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歩行中の遠近両用メガネ着用は危険?:Lord 2006




2009年6月5日

遠近両用メガネは,近視と老眼の両方に対応できるメガネとして,高齢者の日常生活をサポートしてくれる,大変便利なメガネです.しかしながら歩行の安全性という観点から考えると,遠近両用レンズは足もとの視覚情報に関する奥行き知覚の能力とコントラスト感度が下がるため,転倒を引き起こすかもしれない,と警告している研究があります.以下に紹介するのは,一連の研究をおこなった著者自身による,短報スタイルのレビュー論文です.

Lord, S. R. Visual risk factors for falls in older people.Age Ageing 35 Suppl 2, ii42-ii45, 2006.

奥行き知覚の能力とは,2次元的な網膜像から3次元的な空間を知覚する能力です.一方コントラスト感度(contrast sensitivity)とは,背景から図形を区別する視覚機能です.いずれも視覚における大変重要な機能です.

遠近両用メガネでは,レンズの上部で遠方を視認し,レンズの下部で近くの文字を読んだりします.Lordは長年の研究に基づき,遠近両用メガネ着用中は,足もとの奥行き知覚とコントラスト感度が低下してしまうことを明らかにしています.

また遠近両用メガネの着用者は,1年間の転倒歴を調べると,転倒数が多いとのことです.

遠近両用レンズは,近くも遠くの1つのメガネで対応できるため,高齢の方にとっては大変便利なメガネです.しかし歩行中の転倒の危険性が高い人については,歩行中の着用は避けたほうが良いかもしれません.





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