日本建築学会優秀修士論文賞 推薦理由

2018年度 優秀修士論文賞
論文題名「地域包括ケア病棟の運営実態からみた施設類型と療養環境計画に関する研究」

正会員:仲間巧君[首都大学東京]


 本研究は,地域包括ケア病棟という新しい病棟を対象として,全国アンケート調査と16事例のヒアリング調査によって運営形態や平面構成,療養環境等の施設実態を詳細にとらえている.最初の体系的資料としての価値は大きく,特に運営面から施設の5類型を析出した点は高く評価される.16事例の丁寧な分析によって明示された運営方法の類型別特徴と病棟空間利用の実践的課題は,同病棟の施設計画に貴重な成果を与えている.理論構成が明解で完成度が高く,有用性のある優れた修士論文であり,顕彰に値するものである.

日本建築学会優秀卒業論文賞 推薦理由

2010年度 優秀卒業論文賞
論文題名「精神障碍者グループホーム・ケアホームの居住形態に関する研究」

正会員:吉本亜美君[首都大学東京]

 社会福祉テーマとした研究論文は近年数多く成されているが、その中でも精神障碍者へのケアという建築工学的に難しいテーマに挑戦し、その支援体制や居住環境の整備、他の知的障碍者との比較により、現在の社会状況を明らかにしている本研究は、オリジナリティーの高さもさることながら、社会的弱者への支援の在り方を問うものとなっていることを高く評価したい。また、論文構成としても緻密な事例分析を行い、調査などから得た新しい知見を、独自性の高い視点により分析し結論を導き出していることからも、卒業論文としては完成度の高いものであるといえる。

2011年度 優秀卒業論文賞
論文題名「重症心身障がい児者のレスパイトケア施設の建築計画に関する研究」

正会員:上赤坂典幸君[首都大学東京]

 24時間体制のケアが必要な重症心身障がい児者を預かって一時的にケアを代替する家族支援サービス施設のありようについて,建築計画の視点から真摯に取り組んだ先駆的論文である。調査は,実際に先進施設へ足を運んでの観察調査,利用者家族へのアンケート調査などにより構成されるが,多くの労力を要する綿密な調査であり,自らの視点で問題が設定され,結果,解決すべき課題がよく抽出・整理されている。重要な問題でありながら研究事例は少なく,ここに示された著者の努力を足がかりとした,継続的かつ発展的な研究が期待される。

2013年度 優秀卒業論文賞
論文題名「駅型保育園の施設運営・計画に関する研究」

正会員:石川咲貴子君[首都大学東京]

 近年ニーズが高まっている駅型保育園の計画と利用実態について、施設スタッフへのヒアリング調査結果を、訪問調査で明らかにした空間構成や立地条件などと結び付けて分析し、保育園の今日的な建築的知見を明らかにした点は評価できる。さらに利用実態調査では、丁寧な現地調査を実施しており、自らがつかみ取ったデータを分析している。結論で、研究対象とした「駅型」という立地特性に関する地域計画的な考察が不足している点は残念ではあるが、本研究にかけた時間と労力は十分に見て取れ、4年間の集大成にふさわしい労作であると評価する。