special Lagrangian部分多様体

[定義]
Calabi-Yau多様体の中間次元実部分多様体の一種。 複素n次元Calabi-Yau多様体 M の上には、 0でない正則 n 形式 Ω が定数倍を除いて一意的に存在する。 Ωとその複素共役との外積の(-1)^n(n-1)/2・(i/2)^n倍が体積要素になるように 定数倍をとると、まだ U(1) 倍の自由度が残る。
M の実n次元部分多様体 L で、 U(1)倍の自由度の中で適当な Ω の実部を L に制限すると L の体積要素になるとき、 L をspecial Lagrangian部分多様体という。
計量がKahler形式 ω に付随するとき、 適当な Ω の虚部及び ω の L への制限がどちらも 0 になるもの、 と言ってもよい。

[性質]
calibrationを用いて定義されているので、Kahler多様体の解析的部分多様体と同様に、 ホモロジー類の中で体積が最小になる、という性質を持つ。[Harvey-Lawson]
L は、ωを制限すると0であるから超越的なサイクルであり、 Ωのその上での積分から M の周期(の一部)が得られるので、 M の幾何を定める重要な部分多様体である。 代数的なCalabi-Yau多様体(ωも代数的とする)の超越サイクルは special Lagrangian 多様体のホモロジー類で生成されるか、 という一般化されたHodge予想を考えることができる。 (n=1,2までは正しい。)
L の M 内での変形の接空間は L 上の調和1形式の空間 H(L) と同一視ができ、 局所的にはその全ての方向に実際に変形できる。[McLean]

[ミラー対称性との関わり]
L 上の U(1)束のモジュライに、Hilbert schemeのような代数構造が入り、 ミラー対称性により、ミラー多様体の代数的部分多様体あるいは一般には連接層の モジュライと同一視が与えられるのでは、という期待 (量子ミラー対称性)がある。
特に、L が 位相的に実 n-トーラスになる場合、 L の局所変形が M の可微分fibration構造を与え、 ファイバー毎のトーラスの双対(T-双対性)がミラー多様体を与えるという、 ミラー多様体の構成原理が期待されている。[Strominger-Yau-Zaslow] M の幾何的性質は退化ファイバーに集約される。


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