都市の墓地不足に関するスタディーツアー

【ツアー概要】

東京では、都市における墓問題が発生しています。
世界の国々で同様の問題は発生しているのでしょうか。
都市における墓問題について、アジア諸国の大学生と一緒に考えます。
国や宗教によって、異なる意見が出るのでしょうか。
では、出発。

  
  

背 景

私たちはライフステージによって、住まいを変えます。
例えば、
大学生になり、大学寮での生活を始めます。
結婚し、社宅での生活を始めます。
家を決めるとき、賃料、間取り、アクセスなど様々な条件を検討します。
しかし、条件の良い家を見つけることはなかなか困難です。
なぜなら、条件の良い家は人気があるからです。
家を購入したら、多くの人は、その家に死ぬまで住むでしょう。
ところで、あなたは家を買ったら安泰だと思っていませんか。
私たちの家に関する問題は死後も続きます。
私たちはお墓についても考えなければなりません。
あなたは東京の公共墓地の競争倍率を知っていますか。
一般埋葬施設(一般的な「お墓」の形式)で、約6倍
樹木葬(骨を決められた木の下に埋める形式。合葬の形式)で、約10倍
合葬埋葬施設(複数の遺骨を一つの大きな墓石や丘に合葬する形式)で、約24倍

墓不足の原因

このように、東京では墓不足の問題を抱えています。
東京の人口は年々増加しています。そして、多くの人が東京で死んでいます。
多くの日本人は地方ではなく、東京で自分の墓を購入したいと考えます。
なぜなら、東京の方が、子孫たちが墓参りや墓の管理に行きやすいからです。
しかし、新しい霊園を作るには十分な土地もなく、地価が非常に高いため、東京の都市部で新しい霊園を作ることはとても困難です。
また、多くの日本人は霊園の近くに住みたいとは思いません。そのため、周辺住民の合意が得られず、新しく霊園を作ることは難しくなります。

墓不足への対応

日本では墓不足に対していくつかの解決策が試みられています。中でも、新しい埋葬形式を導入することで、墓地用地不足に対して対応しようとしています。
ここからは、日本の埋葬形式についてご紹介します。

① 一般埋蔵

一般的な日本のお墓の形式です。墓石の下にある納骨室に骨壷を埋葬します。一つの墓地区画に一つの墓石と一つの納骨室があります。「◯◯家之墓」として、先祖代々の遺骨を埋蔵することが一般的です。

日本の墓地1

 

② 立体埋蔵

たくさんの墓標を一つの大きな墓石に集約した形式のお墓です。壁のような大きな墓石に多数の墓標がついており、その裏側に納骨室があります。都立霊園では、一つの納骨室に骨壷を3つまで埋蔵できます。都立霊園では20年間、地上の墓標と納骨室を使用できます。その後は、契約を更新しない限り、地下の納骨室に合葬され墓標は次の利用者用に更新されます。墓石の前には共同の献花台と祭壇があり、各自の墓標に個々で線香や花を供えることはできません。墓標には「◯◯家」ではなく、故人名や名前以外の言葉を表記している人もいます。

日本の墓地2

 

③ 納骨堂

屋内にある形式のお墓です。多数の納骨室が屋内に設置されており、共同の献花台と祭壇があります。都立霊園の納骨堂はロッカータイプで、各ロッカーには3〜8個の骨壷を埋葬できます。利用期限があり、契約を更新しなければ遺骨は合葬されます。

日本の墓地3

 

④ 合葬

多数の故人の遺骨を一つの納骨室に一緒に埋葬する形式のお墓です。大きな墓石や墓石の代わりの丘(築山)などが設置されています。骨壷は使用せず、遺骨を直接埋葬します。家族以外の人とも一緒に埋葬されることになります。

 

⑤ 樹木葬

遺骨を直接土に埋葬し、その上に墓石を置く代わりに樹木を植える形式のお墓です。一故人に対して一本の木を植える墓地もありますが、都心では一つの大きな木の下に複数の故人の遺骨を埋葬する形式も多く見られます。都立霊園では、樹木葬の区画に一本の木が植えられており、その樹木の根元に複数の故人の遺骨を合葬する形式をとっています。

東京の都立霊園を訪ねる

私たちは東京都心部にある雑司が谷霊園と青山霊園の二つの都立霊園を訪れました。この二つはともに明治期に創設されたものです。
文筆家や政治家など歴史的に著名な人物の墓などもあることから、多くの墓参者が訪れていました。
この二つの霊園は、一般埋蔵施設だけではなく、墓地不足に対応するための新たな埋蔵形態を導入しています。

