もし渋谷で地震にあったら

Simulation of Evacuation - In case of an Earthquake in Shibuya-

渋谷駅の東横線地下5階ホーム、そこからエスカレーターで1階上ったところに集合したのは、UOS(ソウル市立大学校)の学生1人と、SIVA(上海芸術視覚学院)の学生2人。ここで渋谷駅から帰宅困難者の疑似体験をすることで、さまざまな帰宅困難者施設の紹介と地震時の行動のしかたを知ってもらう。その上でどのようなことに気をつけるべきか、看板や地図はどうあるべきかをディスカッションしていくのが今回のツアーの狙いでした。

渋谷駅にて地震.そのときあなたはどう避難・行動する?

1日37万人の人が利用する渋谷駅。その中には外国人の観光客も少なくありません。そんな渋谷駅の地中奥深く、地下4階にて今回のツアーはスタートします。最初に大きな揺れに見舞われたという設定を説明し、「現在,副都心線及び東急線全線にて運転を見合わせており…」という構内放送を再現しました。しかし構内放送はすべて日本語。エスカレーターやエレベータはすべて止まってしまいます。そのとき被災した人たちはどこに逃げ、何に気をつけて行動することがベストでしょうか?

Group2 ツアールート

1.ハチ公広場を目指して

避難者の一人(に扮した人)に聞くと「広場にでるといい」という答えが返ってきました。広場と言えば、あの有名なハチ公広場。そこで、複雑な迷宮・渋谷駅の地下4階からハチ公広場まで自力でたどり着くというミッションがスタートしました。外国人学生たちは駅の案内板や警備員さんに道を聞くことで難なく到着。複雑だと思えた渋谷駅も、実は英語や図を使った表示板が多くて意外と便利なんです。

渋谷駅
ハチ公広場

手書きの地図をみながら

ハチ公は避難者で混雑。お巡りさん(に扮した人)に聞くと、ヒカリエという建物が「帰宅困難者支援施設」というものに指定されているらしい。そして親切にも手描きの地図をくれました。学生たちはその地図の情報の少なさに戸惑うものの、数分で到着。全員渋谷が初めてなのに驚くべき速さでした。

2.ヒカリエに到着

2012年に竣工したヒカリエは商業複合の高層建築で、渋谷駅周辺再開発事業の旗揚げ的存在。地下鉄の出入口と直結し、広い面積を占める公共空間は災害時に避難場所として機能します。ヒカリエには渋谷区役所の一部の部署が入っており、ここで配布された避難所マップをUOS、SIVAの学生に渡し、彼らに自力で代々木公園を目指してもらいました。

帰宅困難者支援施設とは?

イメージ図2011年3月11日、東日本大震災によってたくさんの公共交通機関がストップし、たくさんの人が一時的に帰宅できない状況になりました。
道路では、車の渋滞に加えて歩いて帰ろうとする人たちによって混乱し、緊急車両が通れなくなったり、余震によって2次災害を被る恐れがありました。
その後政府は各企業に対して、震災時に可能な限り社員を会社にとどまらせるよう義務付け、さらに一部の企業・公共施設については帰宅困難者支援施設として指定し、帰宅困難者の確保をすることになりました。
現在渋谷区内には30箇所あり、今後渋谷駅周辺の再開発によって新たに帰宅困難者支援施設が誕生する予定です。
 

オフィシャルな防災マップを手に代々木公園に向かうものの…

防災マップ
警察官に出会う

配布された避難所マップを見ながらヒカリエから代々木公園に向かってスタート。しかしここが一番の難関でした。まず人に道を尋ねても、英語で話しかけられた瞬間拒否反応を示され、別の人に道を聞くと、今度は違う道を案内されて全く逆方向に向かってしまいました。警察官(に扮した人)の登場によって方向転換し、今度は本物の警察官に出会ったことで、やっと正しい道がわかりました。渋谷区の公式の避難所マップもとても細かくて難しいんです。

広くて混んでる道?それとも狭いけど空いてる道?

