---02 AFRY社(スウェーデン)Software and Optics 河野 直子 こうの なおこ 首都大学東京大学院 理工学研究科 物理学専攻博士後期課程修了 『0を1にしていく』過程にワクワク ☆本人写真☆ <キャリア/今の研究>  実は、私は現在、研究者としてではなく、コンサルティング会社のAFRYに籍を置き、通信機器メーカーであるEricssonのソフトウェア無線の開発やメンテナンス、トラブルシューティングを行うソフトウェア開発者として働いています。  小さいころから物の成り立ちや仕組みに興味がありました。特に宇宙を想像するのが好きで、宇宙物理学関連の研究をしたいと考えて首都大に進学しました。田沼肇先生の原子物理実験研究室に所属し、さまざまなイオンビームを用いた衝突実験を行い、宇宙にある原子・分子がどのような過程で生まれ、どのように宇宙に存在し続けるのか、もしくは長く存在出来ないのか、などを調べる研究を行っていました。大学院時代には、国際課の派遣留学制度に応募し、前期課程でフランスに、後期課程でスウェーデンに、それぞれ3か月間留学しました。その時の縁もあり、後期課程を修了後はストックホルム大学の研究員として研究を続けることになりました。しかし、手に届かない、見えないものを研究することから、徐々に身近なもの、生活に関連するものに携わりたいと希望が変わってきました。6年以上同じ分野で研究してきて、自分なりにやり切ったという思いもあったのかもしれません。そこに「民間で働いてみたい《という思いが重なり、現在の職場に転職しました。宇宙物理学とは全く異なった仕事ですが、研究をするうえで身につけたプログラミングのスキルが、いまは大いに役立っています。 <学生時代>  田沼先生の研究室は、とても居心地がよかったと感じています。先生が学生を積極的に学会に連れて行くなど、学生が経験を積み、発表スキルを高めることができる環境がありました。また、私は英語が苦手で、学部時代の授業ではCクラスだったのですが、前期過程でのフランス留学の際に、語学の苦手意識を克朊することができたのが大きな転機になりました。首都大には様々な学部があり、勉強会や交流会などもあって違う研究室や学部の学生と仲良くなれたことも、プラスに作用したのかなと思っています。 <仕事のやりがい>  今の仕事は実生活につながることが実感できます。「通信機器という自分自身も毎日使っているものの開発に携わる《ということは、大きなやりがいだと思います。また、大きい会社なので、さまざまな経験を持つ人とかかわることができ、それによって自身が成長したり認識が改まったりといった面白さもあります。何しろ全く異なる分野の仕事に就いたので、知らないことだらけで大変ではあるのですが、私は『0を1にしていく』フェーズが一番ワクワクするので、今はとても楽しいです。 <今後の展望>  これまでを振り返ってみると、その都度迷いながらやってきたと思います。それでも、その時々で関心のあること、好きなことに全力で取り組んできました。これからも、その時に関心のあることに全力で取り組んでいきたいですね。  それから、日本社会に対しては、企業がもっと積極的に博士を採用してほしいと願います。今は働く先が少ないので博士課程への進学を躊躇している人も少なくないのではないでしょうか。 <研究者を志す学生へのメッセージ>  好きなことに一生懸命になることとともに、『1回始めたんだからどうしても続けなくては』という思いを捨てることも大事だと考えます。興味があるときにしっかり向き合って、全力で取り組めば、1回離れたとしてもそれまでの蓄積はなくなるわけではありません。  また、大学院進学にあたっては、事前の研究室訪問が大事です。研究分野だけでなく、研究室の雰囲気や先生のスタイルが合うかどうかを確かめることは必要でしょう。学生に質問されていやがる先生はいないので、ぜひ積極的にアクションしてほしいですね。