(1) 雑司が谷霊園

雑司が谷霊園は、サンシャイン60などの高層ビル群が立ち並ぶ豊島区にあります。池袋駅から徒歩で20分ほどの距離で、面積は106,110㎡です。
一般埋蔵施設は8333人の使用者(墓守)がいます。
この霊園には、「崇祖堂」とよばれる納骨堂の建物があります。納骨堂は3階建てで、3950区画あります。
墓石を立てる必要はなく、利用手数料も一般埋蔵施設と比べやすくなっています。そのため、この方法はコストの面で維持管理に優れているともいえます。
私たちは「無縁墓」であることを示す標識を見つけました。この霊園の管理者である東京都は、一年以内に親族等からの連絡がない場合、改葬することとしています。改葬をしたのち、都は、同区画を利用希望者のための新たな区画を設けることとしています。

雑司が谷霊園立て札1

写真:いわゆる無縁墓に立てられた都からのお知らせ

 

(2) 青山霊園

青山霊園は、港区にあります。
東京オリンピック・パラリンピックの会場ともなる新国立競技場と、ラグジュアリーなオフィスやショッピングゾーンである六本木地区の間に位置しています。
青山霊園では、263,564㎡の敷地のおよそ半分が墓地として活用されています。一般埋蔵施設は14175人の使用者(墓守)がいます。
また、霊園内には立体埋蔵施設(Apartment style)が4箇所設置されています。使用者数は873人で、2251体が埋葬されています。私たちは第1区の立体埋蔵施設を見学しました。そこには4×33=132区画の納骨室がありました。各納骨室は遺骨を3体まで収蔵できます。

青山霊園立て札2

 

ディスカッション

アジア各国の都市部では、墓に関する様々な問題が存在すると考えられます。
そこで、墓地や霊園に関する問題について、議論をしました。この議論を通して、私たちは問題意識を共有するため、どのような問題が存在するのかを示す図表を作成しました。

 

東 京 上 海 台 北 ジャカルタ バンコク
墓不足
葬儀にかかるコスト
(個人にとって)
墓地・墓石にかかるコスト
仲介人によるマージン
(管理者である行政にとって)
墓地整備にかかるコスト
大気汚染、土壌汚染
騒 音
交通の問題
無縁墓の存在
人々の敬遠
(周辺地価や賃料への影響)
その他(動物によるお供え物の食い荒らし)

 

その後、それぞれのトピックについて、要因や政府等がとっている解決策など詳細についても議論し、各国から自国で行われている解決策の紹介や新しい解決策について議論をしました。
中でも、特に参加メンバーの関心が高かった、墓不足の問題と、公害(大気汚染・土壌汚染、騒音、交通の問題)の二つを主に議論し、このようなダイヤグラムにまとめました。
このダイヤグラムでは各国が抱える「墓不足」と「墓に関連した公害」について、問題の詳細、その要因、考えられる解決策をまとめました。解決策には自国の問題に対して自ら考えたアイディア、他国からの新しいアイディア、他国で実際に取り組まれている解決策があります。
墓不足という問題は、東京、ジャカルタ、上海の三都市が抱えています。共通する要因は人口増加と高齢化ですが、伝統的習慣や墓購入の仕組みなど異なる社会的背景があることがわかりました。これらを解決するために、墓石の代わりに木を使うなどして、多数の遺体を一箇所に埋葬するといったアイディアが出ました。

 

墓不足図

 

墓に関連した公害としては、台北・バンコクで火葬技術や伝統的習慣による大気汚染の問題、中国・台北ではQing Ming Festival(清明節)の際に起こる周辺住民への騒音の問題、台北・上海・ジャカルタ・東京では墓参り季節における交通渋滞や公共交通の混雑などの問題を抱えていることがわかりました。これらに対して、新しい技術に関するアイディアや、法律やルールの強化、墓参り季節の国民の移動を、シフトを組んで規制するなどといった、習慣や仕組みを見直すべきだというアドバイスが出ました。

 

公害の図


実際に作成したポスター


ポスター1

ポスター2

メンバー

• TOKYO, Japan : Tokyo Metropolitan University => Yuta, Mikihide, Hannah
• TAIPEI, China : Ming Chuang University => Helen
• BANGKOK, Thailand : Thammasat University => Than
• JAKARTA, Indnesia : Bina Nusantara Unibersity => Kevin
• SHANGHAI, China : Shanghai Institute of Visual Art => Larry, Yuddele