反応物理化学研究室|東京都立大学 理学部 化学科

研究概要

 化学反応素過程や衝突過程、励起過程、緩和過程などの各種素過程は、反応を記述する基本要素であり、化学反応の根源的な理解のためには、これら素過程の詳細なメカニズムの解明が不可欠です。反応物理化学研究室では、様々な素過程において分子内の電子分布や核分布が時々刻々どのように変化していくのかを解明することによって、分子素過程に対する新たな反応物理化学を構築することを目指します。そして、そのために電子線・レーザー光線・イオンビーム・X線を用いた独自の実験手法や実験装置を開発し、「これまで見えなかったものを見えるようにする」ことによって、化学反応の本質へ迫ることを目標にしています。以下に近年の主な研究例を示します。

超高速電子回折法による分子動画の測定

 独自に開発した極めて高い時間分解能を持つ気体電子回折法を用いて、化学反応過程にある分子の瞬間的な構造をスナップショット撮影します。この手法によって、化学反応のブレ無しスローモーション動画の撮影を目指します。

レーザー照射走査電子顕微鏡の開発とナノ構造体測定

 ナノ構造体に光を照射した際に生じる表面プラズモンと呼ばれる局所電場を、アト秒(10-18 s)の時間分解能とオングストローム(10-10 m)の空間分解能で撮影できる新たな走査電子顕微鏡を開発し、表面プラズモンの時空間ダイナミクスの解明を目指します。

時間依存電子衝突物理学の開拓

 超短レーザーパルス光を用いて、電子線と標的原子・分子との散乱過程に超高周波の電場変調を印加することによって、散乱電子ダイナミクスや原子・分子内の電子分布変化の情報を得る実験手法を開発し、時間依存の電子衝突物理学を開拓します。

捕捉イオン電子回折法による分子イオン・分子錯合体イオンの構造測定

 イオントラップに捕捉された分子イオンや分子錯合体イオンに対する電子回折法を開発し、分子イオンや分子錯合体イオンの精密構造を測定します。さらに、光励起された捕捉イオンの構造変化を実時間測定します。

多価イオン衝突による分子解離過程の研究

 電子が多数剥ぎ取られた多価イオンを標的分子に衝突させることによって、標的分子から電子を捕獲させ標的分子のクーロン解離を引き起こします。そして、解離イオンの運動量ベクトル相関から、標的分子がどのような反応経路で解離していくのかを解明します。

卓上静電型イオン蓄積リングによる分子冷却過程の研究

 新たに開発した卓上静電型イオン蓄積リングを用いて、分子イオンビームを長時間周回運動させることによって、分子の振動状態や電子状態といった内部エネルギー状態の緩和過程を解明します。

超電導転移端センサーマイクロカロリメーターによる高分解能X線分光

 超伝導転移端センサーマイクロカロリメーター(TES)は、従来の検出器を超える高いエネルギー分解能と高い検出効率を両立可能な最先端のX線検出器です。このTES検出器をエキゾチック原子・分子をはじめとした様々な系に応用し、これまでのX線分光では見えなかった新たな物理化学の解明を目指します。

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