カールスルーエで晩酌を:ヨーロッパ研究滞在記(その3)

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前回(その2)を書いてからなんと 1年以上も放置 という体たらく. あまりに仕事が忙し過ぎたため, 現実逃避のために少しずつ書いて遂に完結編公開です. あまりに放置しすぎて誰にも気づかれないのでは...


Bad Herrenalb へ

今回のカールスルーエ滞在はかなりスケジュールがタイトで, 早くもオランダへの移動前日(実質の最終日)になってしまいました. 絶対僕が海外出張しているときだけ地球の自転が早まっている気がするのですが...(同じことを思っている人いませんか?)

この日は午後までゆったり仕事をした後, ホストを務めてくださった Plum さんご一家の夕食会にお呼ばれする日. 期待は高まる一方です. 大学から一緒に移動ということで待ち合わせ. 部屋の扉の前をふと見ると, 面白いポスターが(笑)

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※ 右側の写真の拡大版は こちら. どちらも身につまされるというか, 共感できますね(笑)

さて Plum 邸は, カールスルーエの中心地区から電車で1時間弱, Bad Herrenalb(バート・ヘレンアルプ)という地区にあります. 第一印象は「別荘が立ち並びそうな山手の閑静なエリア」というか, ざっくり言えば「田舎に泊まろう」感があります. 途中まではそこそこ建物も交通量も多いエリアを抜けていくのですが, 途中から雰囲気ががらりと変わり「あぁ, 自分はドイツに来たのだなぁ」と実感できることうけあいです.

Bad Herrenalb へは市街地から直通の電車もありますが, たまたま来た電車は途中までのものだったので, とりあえず乗ることにしました. 30分くらいして, 途中駅(Ettlingen)で下車.

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さて困りました. 電車が来ません. 正確には来るには来るんですが, 違う方面のものしか来ません. 電光掲示板を見ると「あと30分で来る」とありますが, 5分後見ると電車の案内そのものが消滅しています. 悲しいです. 悲しすぎます. もうこうなったらバスしかありません. バスは..

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運転手休んどる...

いや冷静になれば何てことないんです. ドイツは右側通行ですから, 乗客の乗降ドアは進行方向右側なんです(よーく見るとバスの向こうにバス停が確認できる). なので営業してないのは明白です. 行き先表示も消えてて真っ暗, おまけに泣く子も黙る おベンツ でございます. はー... 万事休す.

・・・なんてことはもちろんなく, さすがドイツ在住の方, てきぱきとタクシーを電話で手配してくださいました. ありがたい..

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もう一生分ベンツ乗った気がします(笑)

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だんだん景色が 昔の Windows の壁紙 みたいになってきました.

ちなみにドイツのタクシーの値段ですが, 日本と比べてもそれほど違いはありません. 30分くらい乗って40ユーロ強くらいでしたが, 車が割と大きめだったので, それを考えると大人数なら少しお得かもしれません. 個人的には韓国のタクシーが安すぎると思います(6年前にソウルの KIAS に行ったときは, 初乗り2000ウォンで100ウォンずつの従量課金. 40分くらい回ってもらったのに2000円でお釣りがきた記憶があります. その代わり, 行き先が気に入らなかったり面倒なときは 堂々と断られる ことも珍しくありませんが. 笑).


衝撃の大豪邸

快適な移動を経て, ついにシュバルツバルトの北限に到着です. Plum 邸の玄関に着きました.

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え?

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え? 水入れてビール冷やせるやつにやきいも焚き火ができるスペース・・・というか庭広すぎ・・・

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超巨大なリビング・・・あれだ, ハリウッド映画で見るやつだ・・・(語彙力を失った人)

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し, 室内温水プール・・・

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僕, 何かのロケに来たんだっけ・・・

写真からビンビン感じ取っていただけると思うんですが, 僕の予想をはるかに超えた豪邸です. 他に プライベートサウナ もありました. 僕の自宅の書斎より大きくて萎えました.

まぁ市街地からやや離れた山奥ということですが, それを差し引いてもちょっと凄すぎますよね. もちろんドイツでずっと生活をし, 仕事をこなしていくには大変な苦労があると思うんですが, このときばかりは「ドイツに住みたいなぁ」と思ってしまいました. たぶん誰でもそうなると思います.

