研究テーマ

建築は人間の生命維持という原点から始まり,文明の発展に伴い建築の集積としての都市を形成するに至っては人間の社会や経済を支える基盤となっている.エネルギーや温暖化問題は,人類・地球の持続可能性において避けられない課題であるが,建築物を介した人間の生活や社会・経済活動に伴うエネルギー消費や温暖化等の外部への環境的影響度は非常に大きく,工学的課題は多岐にわたっている. そこで,持続可能性を高める人間社会のあり方を探求するための具体的な対象の一端として,建築・都市と環境・エネルギーという分断的に捉えられてきた事象・現象を一体的に捉えることに主眼を置き,実際の都市や建築物を主たる対象として考究してきた.これまでに行ってきた研究は,1)機能性建材の性能分析と実用化,2)ファサードエンジニアリング,3)建築外部の微気候評価,4)設備設計とコミッショニング に大別される.

1) 機能性建材の性能分析と実用化
近年は材料技術の発展により,化学分野等において多様な機能性材料が開発されている.特に太陽光を人間や建物にとって都合良く調整する手法として,放射エネルギーの波長制御は実用的かつ有効である.このような観点から建材の分光特性に着眼して,多岐にわたる建材の調査(建築1)を行った結果,熱・光性能を左右する特性として十分に大きな影響を有することが明らかとなった.このような評価手法をベースにして,温度によって白濁相転移する窓用透明建材(国際1)や,高反射率塗料の長期性能維持手法(国際2)など,メーカーとの共同による実用化研究を幅広く行ってきた.これらの一部は国際的な関心を集めており,世界的な展開も行われている.

2) ファサードエンジニアリング
建築外皮性能の向上によるペリメータレス化は,以前から行われてきた研究であり,その効能は良く知られるところである.しかしながら,外部気象状況,日射遮蔽装置の状態,空調機との連動など,多岐にわたる影響因子が存在する実運用下の建物において,所期性能を検証することは困難である.そこで,汎用的な熱・光性能の現場測定法を提案・検証し(建築6),窓面を透過する日光を発光効率によって評価する独自の指標を提案した.ガラスの性能や通気性能だけではなく,直射日光の遮蔽装置の状態によって,窓の熱・光性能は大きく変化することから,その自動制御手法について提示し(建築7),実用化されている.また,前出の波長特性を利用した遮熱技術による室内環境および省エネルギーへの効果を検証する(建築8)など,多岐にわたる研究を展開している.

3) 建築外部の微気候評価
 上記のような建築内部空間にとって有利となる建築外皮性能の向上は,ファサードから街路への日射の照り返しに代表されるような副作用を伴うことになる.このような問題意識から,建築・都市の屋外および半屋外空間における放射熱の詳細な移動特性に着眼して研究を行ってきた.建築の伝熱では均等拡散で扱われてきた放射の多重反射に指向特性を加味するためのモデル構築(IBPSA1)や,実際の屋外・反屋外空間における放射環境の実態評価(建築2)など,新規性のある研究成果を提示してきた.

4) 設備設計とコミッショニング
 建築設備における竣工後の検証・調整が不可欠であることは明らかであるが,現状の実務ベースにおいて実現されるケースはまれである.昨今のシステムに見られるような多様な制御が組み込まれている場合においては,コミッショニングの重要性は高くなる.このような問題意識から,数多くのビルにおいて実測調査による実態把握と運用改善を実務ベースで行ってきた.ペリメータレス空調システムの長期に渡る検証を行ってきた研究(建築4)においては,一般化に資する室温センサや空調制御に関する多くの知見を示した.  また,設計・施工・運用に渡って一貫性のあるスキームを構築するための手法としてBIMに着目し,BIMと連成する建築物のエネルギー予測・管理に関するアルゴリズム構築を行い,持続可能性の高い建築・都市の実現に寄与するデジタルモデリング化に向けた基礎的研究を行ってきた(空衛1).


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Copyright 首都大学東京 一ノ瀬雅之