セラピストにむけた情報発信



本紹介「心理学を変えた40の研究」



2009年4月16日

前回に引き続き,心理学における古典的,代表的な研究を紹介した本の紹介です.

ロジャー R.ホック編 梶川達也監訳「心理学を変えた40の研究」ピアソンエデュケーション,2007

1か月ほど前にご紹介した「狼少女はいなかった」という本では,古典的であまりにも有名な研究は,それが盲目的に(原典の細部を検討してその妥当性を検証することなく)教科書に掲載され続ける結果,誤った情報が事実として鵜呑みにされる危険性が述べられていました.今回ご紹介する本も,やはり実際の研究が教科書に引用されることによる問題が,本執筆の契機となっています.しかしこの本が「狼少女は〜」と決定的に異なるのは,その目的が古典的な研究の問題点を追及することにあるのではなく,それらの研究が持つ本質や高揚感,独創性など,教科書のような表面的な記載では伝わらない原典の素晴らしさを紹介することにあります.

この本では,原典の方法やデザインが,比較的詳しく記述されています.これは,古典的な研究の原点に触れる時間を作ることができない人にとっては,大変ありがたい情報です.さらに,これらの研究がその後どのような評価を受けてきたか,また最近の研究は古典的な研究をどのように発展させていったかなど,関連する情報もわかりやすく紹介されています.

この本は,初めて心理学に触れる人よりも,一度心理学の基礎的な知識を平易な教科書で学んだ人が,より深い発展的な知識を学びたい人にお薦めします.



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