セラピストにむけた情報発信



理学療法士講習会@徳島文理大学




2011年7月27日
7月24日に徳島文理大学にて,理学療法士講習会(基礎編)が行われました.

畿央大学の森岡周先生と一緒に,当日の講師を担当いたしました.昨年度,高知県で行われた四国理学療法学会に森岡先生とペアで講演を行ったことがきっかけで,今回の研修会にお招きいただきました.

この機会を作ってくださった徳島文理大学の鶯春夫先生,ならびに事務局として多くの仕事をしてくださった平嶋賢一先生,誠にありがとうございました.

以下,両名の講演内容の概略をご紹介します.

森岡先生は,「身体知覚と運動学習」というタイトルで講演をされました.

前半は運動学習に対する内容です.共著「身体運動学」の内容に即して,運動学習に関わる主たる脳領域や,それぞれの領域が持つ機能的役割について,解説がなされました.外部情報(感覚情報)に適応的な学習は小脳,系列動作の学習は大脳基底核,学習が進むにつれて前頭前野の関与が少なくなることなど,運動学習と脳に関する基礎的な話題を,最近の研究成果をふんだんに交えてわかりやすく解説されました.

今回の話題として興味深かったのは,運動学習に必要な「脳のデフォルト化」という話題です.

これは,運動(学習)中に非常に多くの脳活動が働きすぎる場合,特に注意をつかさどる前頭前野の活動が過多になりすぎると,新しい運動の学習ができないため,いったん脳の情報を落ち着かせることが学習に重要,という考え方です.こうした発想は経験的にはよくわかりますが,脳のモデルとしてこうした発想が成り立つというのは,とても面白いと感じました.

私自身は,「知覚・こころとリハビリテーション」というタイトルで講演をいたしました.

知覚認知の観点から身体運動の問題を扱うことの重要性を示すトピックスとして,以下の研究例を紹介しました.

  • 知覚認知からみた高齢者の転倒リスク(Yamada, Higuchi et al. 2011, JGMS)
  • アメフト選手の防具適応:動きの中で知覚・認知される歩行空間と身体との関係
    (Higuchi et al. 2011, Hum Mov Sc)
  • 歩行中の空間認知に見られる左右バイアス(Fujikake Higuchi et al. 2011Exp Brain Ress)
  • 身体の動きをモニタリングする介入は直後の姿勢動揺量を減少させる(Yasuda Higuchi et al. 2011, J Bodywork Mov Ther)

この研修会は,3年間にわたって同一の講師が研修を担当するというシステムとのことです.今後2年間,徳島での講演を担当するにあたり,鶯先生からは,「一年後には約半分のトピックスを変更するように」というご支持を頂戴しております.講演に耐えうるデータが今後一年間で蓄積できるように,研究に精進したいと思う次第であります.


(メインページへ戻る)