セラピストにむけた情報発信



首都大学東京オープンユニバーシティ「知覚・認知から見た運動支援」

 


2013年9月2日

8月31日(土)に首都大学東京飯田橋キャンパスにて,運動支援家向け専門講座として,「知覚・認知から見た運動支援」を提供いたしました.本学の福原和伸氏,および日本女子大学の澤田美砂子氏との3名で担当いたしました.主として高齢者やリハビリ対象者の支援を専門とする方々にご参加いただきました.

最初に私から理論編として,注意の話題,および運動学習の話題について紹介しました.選択的注意,分割的注意,運動のばらつき,学習の特殊性,KRのフィードバック頻度といった各トピックが,運動支援の問題とどのように関わるかについて解説いたしました.

次に福原和伸氏が,知覚認知から見たスポーツ選手の支援について話題提供をされました.

一流スポーツ選手の状況判断が優れている理由として,視線行動や予測能力の高さなどに関する研究事例が紹介されました.また予測能力向上のための学習支援として,「すべてを教えすぎない指導法」の重要性について解説をされました.潜在学習や発見学習など,スポーツ心理学の領域で研究されている様々な学習法が紹介されました.

最後に澤田美砂子氏が,知覚認知から見た高齢者支援の実践として,チェアトレーニングについて実演されました.

このチェアトレーニングは,「運動は必要だが膝などに負担がかからないトレーニング」という高齢者のニーズにこたえる形で開発されたトレーニング法です.座位での低強度でゆっくりとした運動でも,筋収縮を長く持続させて筋力を増強させることを狙っています.当日は座位で行うストレッチ,ピラティス,エアロビクスのそれぞれについて実演されました.

チェアトレーニングに関する澤田氏自身の著書についてはこちらをご覧ください

今回の講座では,複数の講師が異なる話題を通して共通するメッセージを伝えていたように思います.

私の話題提供では「運動のばらつき」に関する話題として,「卓越した運動の特性は,いつでも同じ動きを繰り返すような再現性ではなく,むしろ全身が協調的に揺らぐ自由度を持ちことで,あらゆる環境においても重要なポイントが再現される特性」であることについて解説しました.

これと共通する実践指導として,澤田氏のピラティスにおいては,理想的な姿勢である中間位の姿勢(コアの筋肉を使った姿勢)が,四肢の様々な動きの中でも常に維持されることが求められました.運動学習と運動のばらつきに関する理論的なポイントが,ピラティスの中で実践されているような印象を持ちました.

また福原氏は,「すべてを教えすぎない指導法」の中で,比喩表現などをうまく使って説明することの必要性について解説していました.これについても,澤田氏がチェアトレーニングの中で,理想的な姿勢を作るための筋肉の使い方を指導するために使った比喩表現と呼応する部分がありました.

異なる立場から発せられる共通のメッセージから,情報の客観性を見いだせることがあります.今後もこうしたコラボレーションを企画していければと思います.


     
 澤田氏のチェアトレーニングの様子    福原氏の講演の様子


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