セラピストにむけた情報発信



セラピストとの共同研究の紹介:ブラインドテニス(3)



2009年11月24日

今回は,11月14日(土)におこないました,ブラインドテニス選手のフォアハンドストローク動作に対する3次元動作解析実験の様子をご紹介いたします.実験全体の目的は前回のページをご参照いただくこととし,今回は実験風景についてご紹介いたします.

実験は大学の剣道場を1日貸切り, 疑似的に半面のブラインドテニスコート(サイズはバドミントンコートのサイズです)を作っておこないました.

ブラインドテニス実験の様子. 実験指揮者の福原和伸氏(左)
ボールトスの役割をおこなった緒方貴浩氏(右)


実験には3名のブラインドテニス選手が参加してくださいました.参加者の課題は,ネットの向こうから放物線上に打ち込まれたボールを,3バウンド以内にフォアハンドストロークで打ち返すというものです.ネットを正確に超える高さとコースに打ち込まれた試技を成功試技とみなし,その動作を7台の動作解析カメラを用いて分析いたしました.

体育館を用いてスポーツ動作の動作解析を実施する場合,その準備は大掛かりなものとなります.そもそも,実験室に取り付けられているカメラを取り外して,必要な器具一式を体育館に移動させるだけでも,かなりの労力を必要とします.実際,今回の実験準備に携わった人数は,動作解析の運搬と設置スタッフ4名,疑似的ブラインドテニスコート半面の作成スタッフ3名,全盲の方々を実験会場まで誘導し,実験参加同意の手続きをおこなうスタッフ2名,総勢9名でした.


共同研究者の信太奈美氏(左)
コート作成スタッフの高橋まどか氏(右)
樋口(研)スタッフ
(左から)位崎史弥,青山裕美(愛知教育大学),
落合寛,藤懸大也


かつて私たちの研究室では,アメフト選手が密集を突破する場面に着目して,同様の測定をおこなったことがあります.このときも実験準備はすさまじいものがあり,5名の男性スタッフが汗だくになって実験をしておりました.今回の実験も力仕事が多かったですが,実験参加スタッフが倍近くですので,それ以上に実験スタッフの役割分担等のマネージメントが重要となる実験でした.

今回の実験の総指揮者は,東京工業大学の福原和伸さんです(写真2).必要物品の調達からスタッフの役割分担の綿密な計画まで,多岐にわたってリーダーシップを発揮してくれました.

また今回の実験で非常に重要な役割を担ったのは,ネットの奥からボールを打ち,所定の位置に正確に落とすことができるスタッフの存在です.7台のカメラで正確に動作解析できる空間範囲には限界があるため,ボールが決められた範囲でバウンドしないと,ボールを打った時のストローク動作を測定できないからです.

今回の実験ではその役割を,早稲田大学の大学院生,緒方貴浩さんにご担当いただきました.緒方さんはソフトテニスの熟練者であり,大学インカレ個人3位,全日本社会人選手権3位など,華々しい戦績を残しております.実験の際,緒方さんが非常に狭い所定の位置にボールを正確にバウンドさせる様子を見て,このスキルだけでも非常に素晴らしいものだと,驚嘆いたしました.

いざ実験が始まってからも,まさに驚きの連続でした.「選手の方々は本当に目が見えていないのか?」と疑問に思えてしまうほど,参加選手の皆さまは,非常に正確にボールのバウンド位置を知覚し,適切なタイミングでボールを相手コートに返しておりました.具体的にどのような運動制御をおこなっているのかについては,今後の検討となります.私たちにとっては,実験の現場で体験した驚きと感動が忘れられず,この思いを何とか実験データとして数量的に示したいと思えたことが,現時点での大きな財産であります.こうした思いが,今後の分析作業のモチベーションになってくれるものと期待しています.

以下,この実験にかかわったスタッフ氏名を記載し,謝意を表したいと思います.とても良いチームワークであり,今後の実験でまたチームを組むことが楽しみです.

樋口貴広,信太奈美,落合寛,藤懸大也,位崎史弥(以上,首都大学東京),福原和伸,高橋まどか(以上,東京工業大学),緒方貴浩(早稲田大学),青山裕美(愛知教育大学)





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