渋谷駅前から代々木公園への道は何通りもあります。しかし、ツアーとしては渋谷の街路構造と地形の複雑さを知ってもらいたかったので、あえてスクランブル交差点からセンター街へ通るルートへ誘導しました。このときツアーの設定は、大通りは避難者で大変混雑しているので、代わりに狭いセンター街を通るということにしました。実際に被災した時、混雑した大通りを時間をかけて進むべきか、小さな道を選んで効率的に進むべきかの選択に迫られることも多いはず。

3.センター街を避難しながら

センター街は道が狭くて人も多く、震災が起きた時に押し寄せる人々の波をイメージしながら歩きました。さらに看板やガラスは、落下して落ちてくる危険性がありますし、一方で自販機やコンビニは、被災時に無料で飲食物を提供し、他にも消火栓など、被災時に役に立つアイテム達がたくさんあることを紹介しました。どちらも日常的にはほとんどの人が気にかけないことばかりですが、被災時にはうまく危険を予測し、アイテムを活用しながら避難する必要があります。ちなみにコンビニや自販について説明しているとき、学生たちは驚くと同時に目を輝かせていました。いや、今日はあくまでも模擬体験ですからなにも出てきませんよ…

センター街

4.神南小学校に避難するものの…

東急ハンズの前で避難者の一人(に扮した人)から、近くの小学校に逃げると良いという情報を得たため、神南小学校という小学校に向かいました。向かう途中、上空に電線、地上に電柱がひしめいており、これらも震災時には街に潜む危険となりうること、そして東京都の無電柱化の取り組みについても説明しました。神南小学校は、センター街から少し距離をおいた場所に位置するなんの変哲もない小学校ですが、災害時には避難所となって皆さんをサポートしてくれます。しかしこの小学校、なんと地域住民のための避難所であり、帰宅困難者を受け入れる施設ではありませんでした。

神南小学校でわかる2種類の避難施設・場所

一口に避難施設と言っても2種類のものがあり、地域住民のためのものと帰宅困難者のためのものがあります。そして住民用の避難所は以下のようになっています。

・ 一時(いっとき)集合場所(一時避難場所)
  被害の状況を確認するために一時的に退避を行う場所

・ 広域避難場所
  地震による火災の被害が拡大している、あるいはこれ以上その場に留まっていても被害を被ってしまうという場合に
  退避・滞在するための場所

神南小学校はこのうち、住民用の避難場所であり、かつ一時集合場所でした。
 

5.一般企業なのに帰宅困難者を受け入れる企業

神南小学校にて、かろうじて英語を話すことのできる先生(らしき人物)に出会い、この先のアムウェイという会社に向かうといいといわれました。アムウェイジャパンは健康食品を販売する私企業の施設ですが、災害時には帰宅困難者に水や食糧、寝床を提供してくれます。渋谷区にアムウェイのほかにホテルや商業施設など、さまざまな私企業が帰宅困難者支援施設として指定されています。これらの施設には3日分の水や食糧が貯蓄されていて、災害時の短期滞在に備えています。でも、制度が不十分だった東日本大震災当日は、こうした施設はほとんど満員状態だったんですよね。今回もアムウェイが満員という設定で、最終地点・代々木公園を目指しました。

代々木公園に無事避難

渋谷駅地下からここまで歩いて約1時間、ようやく今回の目的地である代々木公園に到着しました。代々木公園は、広域避難場所として指定されており、東京ドーム11個分もあるんです。公園内の代々木体育館は東日本大震災当日の夜、ボランティアで100名近い人々を受け入れ、帰宅困難者に寝床を提供しました。この代々木公園には震災時のための貯水槽があり、飲み水として利用できるんです。こうして代々木公園に無事避難できたため、今回のツアーは終了しました。

 

 

代々木公園

今回のツアーで学んだこと

今回のツアーでは、外国人観光客に焦点を当てて、災害にあった時に何を気をつけなければいけないのか?どういうアイテムが必要なのか?ということを中心に考えさせるツアーを企画しました。結果としては、駅の構内では意外と表示が多くわかりやすいのに対し、駅の外に出ると、避難施設がどこにあるか、誰用の避難施設なのか、道行く人に聞いても英語がわからないなど、街の中のほうがわかりにくいという意見が多く出ました。それを踏まえてどういう表示であればいいのか?どういうことに配慮すればいいのかについて議論しました。UOSとSIVAの皆さん、ありがとうございました!