ツアーの目的、何を見てらもうのか、何が論点なのか

2014年10月から11月まで行われた首都大学東京とソウル市立大学による東京スタディーツアーにおいて、グループ2は「国際」というテーマから、対象地を神楽坂と選定した。ツアーの目的は、韓国の学生と共に神楽坂を探求し、都市の複雑化した課題に関する共通認識を構築することにある。

Group2 ツアールート

グループ2地図

手法と狙い

1. 事前調査

スタディーツアーを企画するにあたり、各々の視点で神楽坂の現状と特異な点についての調査を行った。調査内容は主に以下の3点で、(a)フランス文化・フランス人街の特徴が垣間見られる神楽坂における現状、(b)それに至る歴史と背景、(c)神楽坂に見られる都市問題である。
(a) 現状に関しては、実際の現地下見を踏まえ神楽坂をエリアごとに分け考察した。神楽坂を赤城神社付近の赤城エリア、リノベーションをした La kagu のある la kagu エリア、寺町エリア、神楽坂(早稲田通り)エリア、そして横丁エリアの5つに区分し、それぞれの特徴を調査した。
(b) 次に、歴史と背景に関しては、神楽坂において部分的なフランス文化が根付いたきっかけを調査し、その理由の一つが布教を目的とするフランス人聖職者によって明治期に設立された学校とそれにより生まれたフランス人雇用の需要増加であることがわかった。
(c) 最後に、都市問題に関する調査において、伝統的な地域におけるチェーン店の増加による景観の破壊を取り上げた。以上の内容を用いてパンフレットを作成し、スタディーツアーへの参加者の神楽坂に対する理解を深める材料とした。

2. 事前発表

スタディーツアー前日に韓国人学生と教授を対象に神楽坂に関するプレゼンテーションを行った。主な内容は神楽坂の国際と伝統を兼ね備えるといった特徴、現在観察できる都市問題、最後にツアープランである。また、当日訪れることのできない場所の紹介も加え、より神楽坂について情報を増やしてもらうことを狙いとして行った。

3. スタディーツアー

当初の狙い通り、お互いの様々な視点の違いが現れる結果となった。韓国にあるフランス文化が色濃く見受けられる都市ソレマウルとは異なり、神楽坂はフランスという特徴がそれほど目立たない都市として捉えられた。一方、寺町エリア、横丁エリアなどを見て伝統的な韓国の地域によく似ていると気づきが得られ、比較対象を多く設けられる結果となった。

4. 事後議論

スタディーツアー後に約1時間の議論のセッションを行うことで韓国人学生の意見を拾い、他のグループと教授陣に対するプレゼンテーションを通して、お互いの納得する共通理解を形作ることを狙いとした。

ツアーの説明(ルート地図やツアーで見ることが出来るものなど)

神楽坂は新宿区に位置し、花街の歴史を持つ横丁や坂の多い街並みとモダンな神社や明治時代にできた寺町、駅前商店街という日本的な側面がある。それに加え、神楽坂は坂の多い石畳の街並みがパリのモンマントルに似ている点、フランス人が多く居住し、フランス料理店が他の地域に比べて多いことから、フランス人街としての側面も有する。つまり、神楽坂は日本の伝統文化と異文化が混在している地域である。

ツアーのルートは神楽坂駅からスタートし、牛込神楽坂駅を通り、飯田橋駅を終着点とし、5つのエリアを設定した。
(1) 赤城エリア
赤城神社、あかぎ児童遊園(隈研吾設計)
(2) La kaguエリア
(La kagu:隈健吾の設計、本屋の倉庫をリノベーションした雑貨屋2014年10月10日にオープンしたばかり)
(3) 寺町エリア
(善国寺をはじめ様々な宗派の寺院が密集している…ツアー当日には善国寺で寺カフェのイベントを催していた)
(4) 早稲田通り
(駅前商店街とチェーン店)
(5) 横丁エリア
(老舗料亭や旅館、かくれんぼ横丁のような迷路)

当日(日曜)休みのため、行くことはできないが紹介だけしたい場所
・  猫の郵便局
(夏目漱石の「吾輩は猫である」から猫のグッズを集めた雑貨屋兼郵便ポスト)
・  クラシコ書店
・  山本豆腐屋

