値は1階で0.69,2階で0.54,3階で0.63および4階で0.98であり,1階から3階までIso=0.70を満たさなかった.また2階のIs値が最小であった.桁行方向のIs値分布と耐震性能残存率とを比較すると,Is値が小さい階ほど耐震性能残存率が小さかった.張間方向は耐震壁量が十分であったためIs値は1.52〜2.66と大きかった.

 本建物に近い地震動観測点(宇都宮,真岡,芳賀および益子の4カ所)の地表における東西方向の地震動を入力して非線形地震応答解析を行った.建物は各層を1質点とした4質点系せん断ばねモデルに置換した.粘性減衰は3%とし,瞬間剛性比例型とした.ばねの復元力骨格曲線は耐震診断による各階の水平耐力を用いて三折れ線とした.復元力履歴ルールは1階および2階を原点指向モデルとして,降伏変位は靭性指標F=1.0に対応する部材角(1/250)に設定した.3階および4階の復元力履歴ルールは武田モデルとして,降伏変位は靭性指標F=1.27に対応する部材角(1/150)に設定した.系の一次固有周期は0.28秒であった.

 地震応答解析により得られた各層の最大応答層間変形角は全ての地震動において3階が最も大きかった.入力加速度が最大の芳賀地震動による3階の応答層間変形角は3%に達した.芳賀波および益子波では3層のせん断ばねが降伏したため,3階の層間変形が増大した.実被害では2階の損傷が顕著であったが,地震応答解析では2階の応答変形は3階よりも小さく,1階と同程度であった.ただし芳賀波および益子波とも2階の応答層間変形角は0.6%に達しており,一般的なRC柱がせん断破壊すると判断される0.4%を超えたことから,実被害で2階のRC柱がせん断破壊したことと整合すると考える.


7. 電気式小型感振センサを用いた既存建物の振動観測システムの構築に関する基礎検討

北山和宏・中野 匠・山村一繁

 本研究は耐震補強を計画している建物を対象として,耐震補強前後の振動性状を計測してその差異を分析することによって耐震補強効果を明示するという目標に向けた前段となる基礎的な検討である.建物の常時微動や地震時の振動を観測するための加速時計として,現在ではMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用した感振センサが開発されている.このMEMS型感振センサは従来の加速度計に比べ非常に小型で複数配列し集積化することが可能である.さらに,従来の加速度計に比べ非常に安価である.使用したMEMS型感振センサは富士電機(株)製で,水平方向が0.02 gal,鉛直方向が0.07 galという分解能により微動測定と強震観測の両方に対応できる.

 本検討ではこのMEMS型感振センサを複数用いた観測システムを構築して,膨大な加速度データをインターネットを介して収録する技術の有効性を検証することを目的とした.そこで本学南大沢キャンパス9号館(鉄筋コンクリート造地上9階,地下1階建て)の9階および自由地盤と同等と判断される機械建築実験棟の1階にMEMS型感振センサを1台ずつ設置して,常時微動および地震動による三方向振動の観測を継続的に行った.その結果を用いて対象建物の卓越周期を求める等の基礎的検討を行った.本学のインターネット環境の特殊性のため,二台の感振センサの収録データの時刻同期に問題が生じたものの,おおむね実用に供することのできる観測システムを構築できたと判断した.


8. 梁曲げ破壊型PRC骨組内の梁部材を対象とした復元力特性評価に関する研究

北山和宏・星野和也

 現在日本建築学会において「プレストレストコンクリート部材の構造性能評価指針(案)・同解説」を作成中である.そこではプレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)曲げ部材の復元力特性を定量的に評価する手法のうち,最大耐力時の変形性能は岸本らによる提案を用いて評価する.しかしこの評価式は多変数解析の結果を統計的に処理して導かれたものであり,PRC柱梁骨組内の梁部材を用いた実験による妥当性の検証は行われていない.

 そこで本研究では本研究室で以前に実施したPRC柱梁部分架構試験体21体(平面十字形17体,平面ト形2体およびスラブ付き十字形2体)を用いて最大耐力時の梁の変形性能について検証を実施した.その結果,80個のデータ(全部で40本の梁について正負載荷時の変形をそれぞれ採用)のうち72個の計算値が実験値を下回った.また計算値を実験値で除した値の平均値は0.64,標準偏差は0.33であり,最大耐力時の変形評価の精度は良好ではなかった.

 岸本らの提案式はヒンジ領域の回転角を評価してそれにヒンジ領域長さを乗ずる形式で記載される.しかし,ヒンジ回転角を評価する際にPC鋼材とコンクリートとのあいだの付着作用を間接的に評価するためのひずみ適合係数F値を用いること,およびヒンジ領域長さの設定方法は使用者の判断に任されることなど,定量的に変形性能を評価する上で不確定な要因が複数存在する.このことが提案式による計算値と実験結果との大幅な乖離の主要因であると考える.




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