セラピストにむけた情報発信



首都大学東京オープンユニバーシティ講座
「身体感覚とリハビリテーション」

 


2013年7月22日

7月22日に本学の公開講座であるオープンユニバーシティにて,「身体感覚とリハビリテーション」の講座を実施しました.

今回は外部講師として,山本尚司氏(運動連鎖アプローチ協会)をお招きしました.
山本氏は長年の臨床経験に基づき,身体感覚にまつわる様々な話題をご紹介くださいました.

以下ではその中から3つの話題をご紹介します.

第1の話題は,プロの視点から見た運動の正しさと,患者がその動きに対して感じる感覚や心地よさは必ずしも一致しない,という話題でした.

たとえば歩行訓練において,客観的に見て正しい歩行をしているときにでも,必ずしも患者さんがその動きに対してしっくりきているわけではない場合があります.こうした場合,一過性に正しい動きができたとしても,その患者さんはしっくりこない動きを繰り返そうとはしないかもしれません.

また,ある高齢者が訓練によって関節の可動域が改善し,これまでよりも柔軟な運動ができるようになった状態(運動の自由度が解放された状態)になったとします.客観的には望ましい状態といえますが,本人の主観としては,「なんだかフラフラして歩きにくい」と感じることもあるそうです.

山本氏はこうしたエピソードを,「客観的に見た正しい動きと対象者の主観がミスマッチを起こしている状態」して紹介したうえで,こうしたミスマッチが改善されるように導いていく必要があると説明していました.

第2の話題は,身体の局所の動きを過剰に意識させるような教示には注意が必要であるという話題でした.

一般に歩行の際は,踵から接地して親指が最後に離れるような足の動きがみられます.こうした事実に基づき,「歩くときには,踵からしっかりと着きましょう」という指導をすることがあります.

しかしこうした教示をすると,踵のつく位置とタイミングに注意が強く誘導される場合があります.このため,極端に言えば”踵を見たくなるほど”踵接地に意識が向き,結果的に全体のバランスが悪くなったり,ぎこちない動作になったりすることもあるとのことです.

こうしたことから,たとえ踵接地が運動力学的に重要であっても,そこを局所的に意識させるということは必ずしも正しい動きを導かないと説明されていました.

第3の話題は,同じ運動をさせる場合でもどのような意識するのかによってその効果が異なるという話題でした.

写真のような姿勢で胸の筋肉をストレッチするとき,何も意識せずにストレッチするよりも,足で地面をしっかり押さえつける意識を持ったり,背骨を腰椎から順に回していくイメージを持ったりすると,よりストレッチされる感覚が出てくることがあります.また呼吸を意識しながらおこなうと,さらにストレッチされる感覚が出てきます.

このほかにも,運動の自由度や運動連鎖,インナーマッスルといった言葉をキーワードに,3時間にわたって多様な情報を紹介してくださいました.



     

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