東京都立大学システムデザイン学部 島しょプロジェクトチーム
東京都総務局からの委託を受け,2018-2020年にわたって島しょエリアの産業を活性化するためのプロジェクトを実施しました.システムデザイン学部はICTやロボット関連技術の研究教育を進めており,これらの活用と人材育成がプロジェクトの主たる柱となります.伊豆大島と八丈島を舞台に下記のようなテーマに取り組みました.
以下に2020年度分の成果を示します.2018-2019年度分についてはこちらを参照ください.
360度カメラは常に全方位を撮影するカメラであり,画像を見る人がマウス操作等でその方位を変えることができます.観光地で景色を見る際,人ごとに違う方位を見て,それぞれに新たな発見・感動を覚えると思います.360度映像を用いることで遠隔地にいる観光客がそれぞれ自由な方位を見えるようにすることで「遠隔観光」を支援することができると考えました.さらに,オンライン会議システムを活用することで,現地ガイドに直接質問することもでき,満足度の高い遠隔観光を提供できると考えられます.
遠隔観光支援システムの写真
プロジェクトに関連して,下記のようなコンテンツを準備しました. 画像を再生中に,その上でマウスをドラッグすると自由な方向をご覧いただけます.
360度カメラとオンライン会議・講義システムの組合せを教育に用いることで,遠隔地にいながら教室の黒板や周辺,さらに窓外の景色を見たり,相互に通信(チャットに限定)したりできるようになります.このような方法で,より効果的な遠隔教育が実現できると考えられます.
高大連携の試みとして,大島高校と東京都立大学システムデザイン学部をつないで大学案内を行いました.オンライン会議システムを用いて行いましたが,後に示すアバターロボットの活用も考えられます.
市販のコミュニケーション・ロボットのソフトウェアを拡張し,独自のセリフを話したり,踊りを舞えるようにし,島しょ部での観光へ寄与すること検討しています.観光だけでなく,現地の小学校と連携した活動も行いました.
左上は伊豆大島のアンコさんを模した衣装・踊り,右上は八丈島の黄八丈をイメージした衣装と踊りの動画です.玉石垣の前で踊りました.
下方の左は伊豆大島のスーパーあんこ娘さんを模した衣装であり,右は八丈島空港手荷物受取所におけるデモンストレーションの様子です.
下図はアバター(分身)ロボットのデモであり,八王子にある東京都立大学から八丈島にある島しょ農林水産総合センターに接続し,遠隔で所内を移動しながら見学している様子を示します.博物館等の展示を見るだけでなく現地の方との対話もでき,遠隔観光を支援することができます.
下の写真はアバターロボットを八丈空港ロビーに置いた実験です.興味をもっていただいた方々と画面を通してご挨拶しました.
伊豆大島では野生のキョン(小型の鹿)による農業被害が問題となっています.人が出入りする農地では銃による駆除ができないため,罠を用いた捕獲を検討しています.キョンのみを選択的に捕獲するためにカメラ画像の処理技術を利用したシステムを検討しています.
伊豆大島にはキョンだけでなく野生のニホンザルもいます.キョンだけを認識するためにカメラ画像を処理してキョンを認識できるようにしました.
海上を漂う「流れ藻」は多様な種類の幼魚を守り,養う機能を持っています.しかしその実態は十分に知られておらず,東京都の農林水産総合センターではその観察と資源確保を試みています.大型船で流れ藻に近づくことは難しいため,水上ドローンを用いた観察を提案しています.
市販の水上ドローンのコンテナにカメラを装着して海中を観察できるようにし,プールでの予備実験を行いました. 左下の動画はドローン後部のコンテナと流れ藻(モデル)周辺を撮影したものです.右下の動画はドローンに搭載したカメラで撮影した画像を示します.藻を模したシート下にある複数の魚モデル(プラケース直径10-30 mm,長さ30-120 mm)が確認できます.なお外洋の海はプールとは異なり波の影響で画像が揺れてしまいますが,観察に用いるカメラのセンサにより画像の揺れを補正できますす.水上ドローンに加え,水中ドローンの適用も試みています(下記写真).