▶ 教員紹介
 高岸 冬詩(教授)

専門分野は英詩、特に現代イギリス・アイルランド詩です。北アイルランド出身の現役詩人ポール・マルドゥーンの研究や、モダニズム詩人ルイ・マクニースの翻訳などを通して、現代英詩を読み解く愉しみを伝えることを目指してきました。音楽、映画、美術等の芸術分野にも関心があり、プログレッシヴ・ロックの歌詞論も書いています。2018年にはカナダの女性詩人クレア・ロバーツの翻訳詩集『ここが私たちの上陸地』を出版しました。

 中村 英男(教授)
ハリー・ポッターに、Pensieveという不思議な装置が出てきます。人の残した霊液をその装置にたらすと霊液の持ち主の経験を追体験できるというものです。実は、小説はこの装置に非常によく似ています。自分以外の人間が感じたこと,考えたこと、見たもの、それを代理的に経験できる装置なのです。知らない時代の見知らぬ土地に生きた人の経験に直接アクセスできるおそらく唯一の装置です。一方、小説は同時に聖書が西欧の伝統的な社会においてそうであったものに最も近いものだともいえます。つまり生き方の規範を提示するものだということです。絶対の規範が掘り崩されて生まれた新しい世界で、規範の代わりになろうとして、小説のなかで人の生が火中に投じられます。小説の読み手はその火に手をかざすことで、自分自身の凍りつくような人生を暖めるのだと言った人もいます。H・ジェイムズ、オースティン、コンラッド、ハーディ、ディッケンズなどを研究しています。
 吉田 朋正(教授)
モダニズムの思想史的枠組みに関心があります。18世紀以降の美学・芸術理論をめぐる批評史的試みに傾注する一方、最近はケネス・バークやエドマンド・ウィルソンといった人々を通してみた1920?30年代の激動期アメリカに強い関心を抱いています。授業では20世紀アメリカの作品を中心に取り上げつつ、現代的な文化、芸術、思想にとって常に除外しがたい後景となってあらわれる「アメリカ」を探って行くつもりです。
 安井 マイケル(准教授)
30年以上にわたって大学レベルで英文学を教え、実際にネイティブ・スピーカーに英文学を教えてきた唯一の教師として幅広い専門知識を持つ。また、英文学の歴史や、英文学とアメリカ文学の3つの分野の先達の教授法についての知識があり、批評と修辞学の理論を完全に網羅している。現在の研究テーマは、主に理論と批評に焦点を当てています。過去20年間は、パスト・ポスト・コロニアル・スタディーズ、中世英文学、古英文学に焦点を当ててきた。特に関心があるのは、チョーサー、マロリー、スペンサーの作品である。また、実際に英語の誤読に最初に反対した修道士であるオームの『オルムルム』にも興味がある。このような中世に関する研究の一部は、英語トン以外にもレギウス写本やアウレウス写本にも及んでいます。
 越 朋彦(准教授)
修士課程までは20世紀イギリス小説(カズオ・イシグロ、イヴリン・ウォーなど)を勉強していましたが、博士課程以後は17世紀の英詩に興味が移り、特にトマス・トラハーンというややマイナーな作家を現在まで研究してきました。イギリス留学時にオックスフォード大学のボドリー図書館やロンドンの大英図書館でトラハーンの手稿を閲覧したことがきっかけとなり、manuscriptというメディア/テクノロジーの特性に強い関心を抱くようになりました。初期近代におけるmanuscript cultureとprint cultureの関連を探ることが現在の大きな研究テーマです。イギリス滞在中にはまた、The Sunをはじめとする大衆紙(tabloids)に出会い、スラングや卑猥な言葉遊びがふんだんに盛り込まれたその言語にすっかりハマってしまいました。日本では真面目に取り上げられることはほとんどありませんが、その起源を遠く17世紀のチャップ・ブックやブロードサイドに求めることの出来る大衆紙は、口承文化と文字文化の相互交流によって発達してきた、メディア文化史的に見て非常に興味深い対象であり、今後本格的に研究を進めていきたいと思っています。
 生駒 久実(准教授)
19世紀アメリカ文学、文化を専門としています。これまでマーク・トウェインを中心に研究してきました。とくにトウェインの小説作品と、女性作家によるセンチメンタル・ノヴェル(感傷小説)というジャンルとの影響関係に焦点を当てています。感傷小説を揶揄、批判する一方で、トウェインがどのようにそこから影響を受けていたのかを検討してきました。最近では、19世紀から20世紀初頭の小説やスレイヴ・ナラティヴにおけるプアホワイト(貧乏白人)と黒人の関係に関する表象にも関心があります。
 佐久間 千尋 (助教授)
専門は19世紀の英文学です。修士課程までは、主にエミリ・ブロンテの『嵐が丘』 を研究対象としてきました。博士後期課程からは、語りの構造と空間という研究テーマの観点から、ゴシック小説(メアリー・シェリー、チャールズ・マチュリンなど)にも研究対象を広げ、ブロンテ姉妹の作品群とのテクスト相関性を分析してきました。現在、ブロンテ姉妹と同時代の他の作家の作品との比較考察に取り組んでいます。また、他国における受容にも関心があり、比較文化的視点も研究に取り入れていきたいと考えています。