現在の研究

「都市が直面する環境・エネルギー問題解決に寄与する機能性高分子材料の開発」
究極のクリーンエネルギーである水素を用いた燃料電池の高性能化に繋がるナノファイバーを用いた革新的な高分子電解質膜や、安全・高容量・高寿命が期待される次世代型二次電池材料の開発、地球温暖化問題の抜本的な解決策として期待される二酸化炭素分離・回収(CCS)技術に不可欠な高効率な気体分離膜など、高分子ならではの特徴を活かした材料の開拓に取り組んでいます。

燃料電池

固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜に関する研究を行っています。熱的・機械的・化学的耐久性に優れた新しいスルホン化ポリイミドやポリアリーレンエーテルを合成し、高いプロトン伝導性・低い燃料ガス透過性・高い耐久性をあわせ持った実用に供し得る電解質膜の開発を目指しています。国や都などの支援のもと、企業や他大学と共同で研究を進めています。[川上研究室テーマ]
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リチウムイオン電池・空気電池

高安全性・高安定性が期待される全固体型リチウムイオン電池用の固体高分子電解質の開発を行っています。分子設計から合成、電解質膜作製、コイン電池試作、充放電試験まで、一気通貫で取り組んでいます。[川上研究室テーマ]
また、究極の蓄電池と言われるリチウム空気電池や、安価で安全な亜鉛空気電池など、新しい電池の開発も進めています。

水電解(水素製造)

クリーンかつ高効率な水素製造を目指し、新規の高性能アニオン交換膜(AEM)を開発して水電解に応用しています。高分子材料の開発に加え、電気化学特性評価や電解セル評価などにも取り組んでいます。
また、外部研究者の協力を得ながら、AEM研究における計算科学やマテリアルズインフォマティクスの活用も進めています。
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気体分離膜

代表的な温室効果ガスである二酸化炭素を選択的に分離回収するための高分子気体分離膜の開発を行っています。二酸化炭素に対する親和性と拡散性の優れた低分子添加剤を含フッ素ポリイミド膜に複合させることで、高選択性と高透過性を併せ持つ新しい分離膜の作製を目指しています。[川上研究室テーマ]

ポリマーナノファイバー

エレクトロスピニング(電界紡糸)法を用い、機能性高分子からなる直径数十から数百nmのナノファイバーの作製を行っています。ナノファイバーの特徴を活かした環境・エネルギー分野への応用に加え、ナノファイバー単体の力学特性やイオン伝導特性など、未知の特性・機能の解明・開拓も目指して取り組んでいます(例えば、有機・高分子ナノ材料における特異なイオン伝導挙動を「有機ナノイオニクス」と命名し、解明・応用を目指しています)。
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共同研究者 (田中テーマ)

  • 光島重徳 先生、黒田義之 先生、長澤兼作 先生 (横浜国立大学) 【水電解】
  • 八木清 先生 (理化学研究所)、笠原健人 先生 (大阪大学) 【分子シミュレーション】
  • 加藤 幸一郎 先生、藤ヶ谷 剛彦 先生 (九州大学) 【マテリアルズインフォマティクス】
  • 谷井孝至 先生 (早稲田大学) 【ラジカルスピン】
  • Prof. Dario R. Dekel (Technion - Israel Institute of Technology) 【アニオン交換膜】
  • Prof. Alexander C. Forse (University of Cambridge) 【アニオン交換膜】
  • Prof. Christopher K. Ober (Cornell University) 【Polymer Brush】

これまでの研究

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燃料電池用電解質膜(山梨大学)

一般的なプロトン交換型電解質膜と異なる、アニオンを伝導可能な新しい電解質膜を自動車メーカーと共同で開発し、世界最高の伝導度を達成することに成功しました。アニオン交換膜を用いる固体高分子形アルカリ燃料電池においては、高価な白金触媒などを用いなくても良い利点等があり、今後の発展が期待されています。また、プロトン伝導性アイオノマーに関する研究も行いました。

感光性高分子材料(Cornell大学)

半導体微細加工に必須なフォトレジスト(感光性樹脂)に関する次々世代材料の開発を半導体メーカーと共同で行っていました。電子線描画法と超臨界二酸化炭素現像を組み合わせることで、環境適合性も高くより微細なパターンを形成させることができました。また、基板上に自己組織形成させたブロック高分子ブラシを直接描画することで、微細なトンネル形状の作成などにも成功しました。
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バイオセンサー(Cornell大学)

鳥インフルエンザウィルスを正確かつ迅速に診断するバイオセンサーの開発を目指し、機能性高分子(Polymer Brush)で被覆した電極の作製を行っていました。共同研究先の生化学や免疫学の研究室で、バイオセンサーの実用化が検討されています。

有機磁性体(早稲田大学)

安定なラジカル(不対電子)を有する有機磁性体の応用に関する研究を行っていました。ラジカル高分子を微粒子化し微細加工基板上に配列させる手法や、プローブ顕微鏡を用いて一分子の磁気力を測定する方法の実証、金ナノ粒子を利用したラジカル高分子の伝導特性評価などを行いました。
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