セラピストにむけた情報発信



他者との協同行為の認知科学:
Experimental Brain Research特集号(2011, vol211)




2011年7月2日
複数の人が共同で1つの行為を行うことは,きわめて日常的な動作です.リハビリテーションにおける歩行や作業の訓練も,いわばセラピストの方々と,と対象者との協同行為と考えることもできます.

最近の認知科学では,複数の人が協同行為を実現する仕組みを理解しようとするのが,1つのトレンドとなっています.

雑誌「Experimental Brain Research」では最近,協同行為に関する特集号が組まれました

協同行為に関する研究の歴史はおよそ20年ほどになります.当初は,2人の行為者の行為が同期してしまう現象について,物理則に即した形で説明するといった研究のみが存在していました.これに対して最近の研究では,複数の人間が互いに異なる役割を担って,1つの行為を実現する仕組みについて,さまざまな研究がなされています.

こうした研究動向に興味がある方は,特集号の目次を眺めて,どのような研究があるのかについて概観してみるのも良いかもしれません.また本特集号が巻頭言として記した論文(Ohbi et al. 2011)は,単に特集号の紹介にとどまらず,最近の動向を網羅的に概観した,クオリティの高い論文になっています.本格的に勉強をしたい方は是非ご一読ください.

個人内で行う協調的な動作(たとえば両手をうまく連動して動かすこと),2名の人がそれぞれの片手を連動して動かすこと)には,共通した行動特性が見られる場合があります.「どうして単独の人の行為と2名の人の行為に共通した行動特性がみられるのか」に答えることは,協同行為実現のメカニズムを知るうえで大変重要であり,多角的に研究がなされています.

こうした協同行為をスムーズにおこなうためには,個人が持つ予測能力や,広義の社会性が重要とのことです.こうした問題にご関心がある方は,是非先ほど紹介したOhbi et al.の巻頭言をご参照のうえ,そこに紹介されている論文を読んでみてください.

また,協同行為を含めた,広義の社会性に関する認知科学については,過去に紹介した本もご参照ください


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