セラピストにむけた情報発信



加速度センサを用いた歩行研究



2009年8月20日

私たちの研究室では,本年度から加速度センサを導入いたしました.加速度センサは,病院や学校など,実験室以外の場所で簡便に姿勢動揺や歩行の周期性などを測定するのに利用されています.本研究室の修士大学院生の吉田君が,臨床場面において脳卒中患者の歩行に関する研究をおこなうことをきっかけに,導入を決定しました.

加速度センサは装着に関する負担が少なく,歩行・姿勢制御に関する他の測定機器にくらべて格段に安価であることから,確かに臨床場面で実用的な測定機器といえます.ただし,加速度センサは①重力の方向,②センサが検知した振動の2つの情報に基づき計算できる情報のみを扱いますので,歩行研究に対しては,歩行中にどの程度姿勢が安定しているか,あるいは歩行がどの程度周期的か,といった情報のみを扱うことになります.

以下,加速度センサを用いた歩行研究例をご紹介いたします.

Culhane et al., Accelerometers in rehabilitation medicine for older adults. Age Aging 34, 556-560, 2005

加速度センサがどのように臨床研究に応用できるかを紹介するミニレビュー論文です.歩行,姿勢動揺,座位から立位への姿勢変化,日常の生活活動量の測定に関する研究の例が紹介されています.ページ数が限定されていることもあり,内容に深みのある論文とは言えませんが,その分,非常に短時間で研究応用例を知ることができます.私たちのように,初めて加速度センサを使う立場の方々には役に立つかもしれません.

Mizuike et al. Analysis of stroke patient walking dynamics using a tri-axial accelerometer. Gait Pos 30, 60-64, 2009

加速度センサを脳卒中片麻痺患者さんの歩行研究に導入した,日本人による研究論文です,63名の参加者を対象に,障害のレベルに対応可能な従属変数の同定に成功しています.

Menz et al. Acceleration patterns of the head and pelvis when walking are associated with risk of falling in community-dwelling older people. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 58A, 446–452, 2003

加速度センサを利用することの研究の意義を,最も効果的に示した研究といえます.研究内容については,過去のページをご覧ください


最初の2つの論文は,博士院生・PTの安田君が紹介してくれました.安田君は本研究室での加速度センサ導入に対し,中心的な役割を果たしています.安田君,そして歩行研究をおこなう吉田君ともに,臨床を続けながら自分の研究を進めるだけでも大変なのですが,それでも新しい技術の習得にどん欲であり,こちらも大いに刺激を受けています.

また加速度センサの技術的な問題については,共同研究者である,京都大学・助教の山田実氏にご指導をいただいております.山田氏は本当に多才・多芸です.これまで山田氏とは,メンタルローテーション課題の臨床応用について研究をおこなってきましたが,山田氏はこれ以外にも非常に多くの研究業績があります.一緒に仕事して,お互いに刺激し合える関係を維持できればと思える,貴重な研究仲間です.



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