---07 県立広島大学 保健福祉学部講師 助川 文子 すけがわ あやこ 東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域博士後期課程修了 研究を通じて社会に働きかけたい ☆本人写真☆ <キャリア/今の研究>  私の研究分野は作業療法学になりますが、その中でも、発達障がいのある子どもと家族の活動・参加を支援する、作業療法プログラムの開発を中心とした研究を行っています。障がいを持つ子どもの意思をどのようにサポートに反映することができるかという観点から、特に軽度知的障がいを持つ子どもの意思決定をサポートできるような仕組みづくりを研究しています。  大学卒業後、美術の教員として最初に着任した学校が、たまたま重度の障がいを持つ子どもたちも通う特別支援学校で、そこで作業療法と出会いました。子どもたちと向き合う中で、作業療法に関する専門的な知識がないと何もできないことを実感し、仕事と並行して夜間の専門学校へ通い、作業療法士の資格を取得しました。その後、自治体の発達障がい相談・療育センターなどで作業療法士として勤務し、自閉症や発達障がい児の支援に携わるようになりました。その経験から、今度は発達障がいについて体系的に学び、作業療法士としての専門性を高めたいと考えるようになり、都立大の大学院で発達障がいの作業療法の分野で活躍されている伊藤祐子先生のもとで学びました。大学院で学びながら、さまざまな学校での特別支援教育外部専門家や専門学校等の講師を兼任し、2021年度から県立広島大学の講師として研究・教育活動を行っています。 <学生時代>  作業療法士の資格取得を目指して専門学校に通っていた時は、勤務先の学校や保護者からの応援もあってプレッシャーになった半面、大いに励みにもなりました。大学院に入った際には、多様な年齢の人が同じ研究室に所属し、とても和気あいあいとして学びやすい雰囲気でした。後期課程に進学すると、研究室に海外からの留学生が増え、ディスカッションが活発になったことで、積極的に発言する姿勢が身についたと感じています。後期課程へは研究職を目指して進学したので、ある意味「腹を決めて《という感じはありました。 <仕事のやりがい>  発達障がいのある子どもの課題は、本人、家族、学校や地域の関わる施設が連携して検討することが大切です。そのため、若い作業療法士は作業療法の専門性とともに、多様な人とのコミュニケーションを学び、チームの連携を促進する役割があります。意欲ある学生と、こうした新しい作業療法士のあり方を模索し、現実化していくことは、とても手ごたえのある仕事だと感じています。 <今後の展望>  研究者はただ研究をすればよいというものではなく、自身の研究成果を通じて国や政策に訴える役割があると考えています。そのためには、今起こっている問題に対処できる研究を行うことが大切で、現状を理解して、システムに働きかける研究成果を出し、発達障がいに関わる政策に働きかけることができるようにしていきたいと考えています。また、自分で考えることの楽しさを伝えることで、現場でフレキシブルに対応できる学生を育てることも続けていきたいと考えています。 <研究者を志す学生へのメッセージ>  作業療法士の女性は多いですが、研究の場面にはまだ女性は少ない状態です。もちろん現場は大切ですが、研究を通じた社会構造への働き掛けも同じくらい重要です。そこには多様な視点が必要なので、女性の研究者も増えてほしいと願っています。また、私のように現場を体験してから大学院に進学するというキャリアパスは、一見遠回りのようにも見えますが、自身の体験を踏まえたうえで体系的に学ぶことができるので、大きなメリットがあると思います。自分の頭で考えて、自分の思った道を歩んでほしいと願います。