ツアーと議論の結果、日本の学生と韓国の学生の感じ方の違い等

グループ2の当初のテーマは「国際」であり、神楽坂を対象地域として選定した。今回のスタディーツアーの目的は、「異文化圏の学生と共に神楽坂を探求し、都市の複雑化した課題に関する共通認識を構築する」こととした。

神楽坂は伝統的な建物や様々な特徴を持つ坂があるという点で韓国のプクチョンという街と非常に似ていることが今回議論を通してわかった。神楽坂とプクチョンにおける共通問題は、伝統的な建築物や商業施設の集まる地区の景観がチェーン店の進出によって崩れてしまっているという点である。このような問題から、地元の住民と企業や建築会社との間で論争が起こっている。伝統的な建物は魅力的であり、景観として保存していくべきであるという意見でまとまった。

神楽坂探索におけるキーワード

・伝統的建築
・寺の集積、コミュニティ(日本独自)
・日本文化とフランス文化の融合
・迷路のように入り組んだ路地
・空き家
・La Kagu(倉庫から商業施設へのリノベーション)
・市民ボランティア
・フランス人労働者(シェフ)
・複雑化したチェーン街

韓国には似たような地域は存在するのか?

・ソレマウル地域
 − フランス人が多い
 − 非常に現代化した街

・北村(プクチョン)
 − 伝統と現代の融合
 − 芸術センター、伝統的な住宅や韓国のカフェ
 − 商業者同士の対立
 − 日照権の問題

ツアー後の印象【日本人学生】

大久保のようにわかりやすいエスニシティでないこともあるが、下見の時よりも、街中でフランス人を見かける機会が少なく、フランス料理のお店は見られたが、フランス人の街を認識するのは難しかった。

神楽坂の特徴の一つとして、表通りと裏通りの差が上げられるだろう。小道に入ると石畳や統一された垣根や古い日本の料亭が見られ、伝統が感じられる。横丁の景色は日本の中でも珍しく、坂の一つ一つに名前があり、説明を書いた碑が経っているのが非常に興味深かった。一方で早稲田通り沿いにはチェーン店と老舗が混在しており、街の景観を損ねているという批判もある。

韓国のフランス人街も神楽坂同様にフランス人学校が建てられた影響で作られたというが、韓国のソレマウルには、実際にかなり多くのフランス人が住んでいる。二つの街の違いが何であるかを知ることで、神楽坂を外国人にとってより住みやすい街とすることができるだろう。

ツアー後の印象【韓国人学生】

新宿区に位置する神楽坂を散策する事に居心地の良さを感じた。この街は、混雑した新宿やその他の都市地域と実に対照的である。神楽坂はフランス文化で有名なのだが、私はいくつかのフレンチレストランやカフェしか見つける事ができなかった。とりわけ、私が思うに神楽坂の魅力はフランス文化だけでなく伝統的な記憶であろう。このスタディツアーを通して、 都市開発から伝統的な住宅を取り囲む環境を守っていく住民達の努力を見る事ができた。まず、たくさんの仏教寺院や寺院同士のコミュニティがあり、それらは韓国には見られない特徴的なものであった。彼らの住宅地を守ることは非常に重要だと感じる。

次に、「神楽坂」が「神楽の坂」を意味するように、全ての坂が意味を持つ点がある。ソウルのプクチョンは歴史的な地域であり、非常に急な坂を持つ。政府は、冬期の安全の為に坂をカットするという政策を立てた。しかしながら近年、行政と、地域の歴史を守りたい地元の住民との間で対立が起こり、その政策は拒否された。地域的な視点で見ると、神楽坂も同様に、それぞれの坂に名前をつける事で地域の独自性を守る努力を行っている。

最後に、表通りの裏に位置する路地が素晴らしく面白い点が挙げられる。狭い路地はかくれんぼをするには絶好の場所であり、そのうちの一つは「かくれんぼ横丁」と呼ばれている。さらに、通りに関する情報を得る事のできるNPOガイドのアプリも印象的だった。そのため、着物を着た女性や、伝統的な日本食を提供する外国人も数名見る事ができた。このように、神楽坂地区には伝統とモダンの間での釣り合いがある。しかしながら、最近神楽坂はチェーン店街によって大きく様変わりしてきた。こうした状況はプクチョンでも同様に発生しており、多くの化粧品の店舗やレストランでいっぱいである。もちろん、資本主義のもとではありふれた事であるが、その地の独自性が近い将来消えてしまう事を私は恐れている。