セラピストにむけた情報発信



静岡県理学療法士会専門部会・研修会を終えて



2009年9月14日

9月13日(日)に,沼津市立病院で開催された静岡県理学療法士会専門部会(脳血管疾患専門部会)の研修会講師を担当いたしました.前日夜に大雨が降り,天候が心配されましたが,当日は晴天となり,約60名の方々にご参加いただきました.若いPTさんの参加が多く,活気のある雰囲気の中で研修をおこないました.

私にとっては静岡での仕事は初めての経験でしたが,参加者の皆さまが積極的な姿勢で様々なデモンストレーションをお楽しみくださったおかげで,こちらも気持ち良く進行でき,休憩も含めて6時間強の研修会が,とてもあっという間に終わりました.

研修会では,浜松市リハビリテーション病院の宮崎哲哉先生による司会進行のもと,拙著「身体運動学」の内容に準拠してお話をしてまいりました.話の中心的テーマは,「身体に対する意識(身体感覚,気づき,アウェアネス)と運動」です.臨床場面では,患者さんが身体の状況にどの程度気づいているかに注意を払いながら,介入を行っていく場合が多いと推察いたします.ところが,この身体意識の生起自体が非常に複雑なメカニズムであること,また身体運動の制御については,意識にのぼらない潜在的な身体情報が中心的な役割を果たしていることから,「身体意識が,身体運動にどのような役割を果たしているのか」については,研究上は,必ずしも明確な答えがあるわけではありません.

今回の研修では,身体意識と運動におけるこのような問題について,初学者の方にもできるだけわかりやすい形でご提供することを目的とし,講演をおこないました.常々,セラピストの方々を対象として講演する場合,「臨床場面でいかに身体意識を利用していくべきか」といった,真にセラピストの方々が必要とする情報について,具体的・直接的なコメントをすることを避けています.その背景には,「臨床の現場を知らない人間が,臨床の現場に関する非常に具体的な示唆をするなど,あまりにおこがましい」といった考えや,「残念ながら純粋な基礎研究の成果だけで,質問に対する具体的な答えを見出すのは非常に困難」といった現状があります.

このような歯切れの悪い終わり方は,時として参加者の方々を失望させるものであります.しかし,「セラピストの皆さまが臨床の場面で具体的に何をすべきかについて判断するのは,あくまでセラピスト自身であり,現場に携わることのない研究者は,その判断に有益な情報を提供するにすぎず,それ以上に無責任なコメントをすべきでない」というのが,私のスタンスです.そのことを多くの方に理解していただくためにも,研究成果を逸脱したような具体的コメントは,決して無責任に発しないように心がけています.

今回の研修会の企画運営にあたっては,中伊豆温泉病院のPT,佐藤陽介さんをはじめ,同僚の久保慶昌さんと猪狩ひとみさんに多大なるご協力をいただきました.また会場では,沼津市立病院のスタッフの皆さまに手厚いサービスをご提供いただきました.この場を借りてお礼を申し上げます.


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