教員紹介

園田 みどり (Midori SONODA) 教授、Professor

●専門分野:

 ドイツ語圏の近現代文学、特に20世紀転換期とドイツ語圏の現代文学の動向に関心があります。論文や評論などで扱った作家は、ローベルト・ムージル、ハンス・ヘニー・ヤーン、ボート・シュトラウス、ツックマイアー、ドロン・ラビノヴィチ、アンナ・キム、ザビーネ・グルーバー、クレメンス・ゼッツ、ラインハルト・カイザー=ミュールエッカー、トーマス・シュタングル、トルステン・ベッカー、ギュンター・グラス、E.T.A.ホフマン、クリスタ・ヴォルフ、モーニカ・マローン、ジークフリート・レンツ、エルフリーデ・イェリネク、ヘルタ・ミュラー、ユーディト・ヘルマン、ウーヴェ・ティム、ゲルト・ホーフマン、ディーター・ヴェラースホフ、イェニー・エルペンベック、トーマス・ブルッシヒ、ウーヴェ・コルベ、インゴ・シュルツェ、ペーター・ハントケ他多数。

●指導した卒論や修論のテーマ:

 E.T.A. ホフマンの『くるみ割り人形とネズミの王様』とバレエの『くるみ割り人形』との比較考察、『二人のロッテ』にみるE.ケストナーのユートピア世界、日本とドイツにおけるドイツ菓子の比較研究、M. エンデの『はてしない物語』におけるファンタジーと現実の関係、スウィフト/ホフマン/ハイネを巡る「諷刺」の考察、E. ヤンドルの詩のことば、オイレンベルクと鴎外、H. ヘッセの『シッダールタ』新解釈、イディッシュ演劇『野生の人』研究、映画に見る戦間期日本のナチス文化受容、ケストナーの二重性などです。こうしてみると学生の関心が文学、歴史他、さまざまな文化に向かっているのがわかります。

●ドイツ語圏の文学・文化を学ぶきっかけ:

 オーストリア人作家ローベルト・ムージルの短編との出会いがドイツ文学を研究する決定的な動機になりましたが、そもそも幼いころからシューベルトの子守歌をドイツ語で聴かせてもらったり、ウィーン少年合唱団の音楽映画を見たりして、ドイツの文化は身近で親しみがありました。ドイツ語への興味から、やがて小説や詩にも強く惹かれるようになりました。もともとクラシック音楽が好きでしたが、実際にドイツへ行ってみると絵画や他のパフォーマンス芸術にも衝撃を受けました。

●担当授業:

 基礎ゼミ(前回はショシャーナ・フェルマンの『声の回帰』と映画『ショアー』との比較検討をテーマにしましたが、2020年の今年はテーマを「ドイツ語圏の世界文化遺産」として、学生にスライド発表を課しています。単なる遺産紹介ではなく、個別の視点を持って個々の対象に臨み、得られた情報や知識をそのままにせず、常に疑問を投げかけてそれに答える姿勢を日頃から大切にするように指導しています。また、意見交換やコメントを通じて、理解した内容を第三者に伝えるスキルを磨くことも学ばせています。)他に、専門ゼミ2コマ、初級ドイツ語2コマ、文学概論の講義等。

●メッセージ:

 エルンスト・ブロッホは「考えるとは超えることである」と述べています。既成の枠を壊し境界を越える独創的な思考や自由な発想は、他人だのみでは生まれません。自分のことばで考えることによって今の自分を超えることもできるのです。若いみなさんには、大いに考え、そして迷ってもらいたい。失敗をおそれないでください。みなさんの中で芽生えている異文化への関心が大学での学びを通じて豊かな知識を備えた理解へと深まり、やがて自由で柔軟で大胆な、「超える」考えへとつながっていくことを期待しています。

●リンク:

大学HP教員紹介(学歴・研究業績・社会貢献実績など)

レオポルト・シュレンドルフ(Leopold SCHLOENDORFF) 教授、Professor


●Fachgebiete: 専門分野:

Mein Fachgebiet ist die neuere deutsche Literatur mit Schwerpunkt Gegenwartsliteratur und Jahrhundertwende (1900). Mich interessieren in meiner Forschung besonders folgende Themen: Erstens, die Apokalypse als literarisches Motiv des 20. Jahrhunderts. Die beiden Weltkriege, die nukleare Bedrohung, insb. zur Zeit des Kalten Krieges, und die andauernde ökologische Krise haben in der Literatur vielfältige Spuren hinterlassen und den jahrtausendealten Mythos vom Ende der Welt aktualisiert. Zweitens, die Problematik der Autoridentität. Seit den 1960er Jahren wird die Position des Autors in Bezug auf den Text von der Literaturtheorie fundamental neu bestimmt. Die Entwicklungslinien dieser Diskussion nachzuzeichnen, ist ein fruchtbares Forschungsgebiet, das Anknüpfungen zu verschiedenen literarischen Diskursen ermöglicht. Drittens, das Motiv der Reise. Kaum eine menschliche Praxis hat die Literatur stärker beeinflusst als die Leidenschaft des modernen Menschen, die Umwelt reisend zu erkunden. Dieses Thema ist auch Gegenstand eines internationalen Forschungsprojekts, das ich seit 2019 leite und gemeinsam mit Kolleginnen und Kollegen aus Japan und China betreibe.