さて, お庭に戻ってみると・・・

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トランポリンとサッカーを同時にこなす超イケメン少年が楽しそうに挨拶してくれます. 向こうに見えているのが旦那さま(Plum 家のあるじ)です.


なんで僕が Plum 邸に?

某予備校のポスターを意識してしまいましたが(わかる人だけわかってください), そもそもなぜ今回 Plum 邸訪問がかなったのか, ちゃんと書いていませんでしたね. ここで少しその経緯を述べておきましょう.

今回の host を務めてくださったのは, 解析学・応用数理(正確には精度保証付き数値計算・・・だったかな? 間違っていたらごめんなさい)を専門とされている, 長藤かおりさんという方です. なので, 僕の専門とはちょっと異なる分野の数学者の方です. なんですが, 実は長藤さんはもともと九大数理の准教授をされていた方で, 僕が学部生時代に2度授業を担当していただいた縁があったのです. 1度目は微積分の演習の授業, 2度目は計算機数学概論の授業です. とくに後者は C 言語の授業で, 計算機数論の道に進む身として重要な基礎知識を勉強させていただきました. その後, 僕が確か修士の頃だった気がしますが, ドイツ人の著名な数学者である Michael Plum 教授とご結婚され, ドイツに移住されたそうです. なので現在は Kaori Nagato-Plum さんとお呼びするのが正式です(日本名は昔と同じとのことで, 僕は「長藤さん」と呼んでいます). ちなみに長藤さんにはこれまたイケメンの息子さんがいらっしゃいまして, 滞在中に食事をご一緒できました. 突然のドイツ移住にもかかわらず, 光の速さでドイツ語をマスター, 現地の女の子にモテモテだそうです. うらやましいカッコいい!

ちなみに長藤さんは KIT では秘書さんの所属ですが, 非常勤で複数の大学で講義を担当されています(日本の秘書さんのイメージとはずいぶん異なりますね). 今回, ドイツでちょっと別の用件があったのと, 直後にオランダ出張が控えていたこともあり, ほんの少しですが visitor としてカールスルーエに滞在できた, という幸運でした. 代わりに何か・・・ということで, 日本の調味料やお菓子などの買い出しをしました(笑)Plum 家はみなさん揃って「博多通りもん」の大ファンだそうですが, その気持ちよーくわかります(笑)だって美味しいですものね. 太るけど

ちなみに, さきほどのトランポリン少年は Plum 教授のお子さんです. 息子さんはもう一人いらっしゃるのですが(こちらもイケメン・・・さっきからそればっかり. 笑), この日はガールフレンドさんとお出かけでした. 路面電車ゾーンでゆっくり移動しているときに, 逆から来た電車に乗っていて思わずびっくりして笑ってしまいました(笑)


Gaffel Kölsch & 最高の夕食

そんなこんなで渡辺篤史の建もの探訪ご自宅を案内していただいた後は, 広大なお庭のテラスで夕食の時間です.

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この世の全ての富を手に入れたような顔 をしているのが私です.

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左:仕事をしているふりをしている様子. 右:その30秒後の僕の視界. たぶんデスクトップのひつじのせい.

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ビール瓶の隙間から見えるイケメン少年(笑)

真ん中の写真は言わずと知れた Krombacher ですが, デュンケルタイプはなかなか日本では見ませんね(ドイツでもピルスナータイプばっかりで, 意外とお目にかかれない). 予想以上にしっかりと, そしてすっきりと, かなりレベルの高いデュンケルです.

でも個人的ナンバーワンは一番左の Gaffel です. これはケルシュタイプとよばれるビールで, その名の通りドイツ・ケルン地方を発祥とするビールです. 実は Plum 教授はケルンのご出身ということで, ケルシュビールには並々ならぬ愛情をお持ちでした. そしてこれがまぁ・・・

うまい!!

うまい!!(大事なことなので2回言いました)

もうバランスといい香りといい最高でして, 飲み飽きしないのにしっかりアタックがある完璧に近いビールだと思います. ここで Gaffel の虜になってしまった僕は5ヶ月後, マックス・プランク研究所滞在中にケルシュを浴びるほど飲むハメになりました(笑)これについてはまた別の記事で書く予定.

