セラピストにむけた情報発信



自著紹介:歩行の視覚運動制御に関するレビュー論文(Higuchi 2013)

 


2013年5月27日

歩行の視覚運動制御に関するレビュー論文がFrontiers in Psychologyという雑誌より出版されました.今回はこの自著論文についてご紹介いたします.

Higuchi T. Visuomotor control of human adaptive locomotion: Understanding the anticipatory nature. Frontiers in Psychology. 4, 277.

この雑誌はオープンアクセスにつき,どなたでも論文をダウンロードできます.
(リンク先右欄のPDFという文字をクリックしてください.)

この論文の主目的は,「歩行中のバランス維持には,遠方の環境情報を視覚的に把握して,予期的に歩行動作を修正する機能も大きな貢献を果たしている」ということを紹介することにありました.関連文献を100例ほど引用しています.

論文ではまず,遠方の環境情報に対して私たちの歩行動作が確かに予期的に修正されていることを示す論文を紹介しました.環境に変化がない静的な条件と,動きのある動的な条件での修正動作の違いや,障害物との安全マージンを作ることを主目的として動作修正がなされていることを示す論文を中心に紹介しました.

続いて歩行中の視線行動についてまとめました.様々な環境によって微妙に変化する視線行動の時空間的特性がどのような原理により形作られるのかについて,2つの理論的説明を紹介しました.高齢者の視線パターンがこうした原理から外れていることが,転倒リスクが高くっていることの指標になるのではないかという考え方についても紹介しました.

最後に,視覚的に得られた環境の情報は,最終的には身体の特性との相対関係として表現され,歩行動作の微調整に利用されているという考え方について紹介しました.こうした相対関係の知覚は,たとえ手にモノを持つことなどによって身体条件が変わっても,すぐにその状態に適応して相対関係が正しく知覚されることについても説明しています.

今回のレビュー論文は,この雑誌の特集号「Awareness shaping or shaped by prediction and postdiction」に向けた論文投稿でした.

特集号のGuest Editorである宮崎真氏にお声掛けいただいたことがきっかけで投稿に至りました.この投稿はEditorと2名の審査者の仕事が非常に早く,投稿から1か月でのアクセプトとなりました.ここまで迅速に審査をしていただいた経験は初めてであり,関係者の方に深く感謝申し上げる次第です.


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