情報発信の第1号として,私が初めて出会ったセラピスト−正確にはセラピストの卵たち−について紹介したいと思います.
私が最初にセラピストの方々と関わったのは,東北大学大学院に在籍中の平成11年,心理学の非常勤講師としてお世話になった,国立仙台病院付属リハビリテーション学院の先生達でありました.当学校で長きに渡り学生を指導されていた石川禎子先生(作業療法士)は,リハビリテーションの現場において心理学の知識がいかに重要であるかをご説明くださり,学生に幅広い知識を提供するように要望されました.
学生のリストを見て,まず驚いたのが,バラエティに富んだ学生のキャリアです.年齢だけを見ても,高卒の18歳から社会人を経由した40代の人といった具合です.自分より10歳も年上の方から,“先生”などと呼ばれる度に,気恥ずかしい思いがしました.この学校は国立であることから,授業料が安いため,全国からこぞって学生が受講します.特に,一度社会人を経験した人達にとっては,あまりに高い授業料を支払って専門学校に入りなおすことは困難ですので,授業料の安い当学校への入学を目指して必死に勉強します.激しい受験競争の結果として,非常に優秀な学生が入学するわけです.有名大学大学院で修士号を取得の後に入学する学生も見受けられるなど,彼らの履歴に目を通すだけでも,背筋がピンとするような思いがしたことを,今でも鮮明に覚えています.
心理学の研究領域は実に多岐に渡りますので,授業では,自分の専門である知覚や運動の話題だけでなく,人間関係に関わる社会心理学,犯罪心理学,カウンセリングなど,様々なトピックスを取り上げました.授業の度に様々なレポートを取りましたが,時折こちらの予想をはるかに超えた,優れたレポートが提出され,驚いたものです.これらのレポートは私の宝物であり,今でも心理学の講義の機会には有効活用しています.
残念ながら,国の方針によって,国立仙台病院付属リハビリテーション学院は廃校になってしまいました.しかし,私が学校で出会った学生さんたちは,現在臨床の現場で華々しく活躍されています.彼らの向上心は未だ衰えておらず,私がセラピストを対象とした教育講演をおこなった際に参加してくださった方々も少なくありません.板垣真由子さん,岡崎可奈子さん,角田信夫君,山本洋介君,この場を借りて講演会への参加に対して感謝申し上げます.