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幸せを可視化したらこうなった, みたいな感じでしょうか. どれもこれも超うまい!!(語彙力が極小に達した人)

というかドイツのパンって何でこんなに美味しいんでしょうね. 僕はフランスパンよりドイツパン派です. いつかドイツパンパーティー(飲み会)やりたい.

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帰国後に待ち構えている健康診断のことなど気にしてはいけません. 高カロリー? いえ違います, 幸カロリー* なのです.

*HIPPY さんの表現を拝借しました, どうもすみません.

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( 掲載許可いただいております )

もうね, 控えめに言って この世の天国 でしたよ. Plum 教授とはビールを片手にお互いの数学の話なども楽しくさせていただきましたが, 帰って同僚の方に言うと超羨ましがられました(この分野では「雲の上の人」レベルの方らしいのですが, 分野が違うとフランクにお話ができる不思議!). この写真を見ても, Plum 夫妻の仲睦まじさ, 一家の幸福感が伝わってきます. 仕事放っぽり出して今すぐドイツ行きたい


Plum 家秘伝のクーヘン

この記事「カールスルーエで晩酌を」ですが, 実はこれを紹介したいがために書いたと言っても過言ではありません. それがこれ.

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はいもう絶対美味しいやつ です(語彙力が負の無限大に発散した人).

クーヘンというのはドイツ語読みで, いわゆるケーキのことなんですが, 何と Plum 家代々の秘伝のレシピで作られるクーヘンがデザートとして供されました. 実は正直, 僕は海外のデザートはあまり好きではなくて

味覚センサーが Y2K 問題 を起こしたとしか思えない味

を体験している身としては一抹の不安を抱えていたのですが, 気がついたら

除去可能特異点のように一瞬で目の前から消失していた

から驚きですよ. それくらい美味しかった. 外はサクサク香ばしく, 中はしっとりふんわり甘さも絶妙. 専用コンテナで日本に輸送して伊都キャンパスで売りたいくらいです. 海外で食べたスイーツではダントツの優勝でした.

ちなみに付け合わせの白ワイン Schloss Eberstein はこの地方で作られたもので, ワインもかなり安いドイツにしてはやや高級品だったのですが, これもまあ素晴らしいものでした. 実はこれがオススメであることを長藤さんから聞いていたので, この日のお昼にリカーショップで1本余計に買っており, 直後のオランダ出張の host の方にプレゼントしました. ついでですが, ドイツの高級チョコレートショップ(GODIVA みたいなところ)でお土産を買うと, レジ横の試食チョコをすすめられるんですが, ほぼ売り物レベルのデカいチョコが食べられます. 最高です. あとロクシタン(フレグランスショップ)で買い物をすると, バッグの中にフレグランスをスプレーした薄いペーパーを入れてくれるんですが, これ日本でもやってくれないかなぁ.


別れのとき

楽しい時間というものはあっという間に過ぎるもので, もう帰宅の時間です. 宿までは1時間半はかかりますし, 明朝8時の ICE(日本でいう新幹線のようなもの)に乗らなければいけません.

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大ヒット映画「君の名は。」みたいな日暮れの空が撮れました. さみしいなぁ.

何も遮るもののない帰り道. 大げさではなく, 変な意味でもなく「何のために生きているんだろう?」「これからどうなるんだろう?」とふと考えてしまいました. 人生はいいことばかりではなく, 辛いこともたくさんありますが, 少しリセットできたような気がしました.

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最寄りの駅でお見送りしていただき, 真っ暗な山手を通って市街地へ戻りました. 夜の10時だというのにまだ日差しがありました. もっと一生懸命数学に励んで, もっと研究成果を出して, またここを訪ねたい!と強く願ったのでありました.

というわけで「カールスルーエで晩酌を」シリーズはひとまずこれでおしまいです. 全部読んで下さった方, 本当にありがとうございました. 直後のオランダ出張の話を少し書きたいので, それは「外伝」としていつか公開したいと思います. いつになるかなぁ..(笑)



Last updated: 2018-09-03