Neben der literaturwissenschaftlichen Forschung ist mir der Unterricht von Deutsch als Fremdsprache ein großes Anliegen. Deshalb habe ich etwa auch an drei Sprachkursen von NHK-Radio 2 als Autor und Sprecher mitgewirkt.

Ihre Abschlussarbeit können Studierende bei mir in den Bereichen neuere deutsche Literatur, Fremdsprachendidaktik und Geschichte des 20. Jahrhunderts (Deutschland, Österreich, Schweiz) anfertigen.

 私の専門分野は近現代ドイツ文学で、特に現代文学と19世紀末を重点的に研究しています。なかでも以下のようなテーマに興味を持っています。一つめは、20世紀の文学のモチーフとしての黙示録(アポカリプス)です。二つの世界大戦、冷戦時代の核の脅威、度重なる経済危機によって、文学作品にはさまざまな痕跡が残され、世界の終焉という数千年の歴史がある神話が現実化されています。二つめは、作家のアイデンティティの問題です。作家の地位は文学理論上1960年代以降、根底から規定しなおされました。この議論の経過を追いかける研究領域は大変実りが多く、様々な文学の言説(ディスクルス)への接続が可能になります。三つめは、旅行のモチーフです。世界をまわり探検するという現代人の情熱以上に、文学に強い影響を与えた行為というものはほとんどありません。このテーマは、2019年から国際研究プロジェクトでも取り上げており、プロジェクトリーダーとして日本や中国の研究者といっしょに研究を進めています。

 文学研究のほかには、外国語としてのドイツ語教育にも大きな関心を持っています。NHKラジオのドイツ語講座には三期にわたって、執筆者兼出演者として参加しました。

 卒業論文の指導は、近現代ドイツ文学、第二言語教育、二十世紀の歴史(ドイツ、オーストリア、スイス)に対応しています。

●Botschaft: メッセージ:

Bereits während meines Studiums habe ich mich besonders für die internationale Germanistik außerhalb des deutschsprachigen Raums interessiert. Deshalb habe ich viel Zeit in England verbracht, etwa als Deutschlehrer in Manchester und als Doktorand in Oxford. Meine internationale Ausrichtung wollte ich dann noch um eine außereuropäische Perspektive erweitern, weshalb ich schließlich nach Japan gekommen bin. Ich kann diese interkulturelle Erfahrungen nur weiterempfehlen, besonders meinen Studierenden, wenn sie bereit sind, sich auf ein fremdes Land und eine andere Kultur einzulassen. Unser Institut bietet Ihnen diese Chance über unsere Austauschprogramme mit deutschen und österreichischen Universitäten. Wenn Sie Interesse haben, berate ich Sie gerne. Ebenso stehe ich ganz allgemein für Fragen betreffend Deutschland, Österreich und der Schweiz zur Verfügung.

 私は大学在学中より、ドイツ語圏以外で学ばれている国際的なドイツ語圏文化論に興味がありました。そのため、イギリスに長く滞在し、マンチェスターの高校でドイツ語教師をしたり、オクスフォード大で研究し、博士論文の執筆準備を行いました。さらにヨーロッパの外側へも視野を広げたくなり、最終的には日本へ来ることになりました。こうしたグローバルな経験を積むことはみなさんにもおすすめできます。特に学生のみなさんは、もし状況が許せば、どんどん海外、異文化へと飛び込んでいきましょう。当教室では交換留学を通じてドイツやオーストリアの大学へ行く機会が提供されています。ご興味がありましたら、喜んで相談に乗ります。また一般に、ドイツ、オーストリア、スイスに関する質問にも対応しています。

●Links:リンク:

Researchmap.jp(研究者情報・著書・論文など)

福岡 麻子(Asako FUKUOKA) 准教授、Associate Professor

●専門分野:

 エルフリーデ・イェリネクを中心とするオーストリア現代文学。とりわけ、災厄と文学というテーマに取り組んでいます。自分が「直接」体験したのではない災厄についてどのように語りうるか -- これは、第二次世界大戦から70年以上を経たこんにち、文学研究において重要な問いの一つになっています。時間的・地理的に隔たれた出来事に私たちはどのようにアクセスしそれについて語りうるのか、また「直接」「直接でない」とはそもそもどのように決定しうるのか。このような観点から研究を行なっています。また、フェミニズム、「オリジナル」と「複製」も近年取り組んでいるテーマです。
 本学で指導を行なった卒業論文のテーマは、インゲボルク・バッハマン(オーストリアの戦後作家)、フェミニズム的観点からみたグリム童話、ドイツ語圏の童謡、オーストロ・ポップ(オーストリアのポップ音楽)です。オーストリアの現代文学に限らず、興味・関心に応じて対応いたします。

●メッセージ:

 私は大学に入学するまで、英語の教員になりたいと思っていました。
 しかし、大学1年次のドイツ語の授業で作文をするのが面白く(ドイツ語は構造がはっきりしているので、作文はパズルのようで楽しいのです)、英語以外の言語もやってみたいなあと思って今に至ります。大学の学びは、毎学期の試験で完結するような賞味期限の短いものではありません。興味を惹かれたこと、気になったことが、卒業後何年もして思わぬ形で結実するかもしれません。初発の関心やイメージを大事に、でもそれを新しくすることを恐れずに、大学での学びを楽しんでください。

●リンク:

 大学HP教員紹介(学歴・研究業績・社会貢献実績など)

金 志成(Jisung KIM) 准教授、Associate Professor


●専門分野:

 冷戦期(1950〜80年代くらい)のドイツ語圏文学を主たる研究対象としています。特に、国家や言語がイデオロギー的に分断された状況下で「いかに書くことができるのか」という詩論的な問いや、物語論的な観点からのテクスト分析に関心があります。そのほか、現代文学の批評的な紹介や翻訳にも意欲的に取り組んでいます。
 授業では「不条理」「狂気」「芸術家の肖像」などをテーマにすることが多いです。卒業論文の指導は、近現代ドイツ文学の作家研究や作品分析に広く対応します。

●メッセージ:

 私は23歳になって初めてドイツ語に触れました。単位不足で留年し、就職も進学も失敗。そんな全然楽しくない現実から目を背けるために、何を血迷ったか、習ったこともないドイツ語の文学作品を原文で読み始め、そのまま現在に至ります。
 外国語の文章はゆっくりとしか読めないわけですが、そのぶん散歩をするような楽しさがあります。辞書を引くついでに他の言葉も調べてみたり、日本語にない表現をうまく訳してやろうと頭をひねってみたり。テクストの散歩は天気の悪い日でも楽しめます。授業でお会いしましょう。

犬飼 彩乃 (Ayano INUKAI) 助教、Assistant Professor

●専門分野:

 第二次世界大戦以降の言語実験とその翻訳について、アルノ・シュミットやクレメンス・ゼッツの作品を中心に研究しています。
 多くの言語実験では、その言語の特性を活かしたり、言語的慣習に逆らったり、表現の不自由さを皮肉ったりなどして、新しい表現の可能性とその限界を探っていきます。文学は最も古い芸術形式の一つであり、コミュニケーション形式の一つでもありますが、21世紀の現在でもまだ新しい表現の可能性は残っているのでしょうか。また、極限まで表現可能性を追求した言語実験を別の特性をもつ他の言語に翻訳しようと試みる場合、いったい何が起きるでしょうか。言語を通じて新しい世界を築こうとする人たちの本を読んで、一緒にわくわくしています。
 ドイツ語教育、第二言語教育にも興味があり、語学学習や留学のサポートもしています。ベルリンやハンブルクなど北ドイツへ行ってみたい方は、声をかけてください。

●ドイツ語圏文化論を学ぶきっかけ:

 ドイツ文学に興味を持ったきっかけは、中学一年生の読書感想文です。すでに反抗期に入っており、一日で宿題を済ませようと、本屋さんで目についた一番うすい文庫本を手にとりました。それがフランツ・カフカの『変身』です。もちろん一日で済むはずはなく、散々な目にあいました。その時に、どうしてあんなわけのわからない作品を書くのだろう、とモヤモヤした気持ちが残りました。以後、紆余曲折を経て、すんなり読める本よりも、わけのわからない本を読んでその意味を考えるほうがだんだんおもしろくなっていき、大学で作品の背景や解釈の方法を学びました。今では読む時間より考えたり調べたりする時間のほうが多くなる本を選ぶようになってしまいました。わかったときには、むずかしい数学の問題が解けたような快感が得られます。カフカは危険です。邦訳がたくさんあるので、ぜひ短篇から読んでみてください。

●メッセージ:

 大学は、ただ授業を受けるだけの場所ではありません。知りたいことをどんどん深めていくためのリソースや、研究生活を支えるためのサポートが多く揃っています。どんな些細なことでも質問や相談をしてみることが、楽しく充実した大学生活を送る秘訣です。どの先生もびっくりするほどたくさん教えてくださるはずですので、気軽にアクセスしてみましょう。お待ちしております。

●リンク:

 大学HP教員紹介(学歴・研究業績・社会貢献実績など)