l.新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究

・プロジェクトの成果と展望

本プロジェクトは、首都東京における先導的な取り組みとして、東京都の公共施設の建築や大規模改修工事に対して、新しい省エネ仕様の開発提示を行うプロジェクト研究であり、研究成果が都内の公共施設全体、さらには日本全体の公共施設や民間施設へ波及されることを目的として取り組みました。
具体的には、既存都有施設の使用、エネルギー消費実態等の調査・分析、都有施設改築事業への提案・効果測定・検証や、東京都における気候特性把握の調査・分析等を実施しました。
プロジェクト期間の4年間、東京都とプロジェクトメンバーで定期的に議論を行い、新たな項目や既存の項目の改良等を提起し、「省エネ東京仕様2007」の改訂版である「省エネ・再エネ東京仕様」の開発提示とその検証及び「新省エネ東京仕様(仮称)」の開発提示を行いました。

・具体的な研究成果

1.「 新省エネ東京仕様(仮称)」開発提示
2. 既存都有施設の使用、エネルギー消費実態等の調査・分析

・ 都立高校のエネルギー消費削減に関する研究
・ 大規模庁舎の使われ方と内部発熱に関する研究
・ 病院施設における給湯システムに関する研究
・ 給電制御システムの開発に関する研究
・ 木質化建築の木材蓄積量評価手法に関する研究
・ 地方自治体における施設管理台帳に関する研究

3. 東京都内の気候特性の調査・分析
4. 中小規模事業所の省エネ深度化に資する分析ツールの開発に関する研究
5. 都有施設改築事業への提案・効果測定・検証

1.「新省エネ東京仕様(仮称)」開発提示

「省エネ東京仕様2007」とは、庁舎、学校、病院などの都の施設を最高水準の省エネ仕様に転換するために2007年に策定された東京都の施設基準です。 2011年には、本研究の成果も踏まえ、省エネ性能をさらに向上させるため、最新の省エネ設備や多様な再生可能エネルギー設備を盛り込んだ「省エネ・再エネ東京仕様」が策定されました。その後も東京都とプロジェクトメンバーで検討を行い、新たに建築計画的配慮や待機電力カットなどを盛り込んで、「新省エネ東京仕様(仮称)」の開発提示を行いました。また、合わせて、同仕様を技術者向けに分かりやすく解説するため、具体的な研究成果等を盛り込んだ解説書の作成を行いました。

「省エネ・再エネ東京仕様」の庁舎への導入例
「新省エネ東京仕様(仮称)」で新たに提起した項目例

2.既存都有施設の使用、エネルギー消費実態等の調査・分析

都立高校のエネルギー消費削減に関する研究

都立高校全体でのエネルギー消費の現状と傾向を把握し、冷房導入によって、年間約10%の増加となることが分かりました。建物や機器の仕様等を調査・分析し、断熱や庇、照明設備などの仕様改善や運用による削減が有効な策であることを明らかにしました。

教室の冷房導入・大震災によるエネルギー消費量の変遷

大規模庁舎の使われ方と内部発熱に関する研究

空調負荷計算の精度向上を目的に、東京都の大規模庁舎を対象に、照明や人体、OA機器などの建物の内部発熱の実態調査を実施しました。震災前後の照明やOA機器の消費電力密度、在籍人数との関係などについて明らかにしました。

大規模庁舎測定フロアの消費電力密度(東日本大震災前後の比較)

病院施設における給湯システムに関する研究

給湯設備の適正設計を目的に、都内の4病院を対象に、給湯量や給湯用エネルギー消費量の実態調査を実施しました。現行の設計用給湯量の基準が実態に対して過大であり、見直すことにより省エネ・コスト削減につながることを明らかにしました。

調査4病院の入院患者1人当たりの給湯量実績[L/(人・日)]

給電制御システムの開発に関する研究

研究室や業務ビルの待機電力の実態調査を実施し、待機電力の削減のため、コンセント部の給電制御を可能とする次世代電源供給システムの開発を行いました。

給電制御システムのシステム概念図

3.東京都内の気候特性の調査・分析

東京23区と多摩地域を含めた都内の気候特性を把握して「新省エネ東京仕様(仮称)」に反映させることを目指し、本学の南大沢・日野キャンパスおよび多摩地域の都立高校3校に電子百葉箱を設置し、気象観測データの収集・分析を行いました。上記地点に加え、同様の観測システムを設置した都内約15地点の観測データ(気温、相対湿度、風向・風速など)を比較し、各地点の観測データ分布のばらつきから都内における気候特性の違いを確認しました。

気象センサ設置箇所(東京都内)

4.中小規模事業所の省エネ深度化に資する分析ツールの開発に関する研究

東京都「地球温暖化対策報告書」データを活用して中小規模事業所のエネルギーデータベース管理システムを構築し、建物用途別に分析を行いました。 政策上効果的な施策を検討する際の参考となるように、一次エネルギー消費量やCO2排出量の集計に加え、エネルギー種類、一次エネルギー消費原単位、建物規模、採用省エネ手法の分類と数などの観点から分析を加えました。

中小規模事業所における業種別総一次エネルギー消費量

5.都有施設改築事業への提案・効果測定・検証

約3,000m2の庁舎ビルの改築に対し、「新省エネ東京仕様(仮称)」の技術の導入、性能等の検証を目的に、事業選定のプロポーザルの段階からプロジェクトメンバーが関与し、具体的な導入方法の検討、導入効果の検証と今後の展開方法の検討を行いました。 断熱や庇、自然換気、LED照明、空調設備、基礎杭による地中熱利用、太陽光発電、BEMSや待機電力カットの導入、測定系などの助言を行い、 2012年10月着工し、2014年1月に竣工しました。 竣工後、温熱環境やエネルギー等、現地での測定を行っています。

提案ビル竣工イメージ
提案ビルの主な環境対策の模式図

・外部研究・共同研究

科研費 若手研究(B) 2012.4-2014.3
金政秀「業務ビルの設備機器類を含む待機電力量調査および電力量ラベリング手法に関する研究」
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/24760471.ja.html

科研費 若手研究(B)2012.4-2015.3
福留伸高 「公共建築物と連携した気象観測ネットワークの構築とその活用に関する研究」
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/24760470.ja.html

Topへ